25話 面倒な奴が来た
月宮 仁 (つきみやじん)主人公
黒鐘詩音 (くろがねしおん)クラスメイト
隅影誠容疑者
放課後、面倒な文化祭準備の時間がやってきた。
クラス、いや、学校中が文化祭準備で盛り上がっていた。
俺のクラスの陽キャ共は早速焼きそば屋を作るための材料調達に行くと盛り上がっている。また、焼きそばを作る生徒はやる気満々で、既に焼きそばを作るヘラを持っている。気合い入りすぎだろ……
女子達はと言うと、隣のクラスの仲のいい同士でべちゃくちゃ話している。
まぁテンション上がる気持ちも分からんことも無い。
仲のいい友達と、普段の学校ではやらないことをする、友達がいる、そういう人達にとってこの文化祭準備という期間は天国だろう、ただ逆にぼっちからすると地獄の時間でしかないと思う。
早く帰りたいのにわざわざ学校に残って一人黙々と文化祭準備をする、楽しくないし時間の無駄だし早く帰りたい、そう思っているに違いない。
ただ幸いなことに、俺にはすることがある。いや、果たして幸いと言えるのだろうか?むしろ何も無い方が幸せなのかも知れないが……
俺は帰りの会が終わって少し席に座っていたが、そろそろか、と思い席を立つ。
俺が席を立つと黒鐘はトコトコ俺の元へとやってくる。
もちろん例の事件のことを今話すが、丁度クラスは騒がしいため、俺達の声が誰かに聞こえることはないだろう、ただ一応クラスの端の方に移動しそこで話す。
「仁、どうする?早速D組行く?」
窓側の1番後ろで、黒鐘はカーテンを触りながら言う。
早速行くか……さて、どうするか。
正直隅影の捜査をするならまだ本格的に文化祭準備が始まっていない今がチャンスだ、本格的に始まってからだと色々都合悪そうだし……
こっちもまだすることないし……行くか。
「そうだな、行こう、とりあえず隅影がどういう奴なのか見たい」
「オッケー、なら行こう!」
そう言うと、黒鐘は足早にDへと向かおうとするが、
「あれ?詩音ちゃんどっか行くの?」
黒鐘がクラスの友達から話しかけられる。ただ詩音はすぐに答えを返し、まさかこれから犯人探しをするとは全く怪しませないであろう対応をとる。
「あぁちょっと他のクラスの人と話にね、ほら、私応援係だから、自分のクラスだけじゃなくて他のクラスも応援しに行こうと思ってさ」
と、笑いながら黒鐘が言う、もちろん聞いていた女子達も笑う。
「なにそれ!詩音ちゃんの応援係ってこのクラスだけじゃなくて文化祭自体を応援する係なんだ」
とは言っても実質サボりみたいなものだと思うんだが。
俺は先を行く黒鐘を少し間隔を空けて追いかけた。
教室から廊下に出ると、俺の想像していた以上に人が多くいた。
あちらこちらで話している。本当にこの時間が文化祭準備時間なのか疑ってしまう、ただの休み時間となんにも変わらんぞ。
そんな騒がしい廊下を進み、俺達はD組の扉から教室の中を覗く。
「隅影ってのはどれだ?」
D組もA組同様クラスは騒がしく、多くの生徒が友達と話をしていた。
「えーっと、あ、あそこにいる人だよ」
そう言いながら黒鐘は窓側の一番後ろに一人ぽつんと座っている男子生徒を指さす。
なんというか、黒鐘から話を聞いた時に想像した姿と大体同じような人だ。
一言で言うのなら陰キャ。
モテることの無い雑に伸びている髪の毛、顔はどこにでもいるような男子、隅影は自分の手を見詰めながら話しかけるなオーラと陰キャオーラが凄い出していた。
さて、すんごい話しかけづらいが、いくか……
と、俺が一歩足を出した時、突然俺の真横から黒鐘を呼ぶ声が聞こえた。
「あれ?黒鐘どした?D組になんか用?」
俺の横に来た、なんだか爽やか系の男子がいきなり黒鐘に話しかけた。
どこのもんやコラ、っと、俺はいきなり出てきたイケメンを心の中でも睨む。
「あー路未央、まぁちょっと隅影にねー」
路未央、ロミオ!?すげー名前だな。こんなキラキラネイムが現実にもいるとは……
それは置いといて……この感じ、吹部の部員ってとこだな、なら、話は分かるか。
「あー、もしかしてあの事件が関わってるのか?」
路未央は俺には一切目を向けず、黒鐘だけを見て言う。
察しがいいな、あとなんかその態度嫌だな、ガン無視もそれはそれでムカつく。
「あはは、まぁーそうかもねー?」
黒鐘は誤魔化す様に言ったが、それでは認めているようなものだ。別に吹部の人なら隠す必要ないからいいんだけど。
ただ一つ気がかりなのは、間違ってもこいつが捜査に加わるなんてことになることだ。
捜査員が増えれば増える程、犯人にバレる可能性は高くなる。しかも二人も同じ吹部がいれば尚更。
「なるほど、それで、さっきの感じ隅影に用がある感じだったけど、それは?」
めんどくさー、お前には関係ないだろ、あといつまで俺の事に関しては聞かないんだ?
