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廃ダンジョン・トレッキング

廃ダンジョン・トレッキング

作者: 花黒子


 冒険者の中でも特殊な趣味を持っていることは自覚している。

 ゴミ拾いとか、無意味だとか言われるが、これが最も安全で、最も稼げるのだから辞められない。

 もちろん、何も拾ってこられない日は多いが、生活費を稼ぐだけなら、この仕事だけで十分だろう。


 俺の職業は冒険者で間違いない。ただ、人類未踏の地への旅や、魔物が大発生した森、ボスが何十年も倒せないダンジョンに行くことはない。


 狙いはただ一つ。


 廃ダンジョンだ。

 つまりボスは消えて、抜け殻になり、物資が取りつくされたダンジョンに潜ることにしている。


 古い地図を調べて、地図から消えたダンジョンを調べ、中に入る。

 もちろん宝箱は空になっているし、物資はない。ただ、モンスターだっていない。魅力と言えるかわからないが、岩の洞窟や明りの消えた廃墟といった趣があり、トレッキングするにはもってこいだ。


 装備は登山用の疲れにくい靴と、トレッキングポールと呼ばれる杖。それから登山用のリュック。通常のトレッキングは風景を楽しむこともあるだろうが、廃ダンジョントレッキングは、罠の跡や朽ちていくダンジョンを観察するのを楽しめる。


 ダンジョンマスターが作り、多くの冒険者が突破した罠には、しっかりと跡が残っている。

 例えば、落とし穴の底にある杭などは折られ、完全に丸い石と化しているものもある。かつては数々の冒険者をケガさせたであろう落とし穴だが、今はちょっとした、石が並んだ窪み程度だ。


 金属探知機で探ると、古い銀貨なんかが見つかるから、念入りに探す。

 

「今日の報酬は銀貨3枚か」


 村の宿に泊まるには十分だ。


 他にも枯れて燃えた森の跡地なんかでは、乾燥した枝がたくさん見つかる。持ち帰れば、ちゃんと燃料として売れるだろう。

 また、モンスターの遺体が腐り、骨が地面に埋まっている場合がある。

 冒険者からすれば、ゴミそのものだが、学者からすれば、重要な資料となる。珍しいモンスターの骨なら、少額だが引き取ってくれる。学者との繋がりは大事だ。


 ダンジョンの奥に進むと、儀式跡があったりすることもある。

 死霊術師が、モンスターの骨を操る練習をしていた跡だろう。ダンジョンは、ボスを倒した後でも、まだまだ利用価値はある。知っている者からすれば、当たり前だが、魔物と戦うことが本業だと思っている冒険者たちには見えていないのかもしれない。


 ズズズ……。


 そんなことを考えていたら、壁の中からドラウグルという死者のモンスターが出てきてしまった。骨が剥き出しなので、杖で関節を叩けば、あっさりと膝が折れて倒れてしまう。

 頭蓋骨を叩き潰して、討伐は完了。

 この方法で、自分は冒険者の中堅くらいのレベルにまでなってしまっている。


 もちろん、自ら進んでモンスターたちと戦ってみたいとは思わない。緊急事態が起こった時に、回避できる程度の実力があればいい。一応リュックには、煙玉や臭い袋など、逃亡用セットも入れてある。

 

 ドラウグルの身ぐるみを剥ぐと、金貨が出てきた。黄泉の国への駄賃だろう。黄泉の国へは行かず、戻ってきてしまったので、ありがたく受け取っておく。


 さらに奥へ進むとボスと戦うボス部屋に到着する。もちろんすでにボスは完全に討伐されていて、影すら現れることはないが、宝箱付近に罠が設置されていて、起動していないことがある。


 丹念に調べると、踏むと矢が飛んできたり、毒ガスが噴出してくることがある。

 自分の最後の狙いは、この矢と毒ガスの回収だ。古くても効果のある毒は、薬屋に持って行くと売れるし、矢もほとんど無料のような価格で取引されるが、時々、何か魔法が付与されている矢もある。また矢を射る装置も取り外して武具屋に持って行くと、珍しいと引き取ってくれる時があるのだ。


「今日は大量だな」


 何もないはずの廃ダンジョンには、再利用できるものが数多い。

 あまり自分のような冒険者が増えると困るので、おすすめは出来ないが……。


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― 新着の感想 ―
[一言] これ、1話読み切り形式で連載として読みたい。 気が向いて最後から読んでも途中から読んでも楽しめる感じで、好きな話を読み返したりできると嬉しい
[良い点] こういう新たな視点いいですね。 宝探しみたいで面白そう
[一言] ゆる〇ャンみたいなノリで、いいなと思いました。 そうか……ダンジョンものでこういうのもアリなのか……
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