第36話 なんか真剣って感じー。生きててつらそー
「いやぁ、蓮くんが代役を引き受けてくれたおかげでお酒がすすむすすむ」
矢車さんが高そうなウイスキーを片手に書類仕事をしている。
「いつか、お酒を重要な書類にこぼせばいいのに」
「私がそんなヘマするわけないだろう。・・・葵君、これで最後かい?」
「はい」
どうして癖のある知り合いは無駄に有能なのだろうか。
「もう仕事終わりですか」
「ああ今のところはね。すべての人間が私や蓮くんみたいに有能じゃないから、いつ仕事が入るか分からないのが残念なところだ」
「実はお酒を抜きたくないだけですよね」
「それが9割9分占めているが、しっかりした理由もちゃんとある。安心したまえ」
「それはないのと同じでは?」
「ほとんどなくてもあるものはあるんだよ」
「そういうことにしておきましょう」
キリがなさそうなので、引いてやることにした。
「今日で十分なのかい?」
「相手がどこまで本気かは知りませんが、十分でしょう」
「いやぁ、心強いなー蓮くんは」
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少し時間が経ち、遠藤君の会議時間がやってきた。
「ていうか、私たちも見ていいの?」
「ああ、構わないさ。一人で見るのもつまらないからな。葵君は観てくれないし・・・」
近くにいる葵さんは気にすることなく、料理をしている。なぜ理事長室にキッチンがあるのだろうか。
「ほら、理事長もこう言っていることだし遠慮なく見ちゃおうよ」
今回、梶井君、香川さん、私、幽栖の4人で遠藤君の会議の風景を見ることになった。赤坂君と白石さんは寮でやりたいことがあるらしくここに来ていない。・・・絶対に外に出たくなかっただけだと思う。
『僕は腹の探り合いは嫌いだからな。直接言うぞ』
適当に挨拶を済ませた後、初っ端から本題に入ってる。さすが遠藤君だ。
『分かった』
『日時は8月20日15時から、お前らが使っている体育館で矢車理事長との口論会で良かったな?』
「体育館って2つあるの?」
この学校に転校して約4カ月、まだまだ知らないことだらけだ。
「うん、基本的に普通科用と天才クラス用の2つ用意されてるよ。すべての施設が」
同じ校舎にある必要はないのではないだろうか、と思ったが声には出さずに胸に秘めておく。
『そうだ』
雑談をしていると話は次々と進んでいく。
『よし・・・じゃあ、君たちの主張を教えてくれ』
『では私から・・・』
生徒会長っぽい人がが変更したい校則と理由について述べ始める
『・・・ということで、これらの校則は不要であると考えます』
「くそ真面目でつまんない。やっぱ普通科だねー」
「いや、面白いとかないでしょ」
「なんか真剣って感じー。生きててつらそー」
香川さんと幽栖がぼろくそに言っている。幽栖がそれを言っていいの・・・?
「仕方がないさ。君たちが異常なんだ。これが普通だよ」
理事長が一応普通科の生徒をかばうが、理事長を見るとお酒を夢中で飲んでいる。・・・面白くないんですね・・・。
『まずバイト禁止の校則だが、僕は本来ならばむしろ推奨すべきだと思っている』
『ならいいではないか』
『だが、この街においてで言えば危険が過ぎる』
『どういうことだ?』
「この学校バイト禁止なんだ・・・知らなかった」
「君たちはバイトなどせずとも本職で大儲けしているだろう?」
「あっ・・・」
そうだった。バイトとかそういうレベルじゃなかった。
『その分、各国のスパイが大量に街にいる』
「この街ヤバすぎない?」
「ちなみに私たちのクラスは蓮が全員護ってくれてるよ」
遠藤くん・・・彼はやっぱり人じゃないと思う。
『僕が確認しているだけでも、軽く3分の1は超えている。そんな街でバイトなんてしてみろ。即刻利用されて馬鹿を見るのが目に見えている』
「理事長、これは流石に居すぎでは?」
「構わん。たいした情報は持って帰らせていないからな」
「いや、暗殺とか事件とか起こされそうで怖いんですけど」
「ハハハ、君たちがそれ言うか。日常的に爆発を起こして、下手なテロ組織より恐ろしいじゃないか」
「ぐぅ」
ぐうの音しかでない。
「大丈夫、蓮が全部何とかしてくれているから・・・」
「ほんと、彼は優秀だな」
理事長が心酔したような口調で言った。
『で次に、特別な事情がある場合の下校時間の変更だが、これも無理だ』
『大会でも無理なのか?』
『無理だ。8時以降の学校周辺は危険だ』
「大会でもダメなんだ」
「一般学生にとっては一大イベントでも運営側からするとただの集金イベントだからな。そんなことごときに例外は認められないな」
「無茶苦茶言うじゃんこの人・・・」
「実際、学生の真剣な勝負って儲かるんですか」
珍しく梶井君が口を開く。
「んー、金回り的には微妙だな。残念ながら利益を出すよりも青春に力を入れる風潮があるせいで、かなりの金額を損しがちだ」
残念ながらとか言わないでほしい。仮にも理事長だよね・・・?
