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26話 俺は隅影に尋問する

月宮 つきみやじん主人公

黒鐘 詩音くろがねしおんクラスメイト

古枝 路未央ふるえだろみお吹奏楽の部員で捜査に協力している。

星翔流星ほしかげりゅうせい容疑者の一人。悪ガキ。

隅影 すみかげまこと 容疑者の一人。陰キャ男子


路未央との話も終わり、俺と黒鐘はついに、隅影に声をかける時が来た。


ぼーっと窓の外を眺めている隅影に、まず黒鐘が先に声をかける。


「隅影ー、今ちょっといい?」


そう黒鐘が優しい陽キャみたいな口調で言うと、隅影はパッとこちらに振り返る。その顔からは睨むように「なんだ?」と若干キレていることが伝わってくる。


「なに?」


隅影は黒鐘の事を見上げながら一言、イヤそーな口調で答える。


「あのー少し例の事件について話したいことがあってさ、まぁとりあえず紹介するね、こちら、A組の月宮仁、今は捜査の協力をしてもらってる」


「捜査の協力?お前、部外者に言ったのかよ……」


隅影はボソボソ呟くように言う。


あぁその通りだ、これに関しては俺はなんにも悪くないからなんか言いたいことがあるなら黒鐘にどうぞ。


「あはは、この事は秘密だよ?じゃないと夢先輩が危ないから」


そう言ってる割には隅影が犯人だった場合のことは考えていないんだな、もし犯人なら、部外者に言ったということがバレて夢先輩、殺されるぞ。


いや?これもわざとか?あえて部外者に言ったということを隅影に言うことで、隅影を疑っていないということを証明したのか?


ほんとにバカのか、それともあえてなのかは黒鐘にしか分からん。


「…………で、話したいことって何」


隅影は相変わらず高圧的な態度で接してくる。


何も言ってこないということは俺に事件の事を言ったことを許したということなのだろうか。


「それはー、仁お願ーい」


いやそれは質問は俺がやるのかい。


あれ?もしかして俺、いいように使われているのか?


そもそも最初に事件について捜査すると言ったのは黒鐘で、確かに俺はそれに乗ると言った、が、容疑者に話を聞くのは俺の仕事じゃなくないか?それは言い出した本人がやるよな普通。


ちらっと黒鐘の方を見ると片目を瞑りながら手を合わせて「頼む!」と顔で訴えてくる。


まあ俺だって聞きたいことはあるからこれはこれでいいんだけども……


「えーっと、じゃあ聞きたいんですが、事件の起きた時間はどこにいました?」


「あの日は部活が終わった後すぐ家に帰りましたよ」


隅影の正面に、俺が空いていた椅子に座り始まった事情聴取、ただ周りでは多くの生徒が話をしているため、この話はこの場にいる三人以外には聞こえない。


傍から見ても友達同士で話しているようにしか見えないため、わざわざ話に来る生徒もいない。


「それを証明出来る人はいますか?」


「そんな人いる訳無いじゃないですか」


隅影は俺を睨みながら言う。


悲しいこと言うなー。ただ証明出来ないとは何となく予想していた。一応聞いただけだ。


さて、ではさらに深い質問をしていこうか。


「この前黒鐘から聞いたんですけど、隅影さんは夢先輩の事を睨んでいたらしいですね?それは本当ですか?」


俺がそう質問すると、隅影は黒鐘の事を睨む。その顔からは「何勝手に喋ってんだこらぶっ○すぞ」と言っているのが伝わっている。


隅影は少し考えてから口を開いた。


「はい、本当ですが?もしかしてそれが理由で疑っているですか?」


「まぁね、そりゃ夢先輩の事睨んでいたら、容疑者にはなるでしょ?隅影、なんで睨んでたの?」


隅影の質問に対し、立って腕を組んでいる黒鐘が口を開いた。


睨んでいたことはあっさり認めたか、だが問題なのは理由の方だ。


ただ隅影は夢先輩を睨んでいた理由もすぐに答える。


「人を睨む理由に、『その人が嫌い』っていう理由意外になにかあるですかね?」


なるほど、つまり夢先輩を睨んでいた理由は単純に『嫌いだったから』ということか。


確かに、人を睨む理由にその人が嫌いという理由意外以外存在しないか。


そもそも睨んでいる時点で、絶対に好意的な感情はない。


見ているならまだしも、睨んでいのだ、あるのは嫌っているという感情だけだ。


「その理由は?」


これが1番聞きたかった質問だ。


「なぜ嫌っていたかって?それは……」


ここで初めて隅影は口を詰まらせた。


一番聞きたい質問で口を詰まらせるか、やはり何かあるのか。すぐに言えない理由が。


「どうしたの隅影?言えないの?」


黒鐘はそう言いながら隅影に迫る。


「嫌いだった理由は、嫌いだったからだ」


隅影は吐き捨てるようにそう言った。


「はぁ?だからなんで嫌いなのかを聞きたいんだけど!?」


隅影の答えに対し、黒鐘は少し苛立っている感情をあらわにしながら言う。


「夢先輩、よく気を使って隅影にも優しく話しかけてくれてたじゃん、なのにどうして嫌いに─────」


っと、黒鐘がなぜ隅影が夢先輩を嫌っているのか、疑問を口に出していたその時、隅影は感情を爆発させながら答えた。


「それが嫌なんだよ!俺は一人でいたいから一人でいるんだよ!なのに先輩は俺に友達がいないと思って俺に接してくる、傍から見ればどうだ?ボッチ陰キャに先輩が優しく接している状況!俺はもちろんバカにされ笑い者扱い、夢先輩は優しい先輩って思われるだろうな?」


