表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/154

005:

ついに離乳食が始まりました。

麦なのかな、穀物ではあると思う。日本ならお米だろうけれど、この辺りは麦が主食なのかな。それのおかゆ。とろとろ。

それとベビーカーに乗っての庭の散歩が追加。これは大きな変化よ。

室内だけだとやっぱり景色に変化がなくてつまらないし、脳への刺激、情緒への刺激って大事だと思う。

わたしも大きな声が出せるようになってきたしね、きゃっきゃするよ。

問題はなんだかお母さんがそばにいてくれることが減ってしまっていること。これ重大。

どうも雰囲気的には家の仕事が忙しくなってしまっているからみたいで、それはそれで良いことだと思うけれど、忙しすぎるのはだめよ。わたしの前世が良い例よ。家の中にはいるらしくておっぱいの時間にはちゃんと来てくれているのが救いね。まだ時代的に粉ミルクは存在しないんじゃないかと思うしね、仕方がないね。

家の仕事が忙しいということは当然お父さんも忙しいみたいで、こちらは家にいないことが増えているんじゃないかな。メイドさんが枕元でいろいろ教えてくれる。心配ないですよ、今はちょっと忙しいだけですからねって感じで、わたしはそれをふんふんしながらわかったようなわからないような顔をして聞いている。

中堅国の中堅貴族って忙しいのね。領地持ちだからそのせいなのかな。景気が良くて忙しいのなら良いけれど、不景気で忙しくなるのは嫌よね。


最近のわたしはよく寝て、しっかり食べて、寝返りも打てるようになったからベッドの上でふんふん動いて運動して、ベビーカーで散歩に連れて行ってもらってっていう毎日。

何しろわたしまだ5カ月くらいの赤ちゃんだから。

もうね、赤ちゃんの成長って素晴らしいわね。

いや他の赤ちゃんのことは知らないから比較はできないけれど、うわー赤ちゃんすごいってなるくらいにどんどんできることが増えていく。

抱き起こしてもらうとお座りができるようになった。

寝返りついでに腕の力で体を起こすことができるようになった。そこからお座りには移行できずにぐるんと回ってしまったのは悔しかった。

体を起こした体勢からはいはいができるようになった。ベッドでのはじめてのはいはいは一歩二歩でベッドの柵に頭がつっかえてうおーってなった。もっともっと!

ベッドの柵まで進んだら柵につかまって立ち上がることができた。これはとても衝撃的だった。遮るもののない形で周囲を見渡すことができて、世界が一気に広がった。

お母さんやメイドさんに見守られながら、ベッドの柵伝いにいっちにいっちとかけ声をかけてもらいながら伝い歩きができた。

伝い歩きの先で、メイドさんが両手を開いてはーいこっちですよーとやっていて、わたしはそこまで柵伝いに歩くと、手を離して、はい、たっち! ひとり歩きができるところまでもう少し。

食べるものにも野菜っぽいものが増え、果物っぽいものが増え、肉っぽいものが増え、堅さもゆるゆるからだんだん固形っぽくなっていき、最近はわたしが手でつかんでも食べられるようなものも出るようになった。

それから驚いたことに、この世界には赤ちゃん用の本まであった。ひも閉じの白黒の本。手書きではなく、印刷なのが驚き。内容も大きく丸とか三角とかが描いてあるだけのものだけど、どこかの何とかいう小説の主人公のように、この世界にも本に情熱を傾けている人がいるのかも。

やー毎日忙しいし楽しいね。



うん楽しい楽しい日常を満喫している横で、ごめんよ、忘れているわけではないんだ。

うん、スキルの方は大問題なんだ。



あの日わたしはやらかしたらしい。

コアを取り出してもみもみしようかと思ったら、出てこないの。あれっと思ってうんうんうなった結果、頭の中にふわっと言葉が浮かんだ。【ワールド名:ステラ・マノ・セルバ】って。

ええーよ。ダンジョンはどこいったの。ワールド名ってなにさ。

わたしはあのときダンジョンコアを作ったんじゃないのか。

コアが体の中で定着してダンジョン化したとかいう話ならまだ納得でき、いやできないけれどまあわかる。わかるか?

