第27話 勇者の前の番の人ってこんな気持ちだったんだ
前半シリアス注意報が出ております。ご注意ください
「れんれん、私はその薬が飲みたい」
「本当にいいのか?2週間後には絶対に死ぬんだぞ」
「うん。れんれんの話を聞いて、妙に納得したんだ」
「どういうこと?」
香川が口をはさむ。
「私、本当に病気を治したいのかなって。だんだん弱って、やりたいことも出来ずに死んでいくのが嫌だから、病気が治ってほしいと思っていたんじゃないかなって」
「それでも死ぬのは怖くないの?」
「もちろん怖いよ?でもそれと同じくらい、未来も怖い。生きてればいいこともあるだろうけど、それはつまり悪いこともあるんだよ?」
「でも・・・」
「香川さん、本人がいいって言っているならそうするべきだと思う」
音無が幽栖側につくとは思わなかった。
「本当に気の迷いじゃないの?命はやり直せないんだよ?」
繰り返し香川は尋ねる。
「気の迷いじゃないよ、絶対に。私は生きてしたいこともそんなにない。2週間もあればやり残したことは全部できる。生きていたらやりたいことが見つかるかもしれないけど、やり切れずに死ぬ可能性もあるって考えたら・・・私の余命は2週間でいい」
「幽栖がそういうなら・・・私も折れる」
「この薬を飲んでから効くのに2時間、効果時間は聞いてから2週間ぴったり、つまり336時間00分00秒だ。飲んだ時間を記録しておくことをお勧めする」
そう言って幽栖に薬を渡す。
「じゃあ5時になったら飲むよ。記録お願いできる?」
「私がやるよ」
立候補したのは一番反対していた香川だ。意外かもしれないが、香川は受け入れると決めれば最後まで見送るタイプだからな。僕からすると意外でも何でもない。
「じゃあ、飲むね。・・・ん、飲み終わった」
「えーっと17時00分13から18秒だね」
「効くのに2時間かかるから、まだ外には出るなよ」
「分かった」
「幽栖ちゃんの余命は2週間しかないし、2時間後から出発だよ!今のうちに仮眠をとっておこう」
香川の提案によって仮眠を取ることになった。
「それなら2階の寝室を使うといいよ。確か6人くらい寝れる大きさはあった気がする」
「幽栖様、あさみん様方、寝室の準備はできております。部屋の関係上、一部屋3人となります。申し訳ありませんがご了承ください」
メイドがタイミングよく入ってくる。
「ありがとうございます。部屋割りどうする?」
「女子ペア、男子ペアでいいんじゃないか」
「そうだね、他にある?」
特に意見もなかったので、女子ペア、男子ペアに分かれることになった。
2時間後、みんなぴったりに起きた。2週間しか猶予がないから、1分1秒も無駄にできない意識が皆にもあるんだろう。
「じゃあ、出発!」
「いってらっしゃいませ」
メイドは家で待機しておくらしい。本当にいいのか?
「で、どこ行く?」
「決めてなかったの!?」
「あったりまえじゃん。私の旅行はノープラン、思い付きで気ままに旅行がコンセプトだからね」
そんなものをコンセプトにしないでほしい。
「じゃあ私、行きたいところがあるんだ」
「そこにしよう!」
一応聞けよ。
「ここって土地的に霊力が強いところだから、平安時代に造られた本物の霊剣がいまだに残っているらしいんだよね」
「本物の霊剣なんてあるの?」
「ほぼ偽物だけど一部本物があったらしいよ」
「へぇそうなんだ」
「で、本物も見つかった物全部保管されているんだけど、3本だけまだ管理されていないんだよね」
「それはどうして?」
「2本はそもそも抜くことができないみたい。重さも異常なほど重いみたいで移動させることができないらしいよ」
「もう1本は?」
「さあ?もう1本だけなぜか何の情報もないんだよね」
「すごく怪しいんだけど」
そんな話をしているうちに目的地に着いたみたいだ。
「この洞窟に入ってしばらくしたところに1本目の霊剣があるよ」
「バリケードみたいなので閉まっているけど」
「ここに1000円入れると・・・ほら開くよ」
聞くと入場に1000円、出るのに1000円、一人につき計2000円必要らしい。高いな。
「これこれ、感じ出てるでしょ」
地面に剣が刺さっている。RPGの勇者の剣みたいだ。
「照明でムードを出しているだけじゃ・・・」
紫色で薄暗い照明なのは・・・まぁ雰囲気づくりだろうな。
「でも引っ張ってみてよ」
「ん・・・?ん!!!・・・抜けない」
「文字にすると少しエッチだね」
白石は何を言っているのだろうか。
「嘘ー。そんなに固いわけ・・・ほら、抜けた」
香川があっさり抜いた。音無、演技したのか?
「遠藤君、そんな目で見ないでよ。演技じゃないんだから。香川さん、一回戻して!」
「う、うん」
珍しく香川が気圧されている。
「遠藤君引いてみてよ」
「いいぞ」
剣を引く。うーん、多少堅かったが、別に抜けない程度じゃないな。
「えぇ・・・」
「俺にもやらせてくれ」
梶井にそう言われたので、地面に刺す。
「堅い!・・・こんなのを抜いていたのか!?」
「梶井君・・・馬鹿にしてないよね?実は抜けますオチとかないよね?」
「抜けない。普通に無理だ」
その後順番に試したところ、抜けたのは僕、香川、幽栖の3人。残りは演技でもなく本当に抜けなさそうな感じだった。
「勇者の前の番の人ってこんな気持ちだったんだって初めて知ったよ」
「どういう気持ちなんだ」
「悔しいというより、嘘つきじゃないって弁解したくなる気持ち」
勇者の前は大抵、力自慢の巨漢だから普通に悔しいだと思うけどな。
本物の霊剣って存在するんですか!?
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