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転生の革命家  作者: みおゆ
第一章・革命軍は名を上げて
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1-1 炊事洗濯はお手の物!

「……きったねぇ……」


 ツナグは現在、案内されたヒトリとキズナの住む家へと訪れていた。


 家の中は物で溢れており、床は見えないほどに整理整頓がなされていない。

 ゴミ箱からはゴミが溢れ、本当にここで生活しているのかと疑ってしまうほどだ。


「……え? マジでここに住んでるの?」


 ツナグはヒトリとキズナに問うと、二人とも罰が悪そうに目を逸らしながら頷いた。


 どうやら自宅が不衛生だという自覚だけはあるらしい。


「……あ! でもここだけだよ、こんなに汚いの! ほかの部屋はそんなに使わないから、ちゃんときれいだよ!」

「いや、まずリビングだけでもこんなに汚いのはさすがに……」


 ツナグは顔を引き攣らせながら、改めて部屋の惨状を見渡した。


 これはなかなかに掃除のやりがいがありそうだ。


「……あ」


 何か思い立ったようなツナグを見て、キズナは「どうしたの?」と尋ねた。


「……そういや俺の部屋も、掃除できてなかったなぁって。急にこの世界に来ちまったから、なんも片づけ、できてなくてさ……誰かが上がり込んでたら、恥ずかしいなぁ」


 ツナグの話を聞いたヒトリは、


「もういいじゃないかぁ、そんなこと。それよりも、さっさとこの部屋を掃除したまえ」


 と、ツナグを指差しながら命令した。


 この部屋の惨状を作り出したことを棚に上げて命令するヒトリに、ツナグは半ば呆れながらも、革命軍の雑務係として動かねばなるまいとスウェットの袖をまくりあげながら、気を引き締める。


「――よし! 異世界で最初のひと仕事だ! ヒトリさん、掃除用具借りるッスよ!」

「ああ、地下の倉庫にひととおりあるから、好きに使うといいさぁ」


 ツナグは、早速掃除へと取りかかりはじめた。




 ◇




 二時間近く掃除を続け、家の中はさっきまでとは比べ物にならないくらいきれいになった。


 これもツナグの努力の賜物である。


「さて、ヒトリさんたちを呼んでくるか」


 掃除の間、二人には外へ出てもらっていた。


 ツナグは二人がいる庭先へと出て、家の中へ呼ぶ。


 生まれ変わった家を見た二人は、目を見開いた。


「わぁ! とってもきれいだよー! それにしても、ウチってこんな広かったんだね!」

「いかに物で面積を減らしていたかわかるねぇ……」

「これからは、なるべくこれを維持してくれ……」


 ツナグの言葉に、キズナは「がんばるね!」と答えるが、そんなキズナとは対照的に、ヒトリは「ふむ。できればねぇ」と答えていた。あのゴミ屋敷の原因は、実はヒトリが主な原因ではないのかと、ツナグは変な勘ぐりを入れてしまう。


「じゃ、ツナグも頑張ってくれたことだし、お茶にしようか。わたし用意してくるから、ここで待ってて!」


 とキズナは言って、アイランドキッチンのほうへと移動した。移動してからも、「うわぁ! キッチンがピカピカだよ!」と喜びの声を上げていた。


 ツナグは先にソファへと座る。


 ヒトリだけはソファに腰を沈めながら、ローテーブルの上に乱暴に足を乗せた。


 ツナグは反射的に、冷めた目でヒトリを見つめた。


 ヒトリはすぐさまツナグの視線に気づき、「何かね?」と言うが、ツナグは「……いえ。なんでもありません」と、この家の主に対してモラルうんぬんのことを言うのは控えた。


「にしても、ツナグくんはすごいねぇ。家事、できるタイプなんだねぇ。まさかこんなに使える雑務くんだとは思わなかったよ」

「元いた世界では俺、結構家のことをやってましたから。炊事洗濯お手の物ッスよ」

「ふぅん……。家事ができるなんて、さぞかしモテたんじゃないかい? 家事ができる男なんて、魅力的だもんねぇ」

「…………」


 ツナグ黙り、やや顔を俯かせた。残念ながら、元の世界でモテていたとはとてもいえない。


 ツナグの反応を見てヒトリは察したのだろう。ヒトリはハッとした様子で口元に手を当てた。


「そうか……顔のせいでモテなかったんだねぇ……」

「いや失礼だな、アンタ!!」


 ツナグのツッコミに、ヒトリはケラケラと笑った。その後、「ごめんごめん、顔はまあまあいいほうだと思うよぉ」と、ヒトリはフォローの言葉をかけてくれたが、ツナグはすんなりと聞き入れられず、ムッと頬を膨らませた。


 ツナグはそこで、ふと気になっていたことを思い出した。この機会に尋ねてみようと思い、ヒトリへこう質問する。


「……あの。そういえばさっき、山賊に言われてたッスよね? 『三大卿(さんだいきょう)』とかって……。それってなんなンスか?」


 ヒトリは「ああ、あれねぇ……」と呟き、答える。


「まあ、ひとことで言えば称号、だよ。ほかの人々よりも超越した力を持つ、世界上位三人のことを指すんだ――で、そのうちの一人がわたしってわけ」


 さらりと教えられた衝撃の事実に、ツナグは驚愕した。


 確かに、パインドゥア村のことを振り返れば、ヒトリの強さは素人目から見ても段違いだった。まさか異世界へ来て早々、こんな大物と対面していたとは、ツナグも今更ながら震えを隠せない。


「大層な称号をもらったけどねぇ……結局言い換えれば、『世界三大要注意人物』ってわけさ。世界からしたら、わたしたちの持つ力を暴発させられちまったらたまったもんじゃないからねぇ。つまり、世界政府に目を付けられてるってことだねぇ。ま、見返りとして世界政府(彼ら)からいろいろ金銭的な享受とか受けてたりするんだけど……ねぇ……」


 ヒトリが世界政府からお目付け役をつけられているとは思わなかったツナグは、なぜこんな人の元の革命軍なんかに入ってしまったのだろうと、深いため息をついた。同時に、ツナグは大きな不安要素に気づくことになる。


「――ってか、そんな立場で革命家なんて名乗ってるンスか!?」

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