23話 結構俺は、人助けをする
月宮 仁主人公
黒鐘詩音クラスメイト
白昼夢 吹奏楽部副部長
『私を探して』
そんな如何にも怪しい言葉が、「夢」という名の人から送られてきていた。
そして、そのメッセージの下には同じく夢から長ったらしく色々と書かれた長文が送られてきていた。
送ったのは同じ、夢という人なのだろうが、二つのメッセージを比べると、まるで同じ人が送ったメッセージとは思えない。
そもそもこのメッセージ自体意味が分からないが、下のこの長文はなんだ?まるで誘拐犯のようなメッセージだ……
「えーっと、これは?」
俺はこのメッセージについて詳しく知るため、黒鐘に聞く。
「昨日の夜、部活が終わってから送られて来たやつでさ、これは夢先輩、吹部の副部長ね、その人から送られたメッセージなんだけど……」
黒鐘は嫌な予感がするのか、強ばった表情をしながら言う。
「朝に先輩から聞いたんだけど、今日その夢先輩学校来てないんだって……」
そしてその事は吹奏楽部内で少し騒ぎになっていると言う。
はぁ、火曜日の憂鬱な朝にいきなり聞かされたことは、部活の先輩から謎のメッセージが送られて、その先輩が今日学校に来ていない、という話だ。
────ハッキリ言おう、心底どうでもいい。俺は吹部にはなんの関係も興味もないし、その夢先輩とやらも知らないし。
どうせその先輩は部員にドッキリでもかけているのだろう、まるで誘拐されたかのようなメッセージだが、ここはただの普通の高校で、アニメでもゲームでも無い。そんな大事件が起きるわけない。
……それに事件ならこの前起きたし、なんなら今絶賛発生中である。
それは例の動画の事だ、俺はてっきりその事かと思ってここまで着いてきたんだが……
「あー、まぁなんだ、そんなに気にすることでもないんじゃないか?どうせ部員をビックリさせようと────」
「気にすることだよ!」
面倒くさそうに対応していた俺に対し、黒鐘は怒鳴るような口調で反論した。
おぉ、大きな声出すなよビックリするから、てかそれより。
「気にすることだよ……だって夢先輩、今まで一度も学校休んだことないんだよ?それなのに部員をビックリさせることのためだけに学校をわざわざ休む?」
……まぁ休まないだろうな……
「それに夢先輩はそう言うことするタイプじゃないし……だからさ、これ、"ガチ"なんじゃないかな……」
ガチ……つまり、夢先輩は本当に誘拐されたということだ。
そんな事ありえるか?確かにメッセージだけ見ればそう言うことになるかも知れないが……ダメだ、まるで実感が湧かない。
そもそもなんで黒鐘はそれを俺に言った?さっきも言った通り、俺は吹部とはなんの関わりもないぞ。
「分かった、とりあえずそのメッセージのことは信じるとして、お前はなんで俺にそれを見せた?」
俺がそう言うと、黒鐘は何故か怒った様な態度で俺に詰め寄りながら言う。
「そんなの先輩探すの協力して欲しいからに決まってるじゃん!」
おいちょっと待ってくれよ、探すのに協力して欲しい?