突然の隅影の発言に、黒鐘は驚いた表情をする。俺は隅影の言うことを黙った聞く。


幸い隅影の声はクラスの騒ぎ声より小さいため、周りからは誰も見られていない。


「俺は夢先輩の好感度をあげる道具じゃねんだよっ、だから嫌いなんだよ」


言いたいことを全て言った隅影対して、次は黒鐘が口を開く。


「だったら直接言えばいいじゃん、『自分に関わらないでくださいって』」


黒鐘の言っていることは正論なのだろう。だが。


それが出来るのならこんな苦労していないだろう。


「は?そんな事言えるわけないだろ、俺だって男だし、いくら嫌いって言っても夢先輩が可愛いとは思う……夢先輩に話しかけられると、ろくに会話が出来なくなるんだ、それに俺にそんな勇気は無い」


隅影は全てを諦めたかのように俯きながら、小さな声で答えた。


「意気地無し」


それに対し、黒鐘は一言だけ返した。


隅影は黙って受け流す。


意気地無し……その通りだな、こいつはどうしようもないただの陰キャだ。


自分からすれば嫌なことも、やめてくださいと言う度胸も無いためどうしようもなく、自分は悪くない悪いのは勝手に接してくる相手だと考え一方的に相手を嫌う。


本当は自分のせいで上手くいかないことも全部相手のせいにする、そんな自分主義の陰キャに────


“誘拐なんて出来るわけない“


話を聞いて分かった、こいつは犯人では無い。


「分かりました、話をしてくれてありがとうございました、では」


そう言って、俺は隅影の席から離れる。


「え?仁?ちょっと待ってよ!」


慌てて黒鐘も仁の後を追いかける。


俺と黒鐘はそのまま教室を後にした。


…………


隅影は黙って2人が教室を出ていくのを見てから、また、窓から外の景色を、憂鬱そうな目で見た。



「仁!?隅影はもういいの?」


「あぁ、もういい、隅影は犯人じゃない」


俺がなぜそう考えたのかを黒鐘に説明した。


俺の考えに、完全に納得出来ないのか、黒鐘は唸ってから答える。


「うーん、それだけで隅影が犯人じゃないって言えるかなー?」


なんかあいつ怪しかったし、と黒鐘は言う。


確かに、俺も一瞬怪しいとは思った、だが、なぜ隅影が夢先輩のことが嫌いなのかの理由を聞いた時、こいつは犯人じゃないと分かった。


これは俺だからこそ分かるのだろう、俺と隅影は似ている、隅影と黒鐘は似ていない。


これが黒鐘は理解できない理由だ。


「とにかく、隅影は容疑者から外そう、最悪他の容疑者の中にも犯人らしき人がいなかったらまた考えるが……」


俺達の本業は探偵でも刑事でもない、ただの学生である。


だからこそ、切り落としていく時はスパスパ落としていかなければ、いつまで経っても事件は解決できない。それにこの事件にはタイムリミットがある、悠長にしてられない。


「んー、分かった、一旦隅影は容疑者から外すよ、でも次はどうする?」


次、誰を捜査するか……残っているのは先輩だけ、人と話すのが苦手な俺からすれば難易度が高い。


さらに、俺には例の力もあるし……その力があるのもあって、隅影との関わりはできるだけ短くするよう努力したのだが。


今回はすんなり行けたが、他もそう行くと限らない、というかいかないだろう。


「行くなら、2年生の星翔先輩だな、3年よりかはまだマシって理由だけど、どうせ捜査するなら同じことだし」


「わかった、次は星翔先輩ね、星翔先輩は……よく夢先輩にちょっかい出してて私も嫌いな先輩だから気をつけた方がいいよ」


やだなぁ……絶対俺にもちょっかい出してくる。


「そうか……ただ今から行くのは時間的にあれだし、来週、日を改めたから行こう」


黒鐘は分かったと言い、俺達は教室へと戻って行った。



戻って行く2人を完全に忘れ去られている路未央は黙って眺める。


まさかあの事件の調査をするなんて、さすが黒鐘だ。


でも、相手はいくら高校生と言っても誘拐を犯した犯罪者、それを分かって捜査しないと絶対酷い目を見ることになる。


やはり俺は2人を止めておくべきだっただろうか……


路未央は自分の選択した判断を今になって悔やむ。


だけど、俺も捜査に協力するって言ったし、もし危ない状況になったら2人を止めよう。


そう考えて、路未央は教室へと戻って行った。



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