4-20 前世への問いかけ(1)
――ツナグは、開いた口が塞がらなかった。
自分で聞いたことであったが、まさかこんなにもあっさり認めるとは。
「いえ〜い! アタシたち、お仲間だね♡ これ聞けてさ、お前は満足ぅ?」
明るく話すラソソイ。一方ツナグは、この事実を飲み込むのに精いっぱいだった。
「……何そんなに驚いてんだよ」
ラソソイは呟き、近くの花壇の縁に腰掛けた。
ラソソイは隣をポンポンと叩き、
「ほら、隣来なよ♡ 転生者同士ぃ、お話しようよ〜♡」
と、ツナグを誘った。
ツナグは恐る恐る、少しだけラソソイから距離を空けて腰を下ろす。
ツナグが座ったのを確認したラソソイは、こう話を切り出した。
「……んで、どんなんなってお前は転生したの?」
「……え?」
「『……え?』じゃねぇよ。アンタはなんで死んだかって聞いてんだよ」
「死ん……え?」
困惑するツナグを見てか、ラソソイは呆れた表情を浮かべた。
「……何? 覚えてないの?」
「……お、覚えてないっていうか……」
ツナグは、しどろもどろに事情を話す。
「俺……本当いきなりだったんだよ。自分家にいたと思ったらさ、気づいたら薄暗いとこにいて……あとからそこが、転生の間だったって知ったんだけど……。そんときは転生じゃなくて、異世界転移したんじゃないかって……むしろ今だって、異世界転移しただけなんじゃないかって思ってるくらいで……」
「……転移しただけなら、あそこは『転移の間』って名前になってるはずじゃねぇか」
「いや……まあそこは些細な違いじゃねぇかなって」
「『転生』と『転移』じゃまったく違ぇよ。一度死んだのか、まだ生きつづけてんのかって話なんだから」
「……」
押し黙るツナグに、ラソソイは言う。
「いいか、アタシが今ここでハッキリ教えておく。この世界に転移なんて概念は存在しねぇ。ここに来れる者はみんな、『一度死んで新たな力を得た自分自身』に転生した者たちだ」
「新たな……力……」
「ヒトリとかによ、聞いたことはねぇか? この世界に来た転生者は、『マーザーデイティの祝福』を授けられるってよ」
「……ああ」
その話なら、以前アンデル迷宮へ向かう道中で聞いたことがあった。
「転生者によって、与えられる力は様々だ――そんで力の強さは、前世の行いによって決まるらしい」
「前世の行い?」
「ああ。……まあ、実を言うと、前からアタシはお前の〈革命拳〉って力の根源について、ちょっと気になってたところだし……ここは同じ転生者サービスってことで、アタシの前世について話してやるよ。だからお前も、アタシにお前の前世について教えてくれよ」
「前世……現実世界にいたときの話……か」
「今のアタシたちにとっちゃ、この異世界こそが現実世界だけどね。ま、そんなところ」
「……でも、俺……」
「大丈夫。誰にも言いふらさないから」
「……」
ラソソイは過去の回想を、ツナグに語りはじめる。
「まず単刀直入に、アタシの死因から話そうか。……アタシさぁ、14歳のときにね――母親に、殺されたんだよね」