表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/154

089:地下8階1

いよいよ8階に乗り込む時が来た。

ここまでは大きな問題にぶつかることもなく、それほど探索に時間を取られることもなく、順調だったのではないでしょうか。

ただこのフロアは本当にものが違うと思うので頑張ってほしい。

まず階段下からすでに違う。

下り立った場所はいつものダンジョンなのだけれど、部屋の半ば辺りからゴツゴツとした岩肌の露出した洞窟へと変わっている。当然扉などもなく、形を変え通路のように狭くなりながら左斜め前方へと抜けていく形になる。進行方向としてはそのまま左斜め前方へ続く部分と、ぐるっと左手前へ曲がってカーブを描きながら通路のような部屋のような広さになる部分と、そして右へと曲がって先へ進む部分との3つに別れる。

直線がないため見通しが悪く、ゴツゴツとした地面は歩きにくく、しかもところどころに水たまりができている。壁も湿り、天井からは時折水滴が落ちてきて、その水に濡れた壁や天井がランタンの光を反射している。

クリストの「やりにくくなった」という8階に到達してすぐの感想がうれしい。

ここまではダンジョンはほぼ全域が石組みの直線で構成されていて、ところどころに洞窟風だったり土や水のある場所もあったけれど、構造自体は複雑ではなかった。それが8階に下りた直後からこれだ。偵察と地図書きの労力が跳ね上がるだろう。


まだところどころに石組みのダンジョン壁が残っている右手沿いを進むと、入り口部分の石組みが残っていて分かりやすく部屋になっている場所に出る。

フリアが魔物の存在を報告し、エディが盾を構えて前へ。そのまま部屋の入り口へ近づいていくと徐々に中の様子が見えてくる。そこにはトカゲの頭と長く太い尻尾を持つ人型の魔物、リザードフォークがいた。

カリーナが味方へ強化魔法を使い、それを待ってからエディとクリストが動き出す。

その肩越しに見えている2体のリザードフォークを狙い、フェリクスのマジック・ミサイルが飛び、命中する。

ギャアッという声を上げた盾を持ったリザードフォークがエディに接近、武器と盾を持つ物同士という形でエディを前に棍棒を振りかざして踏み込んでくる。

クリストは別のリザードフォークとの戦闘に入り足に切りつけるが、その後は槍との打ち合いになってしまい接近戦を続けられず距離が離れた。

その2体の間に割り込むように奥からもう1体が姿を現すと、持っていた槍をクリストに向けて突き出し、2対1の構図を作りだす。

カリーナがクリストが相手取るうちの、最初の1体に向けて魔法を放ち、クリストがそこに追撃するように剣を振るって、ようやく倒すことに成功。クリストはもう1体のリザードフォークに向かい合う。

エディの方は武器と盾を持つ同士で、攻撃を防ぎ、攻撃を防ぎが互いに繰り返す状態になっている。

そこへフェリクスの魔法が命中、一瞬硬直した隙を逃さすにエディが踏み込み、相手の盾と体との間に武器をねじ込み体を開かせ、そこへ盾ごと体当たりをするように突っ込んだ。もつれるようにして倒れ込むと馬乗りになり、右膝で相手の武器を押さえ、盾で棍棒を押さえる。正面ががら空きになったところで剣を抜き、何かを叫ぶ口を目掛けて深く突き刺した。

槍を器用に振りクリストと打ち合うリザードフォークの背後には、いつの間にかフリアが回り込んでいる。そして地面に落ちていた石を広い、その後頭部目掛けて投げつけた。

フリアが投げられる程度の石でダメージを稼げるというわけではないだろうが、この嫌がらせのような攻撃にリザードフォークは引っかかり、思わず後ろを振り返ってしまった。

クリストは止まった槍を握る腕を切り落とし、そしてそのまま、あ、という形で正面を見直したリザードフォークの顎の下から思い切り剣を突き上げると、その剣は後頭部まで突き抜けた。


わりと強い初見の魔物を3体そろえて投入したのでじっくり見てみたのだけれど、とても上手に対処されてしまったと思う。戦い方にバリエーションがあるのだよなあ。攻撃魔法もそこまで強力なものを使っているわけではないし、なによりダメージよりも相手を崩す目的で投じられたあの投石が良かった。

あの投石に物の見事にリザードフォークが引っかかってしまったもの。投石一つで戦況が変わったのだからうまい手だったと言っていいでしょう。

部屋の中は半分くらいは石組み半分は洞窟風というようになっていて、洞窟側の水たまりには宝箱が埋もれている。この宝箱もさすがに8階なので罠を強力にしてみたのだけれど、さすがに不審に感じたフリアが意見を求め、そして魔法使い組から石化の魔法だとあっさり看破されてしまう。

うん、そろそろいいだろうと使ってみました。石化の罠。ディスペルがあれば消せるよ、ここで魔法を消費しておかない?

