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058:

2号ちゃんから馬車が2台、敷地に侵入したと連絡が入った。そのうちの1台はわが家の馬車だという。

お父様が役所の帰りに寄るということは聞いていたけれど、もう1台は何だろう。

「馬車が2台来たようなのですが何でしょう。1台はうちのもののようですが」

「ん? 2台? 今日はブルーノ兄様が来るっていうことは聞いているけれど、それならあれかしら、ギルドの関係者。あいさつとか視察とか」

ああ、なるほど、それはあり得るわね。

どう? ギルドの紋章とか旗とか記名とかあるかしら。


『ギルドのようですね。後ろ側に冒険者ギルドの記章を確認しました。男性3人、女性1人ですね、何者かまで確認しておきます』


「男性3人、女性1人、冒険者ギルドっぽいですね」

視察ということはダンジョンの現地を見てみたいっていうことよね。偉い人かどうかはわからないけれど、人数も多いし、その可能性が高そう。

家に寄るということはないだろうけれど、叔母様は同行した方がいいわよね。

何事か考えていた叔母様が立ち上がって物置へ。考えたことは同じでしたね。すぐに剣と盾も持って戻ってきた。それ以外の装備を持っていないところを見ると、必要なしの判断のようす。まあいらないですけどね。

「私も一緒に行ってくるわね。何か聞いておいた方がいいことはある?」

さすがにわたしは同行できませんからね。

聞いておくこと、何かあるかな。今後の予定はお父様が把握しているだろうけれど、一応現状を確認しておいてもらって、あとは何だろう。

あー、ウルフたちを見られたときの対策が必要かなって思っていたんだった。


『ですが、さすがにルプスとルパは大きすぎます。どう考えてもオオカミでは通用しません』


それよね。仕方がないからキニスくんを手なずけたオオカミということで連れて行ってもらって、作業員の人たちがイヌっぽいものを見てもびっくりしないように話をしておいてもらいましょう。

「一応キニスくんを連れて行ってもらえますか。今後どこかで見られたときの言い訳のためですね、オオカミを餌付けしましたということで」

「ああ、そうね。見られる可能性はあるわよね。それじゃここの納屋で餌付けしていることにしておくわ。あとは森の情報はどうする? どこまで話す?」

「ウルフたち以外は話してしまって問題ないとは思いますが。ルプスさんとルパさんだけは見つからないように2号ちゃんに管理してもらいます」

魔物情報とか薬草情報とかは出してもいいでしょう。ダンジョンが開放されたらこの辺りにも冒険者が出入りすることがあるだろうけれど、狩りの対象になるような魔物っていうとウルフたちが一番になってしまいそうだから、うちで餌付けしていますよとアピールしておかないと。

薬草も東の方にちょろちょろあるくらいで、あっち側はウルフたちはほとんど行かないからいいんじゃないかな。

山のオオカミたちがシカやイノシシを欲しいだろうし、ウルフたちもたまには狩りに行きたいだろうから、動物狙いの狩猟はあまりうれしくない。そこだけは伝えておかないといけないね。

「採取は良いでしょう。魔物はトードやスネーク、ゴブリンだとかは狩ってもらって構わないので東側でなら。そうすると薬草がだいたい東なので、向こう側だけは良いことにしましょうか。それで狩猟、シカですとかイノシシ、ウサギ、ネズミ、タヌキ、そしてオオカミと、動物を狙うのはやめてもらいましょう。保護区です保護区。そういう設定でいきましょう」

「東側での採取、魔物狙いは大丈夫で、全域で動物狙いはダメということね。分かった、伝えましょう」

玄関が開いてお父様とロイスさんが入ってくる。

同行してきたのはやっぱりギルドの人たちだったみたいね。馬車を移動させて降りてくるところが窓からちらりと見える。

「土地の所有は申請書を通してきたからね、測量が終われば正式にセルバ家の土地ということになる。それで商工業ギルドと、冒険者ギルドの関係者が視察をしたいということだったからね、一緒に来てもらった」

