1-11 強引な打開策
「……え」
―― 〈瞬間転移魔法〉が使えない。
最悪の事実が判明してしまい、ツナグはヒトリに抱きついたまま放心状態となってしまった。
「ありゃー。それじゃ、なんとかここからうまいこと、この状況を打破するっきゃない! だよ!」
一方、キズナは前向きだ。「ちょっとわたし、このへんを探索してみるよー!」と、迷宮の奥へ走り出してしまった。
「迷宮側もそう簡単に、黄金花を取らせまいとしているわけか」
ウィルがそう呟くと同時に、誰かの足音が聞こえてきた――音のほうを見れば、探索へ出かけていたはずのキズナが、走り出した方向とは反対側の道から現れたのだ。
「あれ!? 真っ直ぐ走ってたはずなのに……ツナグたちがいるよ!?」
「――ふむ、これで確定だな。僕らは完全に迷宮内に閉じ込められている」
「どうしてお前はそんな冷静なんだよ!」
ツナグは声を上げたが、しかし、いくら喚いても状況は変わらない。
どうにかして迷宮から脱出する術を見つけなければ、ツナグたちは一生迷宮から出られず、ただジワジワと体力を減らしていき、死へ近づくのを待つばかりとなってしまう。
そんな結末はもちろん、誰も望んではいないはずだ。
「な……なんかこういうときって、魔法かなんかで打開できるとかないのか?」
ツナグは言うが、キズナは首を横に振るだけだった。
「魔法を無効化したり解くのって、かなり高度なことなんだよ。さらに迷宮っていう大きい術を解くなんて……わたしの力じゃ到底ムリ、だよ」
「な……なら、三大卿っていわれるくらいのヒトリさんなら……!」
「わたしはキズナのように多彩な魔法を使えるわけじゃないのさぁ。あくまで、わたしの武器はこの槍だからねぇ」
ヒトリは槍を召喚し、自慢げに見せつけた。
ツナグにとって、そんなものを今見せつけられても何も解決にならないのだから、ただ腹が立つだけである。
「ど……どうしたもんか……」
脱出の糸口を掴めず、黄金花の元へも辿り着けないこの状況が、この場に非常に重苦しい空気を作り出していた。
「なあ……思ったのだが」
そんな中、ウィルは何かを思いついたのか口を開く。
「真っ直ぐ行ってもダメなのなら、下へ潜っていくのはどうだろう?」
ウィル以外の三人は同時に首を傾げた。
「この迷宮へ入るときもハッチを通って地下へと進んだだろう。だから、さらに下層へと進んでいけば、きっと黄金花に辿り着けるのだと思うのだ」
ウィルの意見に、ツナグは「で……でも」と、口を挟む。
「地下へ行こうにも、地下へ続く道すら見つからない状況なんだぞ? そんなんだってのに、どうしたらいいんだよ」
ツナグの反論に、ウィルは「頭の固い奴だな」と前置きし、こう答える。
「地下へ続く道がないのなら作ればいい、簡単なことだ。だから、ツナグ……」
ウィルは床を指差しながら言う。
「――君のその〈革命拳〉とやらで、床を叩き壊して穴を開けろ」