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066:

今回の視察は森の東側、沼地一帯になる。

別荘から遠いということもあってあまり手を入れていないので、自然のままの森の散策が楽しめる。

まあ低木の枝葉や下草、倒木、不整地の地面で歩きにくいというだけなのだけれど。

魔物との戦闘も想定されているので叔母様はそれにも対応できる装備。革鎧に金属板を打ち付けたブリガンダイン? とかそういう感じのもの。軽戦士がプレートなんて無理無理っていうことでこれになったって言っていた。それに取り回し重視のショートソードとスモールシールド。今回は森の中だからね、長物はダメよ。

わたしも参加するのでこういうときのために用意していた布製の防具を身につけ、これも用意しておいた強力なクラブを腰につるした。

防具の布は強度の高い糸に金属糸を混ぜたもので作られていて、ウルフたちはどうかわからないけれどラットとかスネークとかの牙が通らないだけの防御力を持っている。まあ2号ちゃんの管理下で防御力もなにもないのだけれど、もしかしたらわたしの出番もあるかもしれないからね。

ギャンベゾンとかリノソラックスみたいな重装の布鎧ではないよ。あんまり布の中に仕込むと重くなるからね、単純に糸の強度を挙げることで対応している。本当ならこの上からメイル系を着るんだろうけれど、やっぱり重くなるからなし。防御力は布の強度を上げて対応しているで全部押し切るよ。

クラブは予定通り強引に性能を引き上げた。今回使うことはないかもだけれども、仕様としてはスタンガンだ。接触式とワイヤー針式の両方の機能を組み込んである。そして電撃の元となるのは電池、充電池を採用した。わたしのダンジョン内で充電されて、持ち出しても使える仕様。一応予備の電池も携帯して交換して使うこともできるよ。

ボタンを押して相手に当てれば電撃が走る。電圧は切り替え式でビリッとしびれるくらいから死ぬかもっていうところまで。

そして持ち手の先端部分を相手に向けてボタンを押せばワイヤーで本体とつながった針が飛んでいって相手に刺さるっていう機能も搭載。一発しか撃てないけれど離れていても使えるからね、便利よ。

これでクラブの頭の部分も小さくできたし、軽くなっていい感じ。どこかで試したいけれど、今回機会があるといいねえ。またゴブリン来てくれないかしら。


やる気に満ちて庭で待っているのだけれど、なかなか来ないわね。と、来た? 来たね。2号ちゃんから連絡あり。あれ、歩きなんだ。あー出張所予定地まで来て、そっちの視察をしてからここまで歩いてきたのね。

おお、見えてきました。先頭にモニカさん、あと2人、男性が一緒だね。ギルドの人か護衛の人か。

両手を広げて挙げて、歓迎のポーズ。何をやっているのみたいに見られたけれど気にしない。

「お久しぶりです。今日はよろしくお願いします」

モニカさんのあいさつには叔母様が対応。わたしはあくまでもついで参加ですからね。

「お待ちしていました。ステラの参加も了承していただいてありがとうございます。どうしても見ておきたいというものですから」

「いえ構いません。安全策は取りますし、護衛もつきますから」

紹介してくれた後ろの2人。一人はラメラーアーマーのごついひげ面のおじさんで名前はウーゴさん。ギルドの警備部門の人で今回の護衛役。ロングソードとタワーシールド。盾はわたしを完全に覆い隠せるくらい大きい。察するにわたしを守るのが主任務と見た。体つきはごついしひげ面なせいで一見怖そうだけど、表情とかあいさつの様子を見るに良い人っぽい感じがする。

もう一人の人はギルドの副支部長ベネデットさんで、モニカさんの直接の上司だって。今回は公式の視察で記録が残るから参加したみたいよ。顔は優男風だし、装備がギャンベゾンというかキルティングアーマーなせいで体形が分かりにくいけれど、どうにもつわもの感のにじむ人ね。武器はロングソードだけしか見えていない。あと片眼鏡を着けている。


『完全に格上ですね。ウーゴは元軍所属の戦士、引退後に冒険者となりギルド雇用が決まったことでCで引退ということのようです。クラスはバトルマスターですが、スキル構成が完全に護衛役です。珍しい盾職ですよ。ベネデットは、こちらも珍しいですね。ファイターとウィザードのマルチクラスになります。それとあの眼鏡は鑑定のモノクルという魔道具のようです』


おっと良い情報が。そうか鑑定のモノクルね。そういうものがあるだろうとは思っていたけれど、ここで来ましたか。

わたしの武器も防具も専用の名前を付けて、性能はちょっとごまかしているから良いでしょう。わたし自身を見ても素の状態、スキルなんかはなしで表示されるだろうし、良いでしょう。2号ちゃんも偽装済み、ウルフたちも偽装済み、よし大丈夫。

わたしも歓迎のポーズを解いてあいさつ。それでウーゴさんのタワーシールドをわーっという感じで見せてもらう。うむ、持ち上がらん。本職の人はプレートアーマーを装備した上でこれを振り回すとかするのよね、すごいわね。

「では予定通りに。外を回ると時間ばかりがかかりますから森の中を突っ切りましょう。道案内は、ステラ、今日はどの子が?」

おっといつの間にか話が終わっていましたよ。

道案内役ね、今日はねえ、ルプスさんとルパさんは出せないのは当然なのだけれど、キニスくんが山の方へ遊びに行ってしまったものだから、ニクスちゃんしかいないのよね。納屋へ行って呼んできましょう。

「おーい、行くよう」

扉を開けて声をかけたところでスライムさんの向こう側から顔がにょきっと上がってくる。一応待っていてくれたらしいけれど、顔つきが明らかにやる気ありませんなのは何とかしてほしいわね。

「帰ってきたら美味しいもの出してあげるから頑張ってよ。モニカさんにできる子だってアピールするのよ」

何しろモニカさんとは長いお付き合いになるからね。好印象を持っていてほしいのよ。

ニクスちゃんを連れて戻るとモニカさんが小さく歓迎のポーズを取っている。やっぱりお好きな様子。あとでブラッシングでもやってもらうと良いかもね。

「ノッテシンリンオオカミですか」

ここで鑑定登場。やっぱり使ってきましたね。

「鑑定ですか?」

「ああ、失礼しました。この眼鏡が鑑定機能を持っていまして、先に伝えておくべきでしたね」

「視察が目的ですし、魔物や薬草の名称を確定しておきたくて」

叔母様の問いにベネデットさんが明かしてしまったので、モニカさんも慌ててフォローする。まあね、何も言わずに鑑定するのはマナー違反よね。

「分かるのは名称だけで魔物の驚異度も薬草の効能も結局は戻ってから調べることになるのですが、それでも名称が分かるということは重要なことですから」

へえー、鑑定って案外レベルに幅があるのかな。鑑定レベル1からレベル10みたいな。


『どうやら刻まれている文字数の問題のようですね。スクロールのように多量の魔方陣や紋章、文章を記せるものほど多機能であるようです。片眼鏡では機能はそれほど盛れないということですね』


なるほどね、理解した。小さい場所に細かい文字とか魔法陣とか刻める細工師だったら高性能なものを作れるのかしら。


『恐らくはそうなるのでしょう。ただその細工師が魔法陣に詳しいかどうかという問題がありますが』


ああいう魔道具を作るのって、アーティフィサーっていうんだっけ、魔法技師だね、その専売特許だったような気がする。魔法陣は魔法円と呪文の組み合わせ。いずれにせよ魔法使いが独自に編み出した何たらかんたらで、ものすっごいバリエーションがあったような。どちらかというと細工師が知っているかという問題よりも、魔法使いが刻めるか問題になるのかな。

ちなみにわたしのスタン・クラブは魔法を使っていない物理仕様なのでどこにも魔法陣とかはない。ライトニング・スタッフとかあるらしいけれど、そういうのは魔法陣を魔石で起動する仕組みになっていて、組み込まれた魔石を使い切ったらただのスタッフになるらしいよ。


ベネデットさんとモニカさんの謝罪を受けいれて、わたしたちの出発の準備もようやく整った。

ニクスちゃんが先頭、その後をわたしと隣にウーゴさん、さらにその後をモニカさんを中央に叔母様とベネデットさんという編成。わたしの足にあわせてこうなったのよ。

冒険、久しぶりね。ね、何か内緒で仕込んでくれてもいいわよ。ゴブリンとか、ゴブリンとか、ゴブリンとかね。あ、でも腰みのは着けておいてね。

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