一応人体は迷宮だみたいな言葉があったようななかったような、それをいうなら人体の世界、いやそれは何かの展覧会じゃなかったか。ああー、考えがまとまらない、混乱する。

たぶんコアが設置されたというのはあっているのだと思う。

でもわたしはスキルオーブだと思って、違ったとしてもダンジョンコアだと思っていたのだけれども。わたしのスキルってダンジョンマスターじゃなかったんかい。

あれってダンジョンコアじゃなくてワールドコア? だったの?

あ、もしかしてわたしがつかんで持ってきたのってスキルオーブなんかじゃなくて、そもそもがワールドコア? みたいなものを持ってきていたの? あれ? じゃあわたしのスキルはどうなるの?


とりあえず、とりあえずね、そこはひとまず置いておくとして。コアが設置されてワールドとかいうのが生まれたみたいだ。

しかもわたし自身に。

わたしが転生した世界は神様が作って管理しているようだった。

その世界にいるわたしの中にもう一つ世界ができた?

そうだとして、わたしはそのワールドを認識できているのかっていうと、これがまったくわからない。

わたしの名前がついているワールドなのに、わたしが認識できない、わたしが管理できないとかはないはず。コアが作れたときもそうだったけれど、結局神様にきちんと設定してもらわなかったせいで、わたしは何もわかっていない状態のままだ。

どこかにヘルプ機能とかないのか。

ウィンドウがない、認識できない、そんなものどうしたらいいのかわからない。細かい仕様とまではいわないから、基本操作部分だけでいいから知りたいのに、ヘルプ機能もない。へるぷーとかやってみてもない。何度目かわからないけれど、え、これはここからどうすればいいの。

ああー、誰か教えて、ヘルプ機能ぎぶみー。それか何かで読んだかなにかした気がするけれど、コアに対話機能つけてくれー。

神様はダンジョンは自然発生で、あとはコアが勝手にやっているみたいなこと言っていたから、たぶんコアには応答機能というか人工知能みたいなものが積んであるのだと思う。だったらワールドコアにもそういうものがあるかもしれない。

神様だって何から何まで全部を管理しているわけではないと思う。ワールド、世界、そこにはきっと自動で管理してくれる機能があるはず。

だから教えて、わたしはここからどうすればいいの。



煮詰まったわたしはここで考えることを棚上げした。

成長するのに忙しいからね。

これから体も心も成長して、この世界のことも学びながら、できることを考えていこうということよ。その間にいろいろ思いつくかもしれないからね。

なんて考えていたのは1カ月か2カ月前か。

わたしは1歳の誕生日を盛大にお祝いしてもらった。手作りっぽいケーキにろうそくが1本真ん中に刺さっていて感激した。火をふーって消すのには意外と必死になった。

そういえばこのとき初めてお祖母ちゃんという人にあった。

生まれた時とかその後はまったくいなかったような気がしていたのだけれど、どうも遠いところで暮らしていてなかなかこっちにはいないらしい。


それからついにひとり歩きをマスターした。ごめんうそ。一歩二歩とひとりで踏み出すことができるようになった。

ぱぱ、まま、ににが言えるようになった。お父さんはいきなり号泣した。お兄ちゃんはささっと部屋から出て行った。お母さんはわたしを抱きしめた。メイドさんたちは名前が難しくてまだ言えない。頑張る。

おっぱいはほぼほぼ卒業して、食事は手づかみからスプーンに移行しはじめた。なかなか難しくてうおーってなる。手づかみの方が楽なんだけどそこはやっぱり元成人女性としてはしたないと思っているのでがんばってスプーンをマスターしたいんだけどいやでも難しいんだって。

そんな毎日イベント尽くしみたいな日々をすごしていたある日の朝。んーっとのびをしながら目を覚ましたわたしに、語りかけてくる声があった。


『おはようございます、マスター。こちらはワールドコア、聞こえますか?』


どうやらわたしは驚きのあまり目を見開いて固まってしまっていたらしい。

朝ご飯の支度をしていたメイドさんが驚いた様子で声をかけてくるのにも気がついていなかくて、あとでへへへと笑ってごまかすことになったのだけれど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