22話 プロローグ『私を探して』
月宮仁 主人公
黒鐘詩音 クラスメイト
白昼夢 吹奏楽部副部長
碧 黒鐘の友達、お金持ちお嬢様
いよいよ二章開幕です。
6月12日 月曜日 19時過ぎ。
綾東高校にて。
いつも通りの時間に部活が終わり、友達と下校しようとしていた、吹奏楽部副部長の「白昼夢」は、ある人物に呼び止められ、今は薄暗く誰もいない三年A組の教室に連れてこられていた。
廊下の電気は灯っているが、教室の電気は付けていないので、少し異様な光景だ。
「どうしたの?教室になんて来て、何か相談でもある?」
夢は肩にバックを下げながら、自分を連れてきた人物に、なぜ教室に連れてきたのか聞く。
ドア近くに立っている人物は、ゆっくりと夢の元へと近づきながら言う。
「あはは、実は渡したい物があって、一瞬後ろ向いてもらえる?」
……………………?
夢は大きく困惑しつつも、ゆっくりと後ろを向く。
一体何なのだろう、というか何をしたいのかイマイチ分からない。渡したい物があるのなら直接渡せばいいのに、どうして後ろを向く必要が────
そう夢が考えていると、突然、夢の口にハンカチが押し付けられる。
「んっ!」
いきなりのことに驚いたが、夢は本能的に抵抗し、その人物を振り払おうと腕を掴むが、
「んー!んー、んっ、…………」
相手の力は強く、振り払うことは出来ず、徐々に自分の体が言うことを聞かなくなってきたと感じる。そして、突如猛烈に襲ってくる、"眠気"。
え、なんで、こんなこと、あ、もう……だめ……
夢は体の力が抜け、その人物に自分の全体重を預けながら、倒れていく。
おっと……よく効く薬だな、こんな一瞬で人を眠らせるなんて、何を使えばできるんだ?まあどうでもいいか。後は運べば任務完了だ。
その人物は倒れた夢のことを見る。
夢、改めて見ると可愛い、ショートヘアーにスタイルのいい身体、そして発育のいい胸……でも1番では無い。1番は夢じゃない。
そんなことを考えながらその人物は、自分の背中にその胸が押し付けられている感覚を意識しながら夢の事を背負う。夢が肩にかけていたバックも自分の肩に無理矢理かける。
そして、そのまま、ある場所へと向かう。
歩き続け数分、目的地へ到着した人物は、部屋の前に置いてある体育用のマットをどかして部屋の中に入る。
開けた扉の先は闇。その人物は部屋の電気を付けて夢を中に入れる。
部屋の大きさはそれほど大きくなく、教室の二分の一の大きさを更に一回り小さくしたほどの大きさしかなく、部屋の中に物はほとんど置かれてなく、古い木製の椅子が部屋の端に少しと、何も入っていないタンスが一つ置いてあるだけであった。
ふぅ、疲れた…………あとはこれ付けて。
その人物は、夢を怪しげにぽつんと一つだけ置かれた真新しいパイプ椅子に座らせ、四肢を結束バンドで固定し、夢の目に、黒いアイマスクをつけ、口にはガムテープを貼る。
夢はまるで、誘拐されて監禁されている様な姿になった。
こんな姿の女子を見れば、誰でも変な気を起こすだろう、眠っていて、なおかつ四肢を固定されているため抵抗することも出来ない、そしてこの部屋には二人だけ。
…………今は黙ってさっさとこの場を去るのが懸命な判断だろう。
そう考えながらもその人物は、椅子に座って寝ている夢を見ながら、なにかの判断に悩んでいた。
数秒悩み、結局その人物は部屋を出ていくことにした。
「さようなら、夢、また一週間後に」
そう言いながら、その人物は部屋の電気を消して部屋から出て行った。
部屋を出て、男は奪った夢のスマホの電源を入れる、もちろん表示されるのはロック画面。
ロックを解除するには六桁の数字を入力しなければならないが……その人物は迷うことなく数字を入力する。
114720、夢のスマホの暗証番号知っている。
容易くロックを突破したその人物は、次にLINEを開き、数あるグループLINEから、あるグループLINEのトーク画面を開いた。
それは、『綾東高校吹奏楽』、その名の通り綾東高校の吹奏楽のグループLINEである。
