表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/154

134:

「あなたは今日はダンジョンに泊まるのよね?」

前日は一緒に別宅ですごした叔母様が朝の支度をしながら問いかけてくる。キッチンではキアラさんとヴァイオラが並んで朝食の準備中。

「そうですね、今日から数日の予定です。叔母様は今日はミルトでしたっけ」

「そうね。私は兄様の代わりにミルトへ行っているわ。イレーネ姉様は視察だし、今日は

無理ね」

「分かりました。わたしの方はヴァイオラとキニスくんかニクスちゃんかどちらかも一緒に行きますから」

「あまりおかしなことはしないようにね」

「しませんよう。今日は下の様子を見て、全て予定どおりなら軍も夜には来るでしょう。本番は明日からですね」

ゆっくりと朝ご飯を食べたらこのままミルトに行くという叔母様とキアラさんをお見送り。ヴァイオラが来たおかげで、キアラさんはすっかり叔母様付きの侍女状態。忙しくなってしまって大変だとは思うけれど頑張ってほしい。視察に行くというお母様には秘書見習いとしてユーナが一緒に行くという。わたしは地方に行く機会がないまま今に至るので、ユーナにはよくよくリッカテッラのあちらこちらを見ておいてほしい。


『私たちはこの世界のことをまったく見てきませんでしたからね。外遊となるとユーナが初のケースです。見聞きしたものは共有できるようにしておきます』


うん。セルバ家の娘としては本当なら地方視察とか着いていくべきだったのだろうけれど、引きこもってしまったせいでまったくそういう経験がないからね。資料から想像はできても本物を知らない。ユーナにはよく学んできてほしい。


『一緒に下へ行くのはニクスに決まりました。キニスは次ですね。人がいる状態の地下世界へ降りるのも今回が初です。予定どおりに動きましょう』


そうね。そっちも楽しみよね。行ったら部屋に荷物を置いて、内部の見学をして、広場の見学をして、それからルーナのところで自分の鑑定をしてみて。やることたくさんだー。


『軍も予定どおりに8階を突破しています。さすがに9階に下りたところで小休憩は取っていますが、やはり攻略を急ぐようですよ』


はっやいわね。この早さだと8階はショートカットしている?


『はい。湖の浅瀬を使っています。渡るのにも水面を固定化する道具というものを使用していました。この道具の詳細はヴェネレの方で押さえています。それからアボレスですが、爆発物を使用してダメージを与えることに成功していますね。倒しきることはできなかったのですが、それでも準備さえしていれば問題ないと発言していました』


ほほお。やっぱり強いわね。アボレスは脅威度もかなり高いはずなんだけど、それを準備していれば問題ないと言い切れるとか、すごいわ。


『倒すに至らなかった要因としてはアボレスの精神攻撃で2人脱落したことが大きかったようですね。精神攻撃対策と高威力のダメージ源を用意できればという前提でした』


なるほど精神攻撃か。やっぱり物理一色で編成していたからそこが問題になるんだね。そうすると9階はどうなんだ。ここでマインドフレイヤーが来たりすると面白くなりそうなのだけれども。


『9階に選ばれたのは第1ブロックにミノタウロスとローパー、アニメイテッドエリアにフラッグはなし、第2ブロックはミミックをベースに地下にグリックとマミー、最後にフロアボスとしてデーモンです』


ミミック! 来たわね。かなり難易度の高いところを引いたんじゃない? あれはミミックを知らないとどうしようもない、エリア全体が罠っていうところだから。ミノタウロスが再選出されたのはラッキー。グリックとマミーはどうだろう。ミミックエリア内で入り口を見つけることができるかどうかっていう問題があるからな。あとはフロアボス、今回はエンジェルはないのね。


『なしになりました。バルルグラの強化型プラス眷属のエイプですね』


冒険者さんたちの時はスパインド・デビルの強化型が単独だったっけ、あれはそんなに強くないんだよな。それにプラスでエンジェル。今回はどうだろうね、エンジェルなしがどう出るか。


『丁寧に攻略してもらえると非常に面白い構成なのですが、急いでいますからね。どこまでやろうとするか。第1ブロックもアニメイテッドエリアを見て、やりにくいということから別ルートがあるかどうかの確認を兼ねて1つは見てもらえそうなのですが』


そうね。ミミックを引いた時点で他のエリアが地下配置で決まるし、そうなるとそのまま通過する方を選ばれそうだよね。いずれにせよ軍の実力を見るのにも、消耗具合を調整するにしても、注目しておかなければならないわね。

さあそれでは準備もできたことだし、わたしも行きましょうか。


ヴァイオラ、ニクスちゃんと一緒に夜明けの塔一層へ。すでにギルドの職員さんたちが来ていて、トンカンと木材を組み立てて部屋に壁を作っていた。

「おはようございます」

ルーナのところまで行って声をかけると、向かいのギルド受け付けにはトーリさんがいて、おはようございますと一礼を受ける。トーリさんは基本的にここに毎日常駐する勢いで来る予定で、冒険者が普通にここを使うようになったらそこからは本当に常駐なんだって。もちろん交代要員の育成とか休憩時間の確保とかは当然する、らしい。

さて、わたしの方も今日はいろいろとやることがあるで順番にこなしていきましょう。

まずはルーナにもう一度おはようございますをして、そうしたらここの見学だな。一度昇降機まで戻ったらその周りをぐるぐる。おー、こういう仕組みになっているのねって、見ただけでは歯車やらチェーンやらなんやらかんやら組み合わさっているということしか分からないけれど。