『別に爆弾が降ってきてもいいというなら、とめはしないが・・・死ぬのは嫌だろ?』
『どうして爆弾が降ってくるんだ・・・』
「どうして爆弾が降ってくるんだろうね」
私は明確に香川さんに向けて話す。
「爆弾は基本降ってこないよ!ニトログリセリンの雨が降らしたり、自由落下花火が落としたりはしたけど」
「ほぼ一緒じゃん!」
しかも基本ということは、たまには・・・これ以上は考えないでおこう。
「まぁ、そう香川君を攻めるな。別にいろいろなものが落ちてくるのはよくあることだ。この前など、AEDが落ちていてびっくりしたぞ」
何があればAEDを落とすという発想に至るのであろうか。私には見当もつかない。
『最後に、体操服がダサすぎるので変えてほしいとのことだが・・・諦めろ』
「あ、これ私も思っていた。同じ生徒・・・人間として恥ずかしいから早く変えてほしい」
「たまに奏花ちゃんもすごく言うよね・・・」
私たちの体操服は・・・体操服は・・・体操服など着たことがないので分からないが、普通科の体操服はとにかくダサい。胸と背中つまり背後と正面どちらにも大きく名前が書かれている。小学生の運動会のさらにダサい版を考えてもらうといいかもしれない。
『これに関しては大丈夫だろう!?誰も困らない。むしろ私たちがかわいそうだ』
『・・・服だけを溶かす溶解液って知っているか?』
画面の中で遠藤君がいつになく真剣なトーンで話し始める
『どこのド変態が作ったのかは知らないが、飲んでもかけても無害なのに服だけを溶かす液体を作ったバカがいたんだよ』
「私達じゃ、ないよね・・・?」
「んー?百合ならたぶん製法は知っていると思うけど、なんかもともと知っている感じだったよ。それに私、エロにあまり興味ないの知っているでしょ?」
そう、香川さんは梶井君が関わらなければエロとかエッチな物質は作らない。赤坂君も同様だ。猫耳カチューシャにゃんは許さないが、ぎりぎり変態道具ではない。
『関係あるのか・・・それが・・・』
『その液体が非常に簡単な素材でできてしまうんだ』
『ああ・・・』
『そしてその対策として、その液体で溶けない服を開発した』
「そんなに難しいモノなんですか?」
「原理は公開していないが、なぜか服になった瞬間溶けるようになるんだ。これが本当の技術の無駄遣いだと思うよ」
原理を公開していないということは理事長は原理を知ってはいるということなのだろうか
『だが・・・その服を製造してくれている工場が少し訳ありでな』
『それは・・・』
『歪んだ性的嗜好を持つド変態なんだ』
「「「「「・・・」」」」」
この場も含めて全員が沈黙してしまった。
「あ、あの、理事長。変えることは・・・」
「出来ん、原理を安心して教えれるのはあいつと蓮君くらいなんだ」
『い、一応聞いておくぞ。その嗜好とは・・・』
『学生の恥ずかしいくらいダサい服装・・・らしい』
「本当に逮捕しなくて大丈夫?」
幽栖ですら不安になっている。でもそんなこと言っちゃだめだと思うよ、コンプライアンス的に。
「はぁぁぁぁ。あいつは仕事は優秀だし信頼はできるんだが、ちょっと歪みすぎだ」
理事長が聞いたことがないくらい大きい溜息を吐きながらいう
「信頼・・・本当にできるの・・・?」
「恥ずかしいと思っていても、それに慣れてしまったとしても、ダサい服を着ている高校生に興奮できるらしい。しかも男女問わずだ」
最後の一文に、梶井君の表情が悪くなる。・・・男性にも興奮できる・・・の?
『これは理事長ですら変えることができない残念校則だ。諦めろ』
「ちなみに、私達って何であの体操服着なくても大丈夫なの?」
「君たちにあの溶解液をしかける馬鹿はいないからだ。君たちの居場所は迂闊に踏み入れるとむしろ侵入者側の方がかわいそうな目に合う」
そういえば、そうだった。
今回は音無視点でお送りしました。ところで性的嗜好と性癖、どちらが分かりやすいですか?
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