27話 星翔先輩が怖い
月宮 仁主人公
黒鐘 詩音クラスメイト
古枝 路未央吹奏楽の部員で捜査に協力している。
星翔流星容疑者の一人。悪ガキ。
吹奏楽部の副部長、白昼夢を誘拐した容疑者の一人、隅影誠に直接話を聞きに言った日から週を跨ぎ月曜日の放課後。
今日も綾東高校では全学年が文化祭準備に勤しんでいた。
そんな中、副部長誘拐事件を捜査している2人はと言うと。
捜査どころでは無かった。
「ここ!もっと丁寧に塗ってよ!」
クラスのリーダー的存在の女子が、焼きそば屋の看板を作っている男子達に向かって注意するように言った。
もちろんその中には、仁も含まれている。
「んな事言っても、これが限界だって」
そう言った男子が塗った箇所は、限界とは到底言えない、雑な塗り方をしている。
それを見て仁は、心の中で溜息をつく。
それが限界って……絶対適当に書いているだろ、線めっちゃ曲がってるし、地味に色塗れてない所もあるし、これだから適当な奴はダメなんだよ。
本当はすぐにでも捜査に行きたい仁だったが、同じグループの男子が真面目にやら無いため、いつまでも抜け出すことが出来ず、内心イラついていた。
「美子ちゃーん!私のとこはこんな感じでいいよね〜?」
そう自信ありげに言うのは、仁と同じく事件の捜査をしている黒鐘だ。
「詩音ちゃん……もっと綺麗に!」
男子達と同じように、黒鐘も注意される。
「えぇぇーー!これでもダメー!?美子ちゃん許してよー!」
黒鐘の悲痛な叫びに対して、美子は辛辣な答えを変えした。
どうやら黒鐘ですら許して貰えないらしい。はぁー、これは今日捜査できるか怪しいな……
そんなことを思いながらも、仁はペンキの着いた筆を画用紙に走らせた。
時間は経過し、17時前
段々と夕陽が落ち、教室の中はオレンジ色に染まってきた。
そんな中、やっと看板作りはキリのいいところまできた。
「まぁー初めはこんなもんかなー」
美子はずっと作業をしていた男子達と黒鐘を見ながら言う。
初めは……?まさかこんなに頑張って作った看板、試作品的な物なのか?まぁ確かに、完成した看板は決して目を惹くようなすごい物とは言えないが。
「それじゃみんなお疲れ様!今日もう時間だからまた明日も頑張ろう!」
看板を作っていた時とは違い、今は優しい口調で話す美子さんだか、また明日も、か。
役割ミスったー、楽そうだからこれにしたけど、全然抜け出す暇ないぞこれ。
そんな事を考えながら仁は帰り支度をする。
そこにそそくさと何やら機嫌が悪そうな黒鐘がやってきた。
「仁!全然抜け出す暇ないじゃん!」
黒鐘は仁の耳元で小声でそう言う。
耳元で話されると背中ゾワッとするからやめて欲しい。
いやそんなことより、黒鐘の言う通り。抜け出す暇なんて無かった。捜査をする時間なんて無かった。終わりだ。
「まさかあんな奴がいるとは思わなかったんだよ……てか俺はお前に言ったよな?手伝わなくていいから星翔先輩のとこ行けって」
仁はリュックを背負い、廊下に出ながらそう言うと、黒鐘は誤魔化すような口調で答える。
「嫌だってさー星翔先輩怖いしー仁がいないと無理〜」
なんだ急にそんないかにも演技っぽく甘える彼女は、そんなことして俺が許すとでも思っているのか?