なーんて自慢したところで、バレている時点で効果なし。倒れているリザードフォークの腕を持ってきて触らせて、それで石化の効果を使い切らせて終了。こういう解除の仕方を承知しているあたりが憎いわね。

宝箱の中身は杖で、全体に赤く渦巻く炎のような装飾が施され、先端はトーチのようになっている。そしてカリーナが手に持つと、そのトーチ部分に火が灯った。

ふふふ、上で言われてしまいましたからね。ここでダメージを稼げる危険な武器のプレゼントですよ。ちゃんとありますからね。これもいいものだけれど、今後も適宜投入していきますからね。お楽しみに。


ここからは完全に洞窟になっている場所の探索が始まる。

まずは手近な方からと進み始めた場所も、地面がでこぼこしてさらに濡れていてと歩きにくく、どうしても音もしてしまう。ランタンの光も壁や地面やいろいろなところで反射してしまい、魔物に先に気づかれる危険性は高まっていた。

壁沿いを慎重に先行していたフリアが壁に張り付くようにして先をうかがう。

その視線の先にはジャイアント・フロッグ。エディが盾を構えて踏み出すとそこへフロッグが延ばした舌が命中して激しい音を立てる。そのまま距離を詰めると武器の間合いになるというところで、フロッグは跳びはねて距離を開けた。

別のフロッグにはクリストが迫り剣で切りつける。さらにフェリクスのレイ・オブ・フロストが決まり、カリーナのチル・ハンドが足をつかむ。

飛んでくる舌を盾で受け流したエディはその開いた口目掛けてアックスを突き入れて撃破、クリストは移動を制限された目の前のフロッグに剣を突き刺してこちらも撃破。

これで終わりかというところで増援が登場する。


フリアが警告すると、左の壁が途切れる辺りからズリズリ、ズリズリという地を這う獣の音がし始め、そしてジャイアント・リザードが姿を現した。

大きな口を開けてエディに噛みつこうと迫るがさすがに盾が邪魔でそれ以上近づけなくなる。盾越しのにらみ合いになったところへフェリクスが電撃の魔法を放ち、横へ回り込んだクリストが剣を頭に向けて振り下ろした。

そしてさらに増援が登場する。

まだリザードは倒し切れていないというところで後方からバタバタという羽音が聞こえてくる。ジャイアント・バットだ。

カリーナがその進行をさえぎるために洞窟の空間を埋めるような形でウェブの魔法を使うと、その糸に絡め取られてジャイアント・バットの動きが止まった。

こうなってしまえば増援の意味などない。リザードはもうそれほど余力は残っていないだろうと判断し、エディにその場を任せるとクリストは後方へと移動する。

そのエディはアックスを手に構え直すとリザードの頭に突き立てた。これでこちらの決着は付いただろう。

そしてバットがまだウェブの拘束を抜けられないうちにクリストが間に合い、剣を突き入れる。さらにそこにフリアも参加してナイフを突き刺してダメージを稼いだ。

フェリクスのウィッチ・ボルト、カリーナがクロマティック・オーブを重ねてダメージを稼いだことでようやく1体が動きを止め、ウェブに体重を預けてぶら下がる。残りは1体のみ。

リザードを倒したエディがウェブをようやく抜け出たバットの顔面を狙って盾を打ち付けると、ジャイアント・バットのターゲットはエディに固定される。

エディと戦うことに夢中になっているところをクリストが回り込み、翼を切り裂くようにして剣を振り回すと、飛ぶ力を失って地面へと落下する。こうなってしまえばジャイアント・バットなどただの的。袋だたきにあってあえなく撃破されてしまった。


洞窟という地形は前後からの挟み撃ちの形を作りやすい。フロッグやリザード、バットなどの魔物は暗闇や不整地をものともしないというメリットもある。さすがに相手が悪くて押し切られてしまったけれど、8階はこれが続くのだ。間違いなく消耗させやすい。

ただ対策も考えられる。状況に合わせてフリアが魔物を釣ってまわって数を集めたところをドカンとたたくとか、1体ずつを釣り出して各個撃破するかという案が出ていた。こういうところはダンジョンRPGのイメージよりもミニチュアゲームというか、遮蔽物があって視線、射線を計ってっていうウォーシミュレーションに近くなるのかな。考え方を変えていかないといけないよね。

「上層でちまちま出していたのはこのためか」「本当はこうやって使いたかったのか」という声が聞かれる。まあね、そういうことですね。

単体で見れば弱い魔物だから上層で使うのに便利だったっていうことももちろんあるのだけれど、それ以上に環境を整えて一斉に大量に投入したかった。

暗闇、不整地、水滴の反響音、上下分割、状態異常を含む攻撃。ここまできてようやく意味のある状況を作れた。8階は先に進めば進むほど魔物の数が増えるし、冒険者がいない場所では常に魔物出現の判定が行われている。運が悪ければ膨大な数のリザードに足元を埋められた上でバットが大量に頭上からとかだってあり得るのだ。さあいよいよ楽しくなってきたぜ。


本日の探索はここまでとしたようで、次は7階を埋めたうえで階段室で回復、それから8階を攻略。対応は基本的に釣り出して各個撃破。まとまっていることが確認できたら範囲で一気にと方針が決まる。

そこからの帰途、来たときのルートを巻き戻すような形での行程は長く、当然魔物との遭遇も発生したけれど、ドレッチ2体、マネス2体、オーク1体では特に何も言うことはありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