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21話 龍己の秘密

月宮 仁 (つきみやじん)主人公

黒鐘詩音 (くろがねしおん)クラスメイト

痣木龍木 (あざきたつみ)仁の親友

痣木ちひろ 龍己の母

6月3日 15時7分。


今俺は、4ヶ月ぶりに龍己の家にいる。ここへ来た理由は、龍己について知るため。そして今まさに、知りたかった龍己の秘密を知ることができる。


ちひろさんは1口、マグカップに入っているアイスコーヒーを飲んでから、昔のことを思い出すように話を始めた。


「そうだなぁ、何から話そう……えーっと、そもそもなんで私が龍己に自分のことをあまり話すなって言った理由なんだけど、それには龍己の予知能力が関係してるんだよね」


ちひろさんはいきなり俺が1番聞きたかった事について話始めた。


人と目を合わせるのが苦手な俺は、目の前の机に置かれているココアを見ながら聞く。


「あいつの、予知能力ですか?あいつの予知能力って『いつ水を飲むか』ですよね?それがどう関係してるんです?」


と、俺は言ったもののちひろさんがこれから言うことは何となく予想できる。


それはこの前、俺が黒鐘と蒼さんとカラオケに行った時予想したものだ。


つまり、龍己も俺と一緒で『予知能力の時間が変化する力を持っている』ということだ。


それに対し、ちひろさんは俺の予想通りの答えを言った。


「まぁ予知能力自体は普通なんだけど……問題なのは時間の方で、龍己は小学1年生の時から、『予知能力の時間が変化する』時があったの」


やはり、龍己にもその力はあったのだ、だが俺の予想より、その力が出たのが早い、『予知能力の時間が変化する』力は、その力を持っている人物の体液を摂取することで得ることができる、つまり、龍己は小一の時、その人物の体液を摂取した、ということになるな……


俺は次の質問をしようとしたが、それはちひろさんの言葉に遮られた。


「あともう1つ、……実は龍己の予知能力は『いつ水を飲むか』じゃないんだよね、これも予知能力の時間が変わるという謎の能力があるから念の為に嘘をつかせておいたものなの」


これにはさすがの俺も驚き、俺は無意識に「マジすか」と呟いた。


そこまで対策していたとは、流石に予想外だった。


「ふふっ、さすがに驚いたよね、まさか今までずっと一緒にいた人の予知能力が嘘だったなんて、なんか申し訳ないことしたかなぁ」


その通りですよ、あんだけずっと一緒にいたのに、龍己の予知能力が本当は違うなんて、思いもしなかった……


そして、肝心の龍己の本当の予知能力は。


「龍己の本当の予知能力は『他人がいつ悲しむか』なんだ」


…………他人がいつ悲しむか、か。嘘の予知能力とは全くの別物だ……そういえば黒鐘の予知能力に似ているな。


つまり俺が悲しむ時も知っていた、絶対それを言いたいと思った瞬間はあったはずだ、それを我慢し誰にも怪しまれないよう生活していたのか、龍己やるやん。


「全く気づきませんでしたよ……」


「ほんと!?仁君を騙せてたなら誰も龍己の本当の予知能力には気づいてないね」


そうでしょうね、ずっと一緒にいた俺すら気づけなかったんだから、この世で龍己の本当の予知能力に気づいた人はいないだろう。


「でも、龍己にそんな能力があるのは、多分"私のせい"なんだよね……」


ちひろさんはマグカップを両手で握り、静止しているコーヒーを見ながら言った。


と、いうとつまり?


「つまり、ちひろさんにも、その能力があるんですか?」


図星を言われたちひろさんは、苦笑いをしながら答えた。


「その通り、私にもその能力があるんだ、ちなみに私の予知能力は『いつくしゃみをするか』、覚えてた?」


覚えた、というより今初めて聞いたような……それよりちひろさんにもその力があった、なるほど、そうなると龍己が誰からその力を得たのか分かる、龍己は母親からその力を得たのだろう。


普通に考えて、1番可能性の高い人物は1番身近にいる母親だろう。


「いえ……なら僕と同じですね」


ちひろさんは秘密を話してくれたんだ、この際言ってもいいだろう、俺の秘密のことも。


「え!?仁君にもその能力あったんだ…………」


妙に長い沈黙、ちひろさんは俺のことをなぜか疑ってるかのような目付きで見る。


なんだ?どうして俺の事をそんな目で見る?なんかまずいこと言ったか?


俺は心の中で考えてみた。その結果。


…………言ってるわ。


「あ、す、すいません!なんも考えずに発言して、決してわざとじゃないです……」


そうだ、ちひろさんは俺の予知能力を知っている。つまり、俺もその力を持っているということは、"他人の寿命を減らすかもしれない"ということだ、そして、実際そのせいで龍己は亡くなった…………


そうちひろさんが考えたら、少しまずいのでは?


自分の息子を、直接的ではなくとも、殺した様な人間が目の前にいる……


長い沈黙の後、ちひろさんはついに口を開けた。


「うん、大丈夫、私こそごめん、なんか変な心配かけさせちゃったね、でも安心して、私は仁君をそんな目では見ないから」


そんな目、というのは殺しをした人間、ということだろうか。本当に、軽はずみな言動は避けた方がいいな……俺の予知能力は他人を不幸にするだけの予知能力だ。


「それにしても仁君にもその力があったなんて、それは驚いたよ……もしかして、それって龍己が関係してるのかな……」


そうちひろさんは深く悩むように俯いた。


俺は何も言わず、ただ黙って1口だけココアを飲んだ。


俺は知っている、ちひろさんが言う通り、俺がその力を得た事には龍己が関わっていることを、だが、それを言えばどうなるかは予想できる。


そもそも俺が龍己を殺したという事については、まだちひろさんは疑っている段階のはずだ。


だが、もし俺の持っている力が、龍己から渡った力だとすれば、"龍己にその力を、不可抗力だが渡したちひろさんは、間接的に自分の息子を殺した"と言えるだろう。


それが分かればちひろさんがどうなるかは想像できる……だから俺はあえて言わないで、嘘をつかせてもらう。


「いえ、多分龍己は関係ないです、僕にその力が現れたのは結構最近だったので……龍己のせいではないです」


本当は龍己が死ぬ数日前に現れた力だが、最近現れたということにするしかない、そういうことにしても違和感は無いはずだ。


「なるほどね、最近現れたんだ、じゃあ龍己は無関係、なのかな?」


そりゃ今は関わってないから龍己は無関係となるかは分からないため、まだ完全に疑いが晴れたという訳でもなさそうだが、とりあえずは安心していいだろう。



その後も、ちひろさんから龍己について、俺の知らなかった事をいくつか教えