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そんなわけでわたしもいよいよ8歳なわけですよ。

もう残り時間が2年を切ってしまう。これって結構ギリギリなのではないかしら。


『ギリギリですね。ようやく街道南側の資材置き場に木材などが少し運び込まれた程度で、いまだに森の木の伐採には手を付けられていないのが現状ですから』


今年は建設、来年は調査。予定していた予備日が消えてなくなったわね。

それで、やっぱり外の観察にはスライムが使えたのね?


『はい。2号は森の外を観測できませんが、警備スライムのカメラは問題なく外を捉えています。やはり有効な手段でした』


ダンジョンの中を見るだけなら3号ちゃんに映してもらえば良いけれど、機能特化のスライムを用意することには意味があったわね。

まあ人を駄目にするスライムさん、どんなものでも消化吸収できる掃除スライムと来たら作らないわけにはいかなかったけれど、ロマン的な側面の方が強かったからね。2号ちゃんの外を見るのに使えるっていうのは良い発見。

それで外に送り出したスライムがどうなるかも調べられたのね?


『はい。結果は予想通りとも言えますが、やはり知能の問題という結論で良いのではないでしょうか』


やっぱり駄目だったのね。

機能を何も持たないただのスライムを用意して、生まれ故郷にノッテの森を設定しただけの状態で森の外へと送り出した、その結果だ。

予想は戻れないだろうというものだった。いや、正確には戻ったり戻らなかったりという、状況に左右される結果になるだろうというものね。

何もなく何となく戻る、何かを見つけてそこへ向かった結果戻らなくなる、進んだ結果地形に阻まれて戻れなくなる、単純に別の場所に居着く、バリエーションはいろいろとあるだろうけれど、あえて意図的にノッテの森に戻ろうという行動は取らないだろうと予想していた。帰巣本能だけでは戻ってこないだろうと。


『結論としては、何の機能もない、何の特徴もない、ただのスライムは本当にただのスライムだったということです。あえて主に2号を登録した個体も用意してみたのですが、結果は変わりませんでした。主の元へ戻ろうという意思もありません。やはり考えられるだけの知能が必要です』


ウルフたちが森から山へ出かけていって普通に戻ってくるのは、家がここで主がわたしだと認識しているということね。そこへ戻ろうという意思がある。

スライムも利用しようと思ったら知能を引き上げた固有魔物として設定しないとだめだろうね。そしてこちらとのパスがどれくらいの時間、どれくらいの距離を維持できるのかも見てみたいけれど、そんな高い知能を持った魔物を外へ送り出していいものなのかどうか不安がある。


『時間だけでしたら山の、森から出た辺りでひたすら待機するように指示を出しておけば可能ではありますので、移動不可能な形状のゴーレムをルプスにでも持って行ってもらいましょう。それで2号との接続が続く限り待機です』


おっけーよ。それで時間だけは把握できるね。いつまででも大丈夫なようなら満足するまで計って終了で良いよ。

それで外へ出ても長時間接続を維持できるとなったら知能を引き上げたスライムを持ち出し専用で用意しても良いかもね。


『そうですね。掃除スライムの対象を消去する能力と、警備スライムの隠密と暗殺の能力とを合わせれば大抵の場所での破壊工作が可能になります。有用でしょう』


何を破壊しようというのか。

まあ言いたいことは分かるし、便利だと思う。いずれよそのダンジョンを攻略しようと思ったらわたしに使える攻略手段は必要だし、何というか、例えば誰かに捕まってどこかに閉じ込められたとしても余裕で脱出できるし。どういう国でどういう世界なのかをわたしはまだよく知らないので、手段を用意しておいて駄目ということはないだろう。