そのトークの最新チャットは、部長が詳しく部活の日程を伝えているものだった。
そこには、その人物はある文章を書く。
それは────────
────────『私を探して』────────
「えーでは朝のホームルームを始める」
担任の山崎の声から、まためんどくさい一日が始まった。
しかも今日は火曜日、一週間で最も嫌いな授業が集合している特にダルい曜日である。
そんなただただダルい今日だが、一つだがいつもと違ったことがあった。
それはギリギリて教室に入った俺を、黒鐘が何かを訴える様な目で見てきたことである。
まさかまたあのことについてじゃないだろう……
そう考えながら、仁は龍己の家に行った日の夜の事を思い出す……が、すぐ思い出すことをやめる。
一体なんのことか、それはこの前のパスタ専門店での出来事のことだ。
まずかったのはあの謎の赤い薬、そしてぼやけながらも映っている仁の動画が拡散された事だ。
あの動画が拡散された夜、黒鐘から連絡が来た。
黒鐘が言ったことは、『碧ちゃんから連絡が来たんだけど、あの動画は相当まずい動画がだって』
碧曰く、あの動画の仁は、政府の人間からすれば"抹殺対象"になるという、抹殺対象?ふざけんなよ。
あの動画では俺は被害者だ、あれは警察が到着する時間を稼ぐためにやった事だし、実際あの薬は飲んでもない。
確かに傍から見れば俺はヤバい人間だったかも知れないが、だからって抹殺対象にされるのは勘弁頂きたい。
このことについての詳細は後日直接会って話してくれるらしい、ただその日にちはまだ決まっていないが……
なんか、碧さんも結構予知能力について調べてくれていたんだなと気づき、すっごい感謝している。
碧が予知能力について調べているのは、本当は仁のためではなく、あくまで詩音のためにやっていることは仁は知らない……
ま、どうせまたその事なんだから、そんな気にしなくてもいいか。
そう考え俺は、山崎の話に耳を傾ける。
「みんなも分かっているとおり、今から一ヶ月後には文化祭がある」
山崎がそう言った途端、クラスがざわめき出した。
あぁ、文化祭の話か、そうだ、そういえばこの高校は夏休み前に二日間に渡って開催される文化祭があるのだった。
綾東高校の文化祭は普通の高校と同じ様なフツーの文化祭だ。
クラスごとに何か出し物をする、飲食店でもお化け屋敷でも演劇でもなんでもいい。
「明日の六時間目のロングホームルームでは文化祭の出し物を決める、各自何をしたいのか考えておくように」
そう言いながら、山崎は一層ざわめくクラス全体を見渡した。
何をしたいか考えたおけって……どうせ俺みたいな陰キャの意見なんて通りないんだから、考える気になんてならないな、あとぶっちゃけどうでもいい。
文化祭なんて必然的にクラスメイトと関わることになるじゃないか、勘弁してくれ、ここまで一部生徒に抜いて誰とも関わらずにやってきたのに、最悪のイベントだな、どうだろう、珍しい石の展示会とか面白そうじゃないか?
「では、これでホームルームを終わる」
そう言うと山崎は教室を出ていった。
担任に渡すものがあったが、すぐいなくなるため渡せなかった生徒は、颯爽と教室を出ていった山崎の愚痴を言いながら友達と会話を始める。
一方俺は、こちらに向かってきている生徒に目をやる。
さてと、仕方ないから話聞くか。
黒鐘はいつも通り、俺の席に来たので、いつも通り、話を始めるのかと思ったが。
「仁、ちょっと着いてきて」
そう言いながら黒鐘は廊下へと向かう。
ん、なんだ珍しい、教室では話せないことってことか?
俺は黙って黒鐘について行く。
結局、来たのは誰もいない実験室だった。
「こんなとこまで来るってことは、相当重要な話か?」
俺の少し前にいる黒鐘に向かって言う。
「うん、実は昨日、吹部のグループLINEにこんなメッセージが来てさ……」
何の話だと思いつつも、俺は黒鐘が見せてくるスマホの画面を見た。
その画面には、奇妙な文章が、送られてきていた。
ここまで読んでいただきありがとうございました!評価やブックマークもぜひよろしくお願いします!




