108:
名付けとNPCの話はこれくらいでいいのかな。あー、ほかに何があったっけ、なんだ、名付け終わったでしょ-、NPC終わったでしょー。あとは-、スケジュールと照らし合わせて今後のことを決めていかないとでしょー、ほかにはー。
『その前に報告があります。たった今、冒険者たちがハーピーのエリアに向かうために立ち上がりました』
まじか。早いな。1日に2つ終わらせるつもりなのかしら。んー、休憩時間が最低でも8時間必要なことを考えると、2日で3つ攻略する計画かな?
『おそらくそうなりますね。今夜ハーピーを攻略してその後半日を休憩に当て、次がアニメイテッド・オブジェクトのエリアですから、午後はそこを突破する。明日はそこまでで終了とみてよいでしょう。残りは4エリア。これを2日で強引に突破するのか、それとも3日かけることになるのか。第2ブロックは第1ブロックよりも難易度が上昇する設定ですが、どうなるでしょう』
読めないわね。あと4日かかるか5日かかるか、いずれにせよそれで10階に到達してしまう計算よね。あー、急いだ方がいい気がしてきた。ルーナはもう大丈夫なのよね?
『はい、いつでもいけます。冒険者がデーモンに挑む前には配置しておきましょう』
ええっと、順番としてはそこでルーナからいろいろ聞くでしょ。それでたぶんダンジョンを上まで戻ることになるわよね。ええーっと、攻略が必要なのは1階と4階だったよね。うーん、この1階の時には合流しておきたいわね。あー、その前にヴァイオラを叔母様に紹介しておかないと。そうすると、ええー、どうすればいいんだ。
『まずは学園の予定を確認しましょう。明日から授業が始まりますよ』
そうね、学園の予定よね。明日から授業が始まって、授業内容次第だなあ。んんん、まだ日数はあるからひととおりは受けられるわよね、たぶん。在校生との交流みたいなイベントだとか特別なことは何もない、はず。それから座学の方は普通かな、あれだ、実技系がちょっと内容が読めないね。芸術系だと体験みたいなことをする授業もいくつかあって、と。お休みの日がここに挟まるでしょ、それで。うーん、授業が一周した辺りで離脱する理由が何かほしいな。病弱設定も作っていないし、病気とかケガはお見舞いがーとかになりかねないからだめか。最低でもダンジョンですごすのに3日は欲しいから、そうすると休む期間が1週間くらいはあった方がいいのか。うがー、理由が! そんな期間お休みできるような理由が思いつかない!
『このタイミングで行方不明になるわけにもいきませんからね。やはり相応の理由が欲しいところです。マスターには申し訳ありませんが、いっそ誰かを使って暴力沙汰を起こしてもらいましょうか』
怖い思いをしたから少しお休みします、か。確かにそれは誰かに責任を押しつけられる言い訳としては簡単でいいんだけどさー、誰かってのが何一つ思いつかないのよね。そんな都合のいい人いる? わたし相手に暴力沙汰を起こすとか将来どころか今すぐ絶望がやってくるレベルで大問題になるわよ。あの暴力が好きそうな先生とか?
『教師は難しいでしょう。いくら暴力が好きだといっても生徒に振るうようなことはないでしょうから。その場合には生徒から適当なところを見繕うことになりますが、確かに絶望が大喜びでやってくる状況にはなりますね』
なりますよ。これは難しいね。最悪の場合は家で緊急事態が起きているっていう形を装って、ヴァイオラに迎えに来てもらうしかないんじゃないかな。ただなー、これは説明ができないんだよね。緊急事態って何だよ問題なのよ。今はまだ話せないことしかないものだから、どうにも説得できるような内容にできない。言えませんで押し切るしかなくなるのだけれど。後のことは知らぬ存ぜぬ、必要だったのはわたしが直接返事をする、サインをするだけだからとかなんとかかんとか、そんな話で納得してくれるかな。
『そうですね。考えたところで状況任せなところもありますから。ダンジョンでマスターの判断が必要な案件が浮上してしまいやむを得ずという形を用意しておきましょう』
ダンジョン関係はまだ言えないことだからそれはそれで難しいのよね。うん、でももうそれしかない気がしてきた。こんないい加減な理由で納得してもらえるかどうかは不安なところだけれど、よろしくね。それっぽい書類とかヴァイオラに持ってきてもらえばいいや。これでスケジュール確認もいいことにしよう。これ以上は考えても仕方がないどうしようもない。うん。
さ、それじゃ最後の問題にいくよ。先にやっておくべきだった、途中で思い出したけれどスケジュールの方に意識がいってしまった問題よ。あのね、ユーナ、ゆーなゆーな、まあほかのみんなにも考えてほしいことなのだけれど、みんな、自分の体はどうする? っていう問題よ。
ユーナはさ、今は人形の体で家にいるじゃない。それでね、その体を普通の人の体、もう少し大きい体を用意して、それでもっと行動の自由度を高くして、それでそれで家からも出られるようにしてね、お母様の手伝いをね、してほしいと思っている。どう?