所有者が決まっている土地だと、後からよそ様の施設を建てた場合は地代がもらえるんだってさ。これまでセラータのあの辺りの土地だと、森以外は宙に浮いた状態だったからギルドが所有権を得て建物を作ることもあるし、空いているところには誰かが勝手に何かを作ることもできるんだって。

それで急いで所有権を取ることにしたみたい。

もともと空いている土地っていうのはセルバ家が仮に所有している格好になっていたし、書類を最終的に決済するのはお父様だからずるし放題らしいよ。ずるいわよね、ね。

「これから視察に行かれるということですよね」

「そうだね、えーと、冒険者ギルドのミルトの支部長と副支部長、それからダンジョンのところに出張所を作ることになるんだけど、そこの所長になる女性だね。あと商工業ギルドの支部長も来ているよ」

お、女性が出張所の所長になるのね。これは話がしやすくて良さそう。何しろこの別荘には基本的に女性しかいませんからね、お互いに行き来して交友を深めることもしやすいのではないかしら。

お父様と叔母様、続けてロイスさんも外へ出て、待っているギルドの人たちとあいさつを交わす。わたしはのぞき見。所長予定の女性は、おおおおお、眼鏡だわよ、眼鏡女子、すっごい事務員さんぽい雰囲気だね。元冒険者とかいう背格好ではない気がする。

さて、このままだとわたしは2号ちゃんを通じてしか見聞きできなくてつまらないからね。ちょっと小細工をするよ。


『ついにあれを導入しますか』


します。ダンジョンの調査をのぞき見するために準備していたけれど、いい機会だし、今回試してみよう。

テラスに出てキニスくんを呼ぶ。ウルフたちの中で一番普通のオオカミっぽい見た目で、一番物わかりがいいのがキニスくんだからね。今回も視察に同行してここで餌付けされているオオカミだとアピールをしてきてもらうのだ。

そしてそのキニスくんに、あるものを持って行ってもらうのだよ。

そう、それがこれだ。警備スライム。じゃじゃーん。

手のひらに載せて掲げたけれど、そこには何もないように見える。でもいるんだよ、ここに。何って、スライムが。

ふ、わたしは考えましたよ。見つかることなく冒険者の活動をのぞき見するためには何が必要かを。

まずカメラとマイクを搭載しなければならない。そして追尾するための自律行動が可能でなければならない。自律行動するということは揺れるということでもあって、カメラを搭載する以上その揺れをどうにしかしなければならなくて、そして追尾している相手に見つかってはいけなくて。

ふっふっふ。この警備スライムは中がゼリー状になっていて、それがサスペンションの役割をして揺れを吸収してくれるのです。

そして体表が透明なので、いっそのことと光学迷彩を施しまして。まあ普通の光学迷彩だと揺れて完全な透明は難しかったので、やけになって完全な透明設定にしてしまったんだけど、見事に中身ごと見えなくなって大成功。さすがダンジョン魔物の適当設定。

能力として、透明と気配遮断に無音、無臭、吸着、立体機動とかっていう完璧な隠密仕様にしたからね。ダンジョン内であればダメージ判定もないし本当に無敵だよ。


『やはりここまでやった以上は攻撃手段も持たせたいですね』


ね。目標地点はダンジョン内の警備だから、見て聞いて、不らち者を見つけたら排除できるような機能を持たせたい。まあ仕様的には光学兵器かなとは思っているけれど、今後の課題だね。

さて、そんな警備スライムをキニスくんの頭の上に乗せて。手を当ててふるふると揺らしてみるけれど、吸着がうまく機能しているのか落ちる気配なし。いいね。

見ると話が終わったようでダンジョンへ出発するようす。叔母様に手を振って、キニスくんの首に腕を回してよろしくねとお願い、叔母様の元へ送り出した。

さあそれでは、わたしは警備スライムの能力テストを兼ねたのぞき見に移りますよ。

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