あとは何だろう何かやっておくことはあるかな。

作業が始まってしまえばわたしがダンジョン周辺で森に変化を付けることは難しくなる。どうしても人目があるからね。植生、生態系、見た目で分かる変化は駄目。


『東側、沼地とその周辺は少しいじっておきましょう。話に出ていたようですし、立ち入る可能性が極めて高いでしょうから』


ああ、それはあったわね。今までは何だっけ、スネーク、トード、バットだったかな? 3号ちゃんにもそこそこの数を配置したタイプだけれど、よく考えていなかったから正式名称とかは変わってしまうのかしら。


『ダンジョンの浅い階層で出現する魔物とは共有性を持たせても良いかもしれません。名称の統一ですとか、能力の統一ですね』


統一感を持たせるのね。浅い階層なら雰囲気は出て良いかもしれない。そうすると追加でゴブリンと、あとは弱めのスパイダー系とかだね。ゴブリンの上位種は避けて、それとは別に何かちょっと追加してみようかな。せっかくの水辺だから水棲系とか植物系を入れてみたらどうかな。水棲はもうトードが出るし、植物もマンドラゴラがあるのだから違和感はないでしょう。

ここまでやって、配置も適宜調整するとして、そうすると薬草とかの採取にも対応しないといけないわね。

ハシバミ、トゥルシー、バーベナ、シルフィウム、ランガク、ロートス、オレガノ。体力回復、魔力回復、それから状態異常の回復だね。用途はいろいろあって良い。少なくともこちらの世界に実在していて、植わっていることに違和感がなくて効能が分かっているものなら何でも。とんでもないところにしか生えないものがあったらダメだからね。そういったことには注意して。あとは薬剤師さんが頑張ってくれるでしょう。

うん、こんなものでしょう。植生に関してはあとは2号ちゃんにおまかせよ。

そうしたら、どうしようか、ロープを引っ張るとかして立ち入り禁止区域は明確にしておいたほうがいいかしら。たぶん冒険者の中には何も考えずにどんどん入ってくる人が必ずいるわよね。


『いるでしょうね。特に薬草採取は低ランクでも可能な依頼でしょうし、ギルドで警告してもらったところで話を聞かない、あるいは無視する層は必ずいるでしょう』


いるよねえ。低ランクの人たちにも森に親しんでもらうのは構わないのだけれど、勝手をされるのは嫌だわよね。しかもそれでウルフたちと遭遇して倒したい倒す討伐だなんてなってもらっては困る。2号ちゃんが排除することはできるけれど、それをするわけにはいかないからね。

やっぱりここはロープを引いて領主所有の管理地です、ロープを越えての侵入は罰則がありますって警告を出しておくしかないのかな。


『それでも越えてきたものには何かしらの対処を行うことを考えましょう。ウルフたちでも構わないのですが、やはり別に専用のお仕置きモンスターを設定するほうが良いでしょうか。どうせ警告に従わないのはそういう冒険者です。手荒な対処をされたとしても仕方がないでしょう』


お仕置きモンスターは良い案だと思うけれど、暴力的に対処してしまって大丈夫かな。やっぱり討伐が必要だ案件にならないかしら。


『配置した魔物と同種の特殊設定個体を使う、隠密性能の高いスパイダー系かスネーク系を使うことを検討していたのですが、何か方策を考える必要があるかもしれませんね。設定だけはしておいて、使い方に関しては検討してみます』


そうね、そうしてもらおうかしら。ね、スパイダー系のお仕置きモンスターはこの手の話にはある要素よね、そう考えると何かイベント的な、こう、事件を起こすのは良いかもしれないわよね。


『なるほど、事前に設定開示のためのイベントを起こす、ということですね。ではスパイダー系で特殊個体を設定します。普段は使わずに樹上にでも待機させておくか、ウルフたちにも周知して森の東側での警備担当をさせましょう』


よっし、これでおおよそ固まったかな。

あと2年か。あと2年で測量、伐採、建設、調査か。おおっくない? 本当にちゃんと終わるの? 最低限ここまではわたしがいる間に終わってもらわないと困るんだけどな。

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