『歓迎、歓迎です。今の体はやはり小さいです』
うんうん。それじゃ体を、どれくらいにしよう。わたしよりは小さく、ええっと、5歳から8歳くらいの幅で考えようか。ちょっとさ、好みのところを見つけてみてよ。それでね、家にはあれよ、秘書見習いみたいな形でいるようにすればいいよ。あと、家のダンジョンをどうするかも考えてみて。ユーナの管理から外して、別のダンジョンコアを使おうかと思ってね。11でいいかな?
『11はもったいないです。番号は必要ありません。あの、5号のテストでありましたよね、インスタントダンジョンの仕組み。あれで十分なのではないかと』
そっか、インスタントか。そうね、家は本当に管理だけでいいのだものね。よし、それじゃあこれでいいかな。「*ダンジョンコア/18」。もうこれも17個も作って壊したんだよなあ、感慨深いわ。さ、それじゃあこれをユーナに預けるから、適当なところに設置しておいてもらえる?
『わかりました。では家の管理業務をこれに委譲しておきます。イレーネ様にお伝えしても?』
おおん? わたしがやるよ?
『いまいらっしゃいますが』
おおん? お母様が夜更かし? 珍しいんじゃない?
『明日は農場の視察がいくつも入っていますから、その確認などですね』
はー、なるほど。メッセージ作るから渡してもらえる? それで自己紹介ついでにどうするこうするも伝えてよ。えー、お疲れさまです、1号ちゃんの名前がユーナに決まりました、と。ユナでもユーナでも好きに呼んでください、と。成長して体が大きくなります、5歳から8歳の間で考えています、ユーナと一緒に決めてください、と。あとなんだ。2号ちゃんがデージー、3号ちゃんがヴェネレ、4号ちゃんがヘルミーナにそれぞれ決まりました。デージーのところにヴァイオラというひとが、ヴェネレのところにルーナというひとが、それぞれ就職します、また改めて紹介しますね、と。こんな感じでいいかな。はい、お願い。
『渡します‥‥少々お待ちください‥‥‥‥‥‥お待たせしました。とても喜んでもらえました。体は6歳か7歳程度にします。それでさっそく明日から一緒にということになりました』
はやっくない? え、はやっくない? お母様‥‥前々から怪しんでいましたが、やはりユーナはわたしの妹ポジションなのでは‥‥加減を‥‥加減をお願いします‥‥あくまでも秘書見習いで、秘書見習いでお願いします。
ふう、ま、まあいいでしょう。とにかくこれでユーナの体は解決ね。んっと、11がこれで余ったんだよね。5と6はもう準備に入っているし、7から9までは予定が決まっているから、10と11が浮いている、と。何か重要なところに使いたいわね。14から20までもキープが決まっているから、次に本格的なダンジョンを作るとしても使う番号はそれ以降になるわね。
さて、それで、デージーはどうする?
『私は現状維持でお願いします。今の状態で不満もありませんし』
最初からそうだけど、デージーの鉢植え、気に入っているわね? いいでしょう。
じゃあ次はヴェネレね、どう?
『私も現状維持ですね。ヒト相手はルーナが対応することになっていますし、特に体が必要な状況でもありませんから。ただ、そうですね、それでも地下世界がこれから動き出しますから、その情報集積用として機能の単純な仕組みは欲しいとは考えていました。ですので、私にも*シリーズを1つお願いします』
おっけー。それじゃ「*ダンジョンコア/19」をヴェネレに預けよう。機能だとかは適当にいじっちゃっていいから、ヴェネレとルーナでいいように使ってね。
あとはヘルミーナは、今はだめか、だめだね。
『はい、今は必要な時ではありません。ここを引き払うときに欲しいです』
そうね。あ、そうか、一緒に帰るができるわけだ。
『そうですそうです。解除して外から堂々と迎えに来ましたができます』
『それは、ずるくないですか』
ずるいか? かっこ笑いを付けちゃうぞ。なーに、ソラちゃんも体が欲しいの?
『いえ、そもそも私は他のコアたちとも違う、とても特別感のあるポジションですから。とはいえ。体を作ることを検討しておくというのも‥‥そうですね。使うかどうかはともかくとして用意しておくことは悪いことではありません。使いどころなどなくてもよいのですよ。そもそも私に使えるのかということの研究として用意おくことに意味があるといいますか、いつでも使えるという安心感を得られるといいますか、』
語るじゃん。いいよいいよ、任せる。もしかしたらわたしの保護者枠が急に必要になるようなこともないとはいえないしね。見た目とかは全部任せるから用意しておくといいよ。ただーし、大人っぽい感じでお願いね。
『大人っぽくですか』
これ以上子供枠を増やしてどうするの。大人っぽくお願いしますよ。
さ、これで今考えておいた方がいいことはひととおり済んだかな。あれよね、冒険者さんたちはハーピーを攻略中よね。見てもいいかな?
『もういい時間ですよ。いくら寝なくても問題のない体とはいえ、習慣として寝ておくことが必要です。攻略は録画していますからまたダイジェストで確認しましょう』
そっかー、しょうがないな。ん、本当にもういい時間だわね。あー、ユーナ、お母様にもおやすみなさいをお願い。さてとわたしも寝るとしましょうか。窓際に場所を移したベッドへ行って、さすがにもうお日様の香りはしないけれどね、お布団に潜り込んで。今日も充実した良い日でした。おやすみなさい、また明日。