問題、ここで協力することで何か俺にメリットがあるか────答えは無い。
何度も何度も言っている、俺は人と関わりたくないと、余計な人ずきあいはしたくないんだ、なら協力するなんて答えは無い。黒鐘には申し訳ないが、ここはやはり断らせてもらおう。
ただ断る前に一応聞いておくか。
「なぜ俺に頼った?」
黒鐘は俺の事をじっと見て答える、俺は無意識に視線を逸らしてしまう。
「それは……仁が一番頼りになると思ったから」
────そう言いながら黒鐘は思い出す、あの日、パスタ専門での出来事を。
あの時仁は間違いなく私の事を守ってくれた、あの瞬間はまだ忘れていない、仁が守ってくれれば、私は怖いもの無しだと、そう感じたあの瞬間────
「俺が一番頼りになる?なんの冗談だ?」
俺のどこが頼りになるんだ、なんも出来ない、いらない存在の俺の。
「冗談じゃない、冗談だったらさっきのこと言わないし……私は本気で仁のことは頼りにしてるよ、だから、お願い」
そう言うと、黒鐘は俺の前で頭を下げた。
はぁ、頭まで下げられたら断れなくなるだろ。
俺は話を逸らすように黒鐘に質問する。
「警察には行かないのか?」
ま、さすがに信じてもらえないだろうが、そんなに心配ならダメ元でも相談すべきだろう、誘拐事件なんて今どきそうそうないぞ。
「したいのは山々なんだけど、ここ見て」
そう言うと、黒鐘はまたスマホの画面を見せてくる。
俺は黒鐘の指差す所を見る、そこにはこんなことが書かれていた。
夢先輩からのメッセージで、『このメッセージの事を吹奏楽部以外の人間に言えば、夢を殺す』
なるほど、こんなのが送られてきたら警察にも先生にも伝えることはできないな……
ただ二つ、気になることがある。
「これ、俺に言って良かったのか?」
吹奏楽部以外の人間、俺はこれに当てはまる、ならもしもバレたら夢先輩は殺されるってことだが。
「だから朝のこの時間にわざわざこんな所まで来たんだよ。ここならバレることは無いだろうし」
ふむ、ここなら俺に言ったことはバレないか、まぁ実際今のところ誰一人としてこの実験室の前を通ってないから、バレている可能性無いはずだ。
そしてもうひとつの気になること。というか、気づいたことだが。
「このメッセージを読むに、犯人はこの"学校の生徒"っぽくないか?」
そもそも、吹奏楽部以外の人間にこのメッセージを言ったことは、もし全くの部外者だったら調べようがない。
確かこの学校の吹部って、全学年合わせて40人くらいいた気がする。全員を監視するなんて不可能だ。
もしも誰かが秘密裏に先生に言っても、部外者ならば分かるわけが無いのだ。
ならば先生はどうか、可能性は薄いだろう。
先生が生徒を誘拐……出来なくもないが、どうにもそうとは思えないな……
これには確証は無かったが、夢はそれの可能性が無いという証拠をタイミング良く言う。
「そうなんだよ、犯人は絶対に綾東高校の生徒の誰か、さらに言うなら"吹部の誰か"だと思う」
なぜそう思ったのか理由を聞くと、どうやら夢先輩と最後に話をした吹部の部員は、『夢から部員に呼ばれたから先に帰っててと言われた』と言っていたらしい。
やはり、犯人はこの学校の生徒、しかも吹部……
やっぱりガチなのか……ここまで来ると信じるしかなさそうだな。
「…………分かった、とりあえず犯人探しには協力するよ、と言っても俺は警察でも探偵でも無いし、何をすればいいのか……」
ここで黒鐘が何かアドバイスしてくれると思っていたのだが。
「それは私も分からないよ、私だって事件の調査とかそんなことした時ないし、でも、お互いできることやっていこうよ」
正論だな。できることやっていく、結構今の俺にはそれしか出来ない。
ただもうすぐ授業が始まる、この話の続きは昼にすべきだろう。
俺達は一時間目の授業が始まるため、教室に早歩きで戻って行った。
夢 『私を探して』19:21
夢 『吹奏楽部副部長、白昼夢を監禁した。
大前提、このメッセージの事を吹奏楽部以外の人間に言えば、夢を殺す。
私が白昼夢を監禁した理由はひとつ。確認をするためだ。
タイムリミットは文化祭最終日、7月15日、日曜日の文化祭終了まで、それまでに白昼夢を探し出せなければ、夢を殺す。
これは決して嘘では無い。白昼夢の命は、これを見た綾東高校吹奏楽部全員に懸かっている。最悪の結末にならない事を願っている。』 19:22
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