…………ただ悪い気分では無いな。はは。
「さて、どうするかねーもう5時だし、星翔先輩帰ったんじゃないか」
てか俺も帰りたい。さすがに金曜日となると疲れも溜まっている。早く帰って寝たい……そして休日という名の自由に行きたい。
「いや、もしかしたら音楽室で自主練してるかもよ?」
ただ仁の願いは黒鐘の一言によって先送りになる。
「星翔先輩って性格は確かに悪いけど演奏の腕は確かで、たまに部活終わりの後も残って練習している時あるからいるかもしれない」
「なるほど……まぁ行くだけ行ってみるか」
そう仁が言うと、2人は音楽室へと向かった。
音楽室に向かっている途中、偶然にも、2人はある人物に出会った。
その人物とは、昨日操作に協力したいと言ってきた路未央という黒鐘と同じ吹奏楽の部員だ。
「お、偶然、もしかして例の捜査中?」
手を挙げながら近づいてくる路未央に対し、仁は露骨に嫌な顔をする。
うぁー、まためんどくさい奴きたー。
既に俺は路未央のことが嫌いだ。理由はなんか雰囲気がウザイという理不尽な理由だが。どうにもこいつを好きになれる気がしない。
だが使えるのは確かなんだよなー、吹奏楽だし、捜査には協力的だし、容疑者達の事を探らせることはできそうだ。
「あー路未央、うん、今から音楽室行くところ」
「ちょうど俺も行こうと思っていたんだ、一緒に行こうぜ?」
ホントかよそれ、まぁ仕方ない、面倒な奴に出会ってしまったが行くしかない。
音楽の授業でしか来ない音楽室の前に、仁は立っている。もう少し奥に行けばいつもの楽器倉庫がある。
「いるかわかんないけど、とりあえず行ってみよー」
そう言いながら、黒鐘は音楽室の扉開けた。
相変わらず広い音楽室。床も壁も木で出来ているため、どこか落ち着く雰囲気がある。
そんな中に、ぽつんと1人、椅子に座って楽器を持っている人物がいた。
その人物は仁達の入ってきたところを真顔で見た。
いた、あの人が星翔先輩か、イメージ通りだな。髪の毛しっかりセットしててどこか悪ガキっぽいオーラがある。それなのに真面目に自主練をしている……なんか不思議な感じだ。
「おー黒鐘と古枝か、どーした?自主練か?」
星翔は同じ吹奏楽部の後輩部員に向かって言う。
「星翔先輩お疲れ様です、自主練って訳でも無いんですが、少しお話したいことがありまして」
珍しく黒鐘が敬語で丁寧な言葉を使っている、そんな真面目な話し方もできたのか。
「話?なんだ?」
星翔先輩から俺達の距離は結構空いているため、少し大きな声で話さないといけない……という訳もない。
この部屋に入る前は、生徒の声が聞こえていたが、音楽室の防音により、外の音は聞こえず、部屋は静寂に包まれてある。そのためそんなに大きな声を出さなくても声は聞こえるが、それでも距離があるのは話しづらい。
「すみません、自分月宮と言います。えー、例の事件について調べている者です、そのことについて星翔先輩から話を聞きたくて……そちらに言ってもいいですか?」
俺はできるだけ相手を刺激しないように言葉を選ぶ。
相手は三年生の先輩をからかっていた人だ、俺は一年、絶対からかわれる……
「あいよ、そこら辺にある椅子持ってきて座りな」
星翔は獲物を見つけた肉食動物のような目をしながらそう言う。
三人はまるで草食動物かのような動きで椅子を持ってきて星翔の近くに座る。
金髪に近い髪色で、近くに行ってから結構筋肉があるということもわかった。
やっべーめっちゃ緊張してきた、殴られるんじゃないかって思うくらい威圧感が凄い。おい、こいつ犯人なんじゃねぇか?
「で、話したいことって何?てかあのこと部外者に行ったのかよ、言ったどっち」
そう言うと星翔先輩は黒鐘と路未央の事を睨むように見る。
それに対し、路未央は気まずそうに黒鐘の事をチラッと見る。
黒鐘は小さく微笑みながら冷や汗をかく。
「あ、わ、私が……」
「お前か、なんか納得、でも大丈夫なのか?夢パイセン殺されるじゃね?」
星翔先輩も誰しもが思う疑問を口出す。
「あー、はい、一応部外者に言ったのは仁だけで……多分、大丈夫だと、思うます?」
お前が聞くな。おいおい、まさか今になって不安になって来たんじゃないだろうな……
「ほんとに大丈夫かよ、夢パイセンが死んだらお前のこと一生恨むからな、んで、そろそろ本題入ろうか?」
サラッと脅すように星翔先輩は黒鐘に言う。それに対し黒鐘はビックと身体を震わせる。
さて、これから本題なのだか、まだ星翔先輩を疑っているということは言っていない。
うん、言えないわ。言ったら本当に殴られそうで。
だが、ここでビビっていても捜査は始まらない。
俺はビビりながらもその事を言い、2人目の容疑者の事情聴取を始めた。
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