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4話 何も起きない肝試し

月宮 仁 (つきみやじん)主人公

黒鐘詩音 (くろがねしおん)クラスメイト

垓斗 (がくと)クラス委員長

森澤 (もりさわ)垓斗の友達



肝試しに来た俺は、誰と一緒にこの墓地を回るかを決めるため、クジを引いた。


クジの数は6枚、それぞれのクジには1か2か3の数字が書かれている。同じ数字は2枚ずつ入っており、同じ数字を引いた人同士が肝試しを一緒に回るペアとなる。


俺の引いた数字は2。他の奴らは何を引いたんだ?


「私1ばーん、千奈(ちな)はーー?」


(はる)1かーー、私3。はぁもう一緒じゃないの最悪すぎ。3引いたの誰ー?」


陽キャ女子AB改めて遥と千奈という人らは別々の番号を引いたらしい。ドンマイ!とりあえずアイツらとは別なのか確定した。さ、ほかの人たちは……


「俺、3だけど……」


森澤は申し訳なさそうに告白した。


「森澤かー、まぁしょうがない、か」


森澤は3番。あとは委員長と黒鐘だ。さあ2番を引いたのはどっちだ。


「……あはは、私2番だ、奇遇だねー?」


マジかよ、いやまぁ黒鐘とペアになるのが1番マシなんだけど、まさか本当になるとは……


「私は垓斗とか、んでー?回る順番はどうするのー?」


「それはジャンケンでいいんじゃないか」


垓斗がそう提案し、俺たちはそれぞれのペアから代表を1人決め、ジャンケンをした。


結果、俺と黒鐘は最後に回ることになった。


ま、順番なんて別にどうでもいいけど。どの順番だってどうせ何も起こらないんだから……


「さーてとそれじゃ行ってきますかー」


「それじゃまた後でねー」


全く恐れることなく、2人は墓地へと入っていった。


……、時刻は8時か、はぁ、早く帰りてぇ。てかそもそもなんで肝試ししようってなったんだよ。季節も違うし誰も怖がってないし全くもってやる意味ない。


つっても行くって決めたの俺だし……しゃーないけど。



肝試しが始まってからはや数十分経過した。


予想通り特に何も起きることなく最初のペアは帰ってきて、続けて次のペアも回り始めた。


「どうだったー?なんか起きた?」


黒鐘は帰ってきた2人に質問した。


叫び声とか聞こえなかったし、何も起きてないだろ。


「あぁ……驚くほどなーんにも起きなかった」


垓斗は元気なくなってるし。もしかして垓斗は幽霊とか信じているのか?


だったらなんも起きなければそうなるか。まぁうるさいヤツが静かになってよかった。


「……てかさ、詩音知ってる?千奈が森澤のこと気になってること」


おっと、こんなところで恋バナか?お墓の前でする話ではないぞ?


「え?そうなの?」


ちなみに黒鐘とこの陽キャ女子の関係は違うクラスだが仲良しみたいな感じだ。友達いるんかい。


「うん、最近言ってたんだけどねー以外だよねーまさかあの森澤のことが気になるなんて」


あの、か。その上から目線の言い方、やめた方がいいぞ。俺みたいなやつはそう言う言い方嫌いだから。


それに森澤はよくおちょくられてるけど、顔は結構イケメンだし本来の姿はモテる男子だと思う。ただ学校ではずーっとネタにされてるから、みんなからは「なんかなー」と思われてるけど、実際は良い奴なんだろう。