そこから通路を交差点に向かってゆっくり前進。あ、左側のうちの部屋になる予定の場所、本当に木材が積んであるだけだな。まだ手つかず。そのうち頃合いを見てこっそり組み立ててしまいましょう。カウンター前を通過したら交差点、右へ行くと階段、左へ行くと外、真っすぐ行くと転移の魔法円がっと。まずは真っすぐ。ここの左右の部屋予定地は今はギルドの資材置き場になっているね。

そして魔法円のところはと見れば、天井からつり下げられるようにして巨大なクリスタルがある。水色の透きとおった大きな大きなクリスタル。何の意味もない単なる演出として飾ってあるだけで、意味があるのは床に描かれた魔法円だけ。これが夜明けの塔一層という名称で設定されている転移のための魔法円で、ここを指定すればどこからでもテレポーテーションで飛んでこれるようになっている。テレポートの手段は今はカリーナさんが持っているスクロール一つしかないので、他の手段は地下世界で見つけてもらうことになるね。ここ以外の魔法円も至る所にあるのでね、探してみてほしい。


次に階段側を一応確認。空き部屋はセルバ家で確保したので今は単なる空きスペース。これな、トイレと休憩所にしようかなと考えている。トーリさんとかが常駐するとなるとトイレがね、大問題になるので。

それから階段裏にある扉はっと。ここは話題が出たら開放されるのだけれど、今は関係者以外立入禁止という貼り紙がしてあって開けることもできない。開放されたらここで全高600キロメートルの空間が続いている本来の夜明けの塔の姿を見ることができるようになるよ。そして下は奈落、深淵へとつながるね。魔素がどっかーんとあふれているので観光名所化は難しいだろうけれど、命知らずがいつかこの扉を開けるでしょう。


最後に外へも出てみますよ。うーん、今日の天気はいまいち。青空だった地上とは連動していない完全ランダムなのでね、ここでは雲が多めで青色が少なめ。時折その中を鳥のようなそうでもないような形のものが飛んでいくのが見えたりする。ここの空にもいろいろな魔物やら動物やらいるのでね。面白いからっていう理由だけで配置したプテラノドンとかのね、恐竜もいるのでね。魔物ではないよ、どちらかというと動物側だよ。プテラノドンがいるんだから当然それ以外のあれとかそれとかもいるんだぜ、楽しいねえ。

さてさて広場の魔物は、おー、おー? やっべーな。真正面で青黒い目と合っている。ぶしゅっという音とともに牙の隙間から目と同じような色をした煙が吹き出している。わたしは何ともないけれど、ヴァイオラも何ともないけれど、ニクスちゃんがさすがに嫌そうにわたしの後ろでくるくるしている。やっべーのがいるよ? 大丈夫? って言ってもここまでは着いてきたけれど、すごい嫌そう。

うん、ドラコリッチ、やっべーわね。普通のドラコリッチだったらここまでではないのだろうけれど、さすがにわたしたちがもっともっと積んじゃえっていって遊び半分に積み上げた設定の数々がとても悪さをしている。これと戦う人たち、頑張れ。


『やっべーですね。やり過ぎたような気が今更ではありますがしてきています。その軍ですが、最初に選んだのはミノタウロスでした。スライドによる迷宮の変化はうまくいきました。分断も成功しましたし、一人を取り残しての追いかけっこも成功したのですが、やはり軍は強いですね。物理対物理なのですから多少は押す場面も作れるのではと考えていたのですが』


押し切られたか。どれ、見所をショートで見せておくれ。ふんむ、ああ、スライドさせる仕組みはいいね、これは分かりやすい。その先を常に考えていないと接続先がおかしくなることはあるかもしれないけれど、分かりやすさってことではこれだな。

で、ミノ君たちは、うーん、つよ、い、よね? 弱くはないはず。これはあれだ、マリウスさんて言ったっけ、この総指揮官の人、この人もやべーわね。パワータイプのバトルマスター感がすごい。しかもこの人、単独の戦闘能力はもちろんとして指揮能力もかなり高いんじゃないの。スキルにそんなものないのに、この人がいるからって周りの人たちの能力が上昇しているように感じる。分断された部隊の隊長さんとかも普通にステータス以上になっているような。


『こちらが考えている以上にステータスは万能ではないのかもしれません。見えない部分の効果というものが発揮されているのでしょう。これも考えてみれば当然のことでした。マスターもおっしゃっていましたが、何もないからといって何もできないわけではないということです。専門家には劣るとしても似たようなことはできるということですね』


そういうことよね。わたしたちは世間を知らない、多くの人を知らなかった。やっぱりサンプルは多い方がいい。


『アニメイテッドエリアなど、もっと簡単でしたよ。ミノタウロスクリアでソードとシールドが消えたのですが、頭上を飛び交うその2つがなければ後はどうとでも、ということで力押しで突破してしまいました』


まじかい、どれ。え、え、えー? 足が止まらないんですが? あ、あ、あ、これはいかんですよ、簡単すぎる。押して押して押して転がして、たたいてたたいて殴って終わる。ひえー、次はミミックよね? どうなんだこれは。さすがにもう少し苦戦するパターンが見たいですよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
王都学園編なのにずっと学園置いてダンジョンの話。。。。。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