路未央からの質問責めに、黒鐘もさすがに面倒になってきたのか、雑に答える。
「正直に言っちゃうと隅影が犯人じゃないかって疑ってるから、その捜査的な感じ、あ、この事隅影には絶対言わないでね」
黒鐘の答えに路未央は驚いた表示をする。
「まさか、例のメッセージの件について調べていたのか……」
まぁ副部長誘拐されて探そうって思う人正直あんまいないだろう、実際あんなメッセージが来たら、普通の人は心配という感情と、『恐怖』という感情も出てくるはずだ。
同じ部活の人が誘拐された、自分も誘拐されるかもしれない、そう思うのが普通だ。
だから路未央が意外だと思うのは分かる、ただ残念だったな、黒鐘にはそんな感情全く無いぞ。
「んじゃ私達そろそろ行くから」
そう言って黒鐘が隅影の方へと向かおうとするも、またこいつはクエスチョンを言う。
「達?あれ?もしかしてこの人も一緒に捜査してるのか?」
俺、全くの部外者だと思われていた。だがよく考えたら俺は吹部には関わりないからそう思うのも当然か。
「あぁそうだ、俺もこいつと捜査している、理由は聞かないでくれ」
これ以上質問されないために俺は先に質問することを否定しておく。
「な、なるほど……」
すると、路未央は何かを考えるように腕を組み目を閉じる。
「あのさ、良かったら俺もその捜査に協力させてくれないか?」
冗談は性格だけにしとけ、お前を仲間に入れるメリットないから。むしろ怪しませる可能性増えるだけだから。
俺はそう考え、丁重にお断りしようとしたのだが、俺の前にいるこの人は、とんでも発言をした。
「別にいいよ、私達二人じゃちょっと心細かったし」
嘘だろ……確かに俺達は二人だけでは心細いとは思っていたが……俺はこいつのこと何も知らないから信用していいのか分からん。
だが黒鐘が何も疑っていないということはこいつが黒はありえないということなのだろうか。そもそも容疑者に入ってないしな……半分くらいは信用するか。
「えーっとそういうば名前は?」
路未央は俺に向かって名前を聞いてきた。俺は素直に月宮と名乗る。
「月宮ね、月宮はいいか?」
「まぁ、いいよ」
黒鐘が認めるなら断る理由は無い。
「ありがとう、早速捜査に協力したいとこだけど、流石に三人で隅影に迫るのは違和感あるだろうから、俺はあくまで第三者という立場で遠くから隅影を監察してるよ」
どうやら黒鐘よりかは頭は回るようだ。
「了解だ、んじゃくれぐれも怪しまれないようにな」
「んじゃ行くか」と言い、俺と黒鐘は今は窓からぼーっと外の景色を眺めている隅影の元へと向かう。
路未央は自分の席に座り、怪しまれない程度に隅影の方を見る。
こうして、いよいよ犯人探しの捜査が本格的に開始した。
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