「へー、千奈ちゃん森澤君のこと気になってるんだー、確かに意外だね、でも森澤、案外かっこいいとこあるから、気になっちゃうのは分かるかも」


……黒鐘は気付いているのか。


「そう?かっこいいところあったけー?」


「うん、この前だって、クラスメイトに宿題見せたり、一緒にノート運んでたりしてたからさ」


「ふーん、森澤そんなことしてたんだー、よく知ってるね?もしかして詩音も森澤のこと気になってる?」


「え?私は全然だよ?」


「ほんとかなー?じゃあ誰か好きな人、いるの?」


陽キャ女子は俺の方をチラッと見ながら言った。


なんだよ、まさか黒鐘が俺の好きだとでも思ってるのか?は、そんな訳ないだろ。


「うーん、それは内緒」


いや否定しろー。内緒ってなんだよその言い方だとまじで誤解されるぞ。


「内緒かー、じゃーしょうがないね」


陽キャ女子はニヤニヤしながら言った。


「ねぇ詩音、次私に幸せが来るのっていつ?」


「どうしたの急に?」


「いや、なんとなくだけど」


「あーそう?……遥ちゃんに次幸せが来るのは、20分後だね」


20分後、もうすぐじゃん、こんな墓地にいて一体どんな幸せが訪れるんだ。そういえば、俺に次幸せが訪れるのが3ヶ月って黒鐘言ってたけど、あれマジなのかな。


「まじー?もうすぐ来るじゃん」


「そうだねー、どんな幸せが来るのかはわかんないけど、幸せなことはいいことだから」


それからもたわいもない会話を続けた。


ちなみに20分後に来る幸せはただ家に帰れると言う事実に喜ぶというものだと後に分かる。



数分後。


「お、お帰りー、なんか起こったー?」


先程出発したペアが帰ってきた。まぁ何も起こってないんだろうな。


「ぜーんぜん、何も起こらなかったけど」


「やっぱ何も起こらないかー、どうする?もう帰る?」


え?帰るの?まぁそれはそれでいいけど、いやせっかくここまで来たのに帰るのはやっぱ、嫌でも回る必要なくなる────


「いやいやー回らせてよーもしかしたらなにか起きるかもしれないし」


「はは、冗談だよ、じゃ楽しんで〜」


まぁ行きますよね。はい。行くか……


俺と黒鐘はついに墓地へと足を踏み入れた。



……2年前と何も変わってないな。ただの普通の墓地。


街灯などなく、辺りは真っ暗で、頼りになる光は俺が持ってる懐中電灯だけだ。聞こえてくるのは風の音だけ。そして、まだ5月なために、この時間になると寒い。


上着してきたけど、もう少し厚着してくればよかったな……


雰囲気こそあるが、やはり何も起こらないのだろう。


歩き始めてから数分後、入口が見えなくなったところで、黒鐘俺の少し前を歩きながら言った。


「君、ほんとに誰とも関わらないね、まさかあんなに喋らないとは、びっくりしたよ」


「ああ、無駄な関わりは極力避けたいからな」


「さすがだね……それにしても何も起こらないねー」


「そりゃそうだろ、大体肝試しに来て何か起こる方が珍しいんじゃないか」


幽霊なんているわけないんだから、そもそも肝試しは怖いの苦手な人がいないと面白くないだろ。なーんで全員いける人にしたんだよ。


「まー何も起こらないことが1番いいのかもしれないけどねー」


……そうかもな。何も起きない、それが1番幸せなのかもしれない。


「ところでさー、もしかしてだけど、この前話してくれた、その、龍己さんのお墓って、この墓地?」


黒鐘の言葉に、俺は足を止めた。


確かに、よく考えれば、ここには龍己の墓がある、いつだか俺の母親が言っていた。


「あ、ああ、そういえばこの墓地だな」


「……どうする、ちょっと、寄ってみる?」


結局龍己が死んでから、葬式にも行ってないし墓参りにも行ってなかった、ならせっかくの機会だ、行くべきだろう。


「そうだな、行こう、俺の記憶が正しければ墓はあっちだったはず」


龍己の墓の場所は2ヶ月くらい前に、母親からもしもの時のために教えられていた。


薄れた記憶を辿りに、教えられた場所を探していると、そこには、龍己の名字、『痣木(あざき)』が彫られたお墓があった。


「これだ」


痣木なんて珍しい名字の墓はこれ以外にないだろう。


「あ、ほんとだ、お墓の横に痣木龍己って彫られてるね」


「あぁ」


龍己、ずっと謝りたかったんだ、俺のせいで、死ぬことになったこと……ごめんな。


俺は心の中で、話しかけるように話した。


……だが、もちろんの如く龍己の声は聞こえることは無かった。むしろその逆に……


「この花、誰が置いたんだろうねー?」


黒鐘は自由気ままに喋っていた。


黒鐘の言った通り、墓には花束が置かれていた。


親が墓参りにでも来たんだろうか。亡くなってからまだ2ヶ月しか経ってないのだ、頻繁に来ることもおかしくないだろう。


「…………さ、行こうぜ、墓参りもできたし」


「あ、うん」


俺は急ぐように元来た道に戻った、ずっとあの場にいたら、涙が流れると思ったからだ。そんな姿、黒鐘に見られるのは嫌だからな。



そろそろ半分くらいまで来ただろうか、相変わらず景色も雰囲気も何も変わらない、本当に、まぁ最初から期待なんてしてないが、何も起こらなかったな。


だが、龍己の墓に寄れたのはよかった。


「そういえばさ、1個君に伝えておきたいことがあるんだけどー」


「ん?どしたいきなり」


「この前君が言ってた、そのー、予知能力の時間が変わる力みたいな?それについてもしかしたら私の知り合いで知っている人いないかなーって思って聞いてみたんだけど」


は?いきなり何言ってんだ?俺の力がどうしたって?


俺は黒鐘がいきなり予想外な話をし始めたことに少し驚いた。


「1人、いたんだよね」


「え、それってつまり、俺の力について、その人は知ってるってことか?」


「そうだよ」


まさかまさか、そんな訳ないだろう。前にネットで調べた時も対して情報は出てこなかったのに、黒鐘の知り合いは力についてはご存知と?


「それ、本当か?適当に言ってるとかじゃないのか?」


「うーん、多分ほんとだよ。その人、私の知る限りだと超真面目な子だからね」


いつの間にか回っていた肝試しは、もう少しで入口に戻ってくるところまで来ていた。


「じゃあ、ぜひ聞きたいな、俺の力について知っていること」


俺の力について、知れるかもしれない、そんなこと、考えてもなかった。


てっきり俺は病気的な、どうしようもないことだと思っていたんだが、もしかしたら、それは勘違いなのかもしれない。


「それじゃ後でLINE言っておくね、その人は知り合いと言っても高校生だけど学校は違うから、もし話を聞くとするなら放課後になるけど……」


「なるほど、放課後は黒鐘は部活があって時間が無いと」


「そうなんだよねー、吹部部活終わるの19時過ぎだからね」


それじゃ放課後会いに行くのは厳しいな。


「だったら土曜か日曜とかか?」


「土曜も部活あるけど、午前中だけだから、午後から会うに行くことはできるかもね」


まぁ相手の都合も分からないから今決めることはできないし。


「とりあえず後で頼むよ」


黒鐘は「オッケー」と言いながらスキップしながら入口へ到着した。


結局、何も起こらず肝試しは終了した。実に面白くないものだった。


まぁ龍己の墓参りが出来たが唯一良かった事だな。


その後、俺達はもうとっくにバスの運行も終わっていたため、なんと歩いてそれぞれの家のまで帰った。



仁の家にて。


…………まさか黒鐘からあんなことが聞けるとはな。


もちろん俺の力の事についてだ。


黒鐘と関わり始めて、初めて関わって良かったと思ったな。


さてと、今日は疲れたし、さっさと寝よ。


俺は部屋の電気を消し、布団に潜り込んだ。


ここまで読んでくれ皆さん、ありがとうございました!次話は是非お願いします!

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