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転生の革命家  作者: みおゆ
第四章・自由を願う姫君
109/111

4-29 革命の約束

 その日の夜。


 ニューエゥラ軍の根城ともいえるアイリス宅にて、みなが寝静まっている中、ツナグはヒトリだけを呼び出し、リビングで二人ソファに腰掛けていた。


「いきなり呼び出してどうしたんだい、ツナグくん。明日は朝から転生の間で仕事だからねぇ、早く眠りたいんだけれど」


 ヒトリはわざとらしく、大きくあくびをした。

 ツナグは「……すみません」と前置きしてから、話を始める。


「……今日のこと、本当はもっといい結末があったんじゃないかって、ずっと考えちゃって」


「……というと?」


「……ドールがラソソイから提示された第三の選択肢を選ぶことなく、かつチトモクの許嫁の件も突き返して、戦争も止められるような……そんな結末があったんじゃないかなって」


 ヒトリは首を横に振り、こう返す。


「さすがにそんな欲張りな展開は無理さぁ。そんな都合よく、現実はうまくいかない」


「でも、俺に力があれば……この〈革命拳(カクメイケン)〉って力がもっと強ければ、あのモリヒトって奴も吹き飛ばして、末裔もまとめて説き伏せることもできたかもしれない」


「たられば論なんて今話しても遅いさぁ。……それに、わたしはこれでよかったと思ってるよ」


「……よかった、ですか」


「ああ。ドールにとっても、あれでよかったんだ。わたしはあれを罪だと思わない。当然の結果だと思うねぇ」


 ツナグはまだ腑に落ちないと感じる気持ちもあったが――しかし、いくら語っても過ぎたことであると思い直し、その場で無理矢理納得することにした。


「……で、話はそれだけかい?」


 ヒトリに聞かれ、一度目を逸らすツナグ。


「わたしは、別のことで呼ばれたんじゃないかって思ってるんだけどねぇ」


 見透かしたようなヒトリの物言いに、ツナグは観念しつつ、本題を口にする。


「……あのことが、気になって」


「うん?」


「ヒトリさんは、それこそ転生の間の管理人じゃないッスか。だから……俺の前世のこと、よく知ってるのかなって」


「……」


「俺はその、今は前世のことまるで覚えてなくて。あのとき……ラソソイの話を聞いているとき、前世のことを思い出しかけたんスけど、どうもまた思い出せなくなっていて……」


 ――『ここへ転生する条件はただひとつ――『前世で罪を犯して、死んだ者』よ』。


 ラソソイの発言が、ツナグの脳内をぐるぐるの巡る。


 ――『ああ、罪というのも、窃盗とか、公然わいせつとか、そんなんじゃない――()()()()()()あってだ』


 その言葉がツナグの心に、重く重くのしかかる。


「……俺、何してここへ来たのかなって」


「……」


「俺、本当は革命家なんて名乗って、世界を救う資格なんて、ないんじゃないかって……」


「……」


「……ヒトリさん。俺は、前世で何をして、なんで死んだんですか」


「……」


 ヒトリは足元に目を落としつつ、口を開く。


「……それを知って、ツナグくんはどうするんだい?」


「……それは、別に……」


「……。まあ、わたしから言えるのはこれだけさぁ」


 ヒトリは席を立ち、言う。


「君は、凶悪犯罪者なんかの類じゃないってことさ」


 ヒトリはそう言って、微笑む。


「気に病むことはない。君は今、この世界で生きているんだから、前世の行いなんて関係ない。どうかその力を卑下しないでくれ。その力は、世界を変えるためにある」


 ヒトリは、右手を差し出した。


「いずれ(きた)る日で、わたしと世界に革命を起こそう」


 ツナグは自身の右手を見つめ――意を決したかかのように、その手でヒトリの手を握り返した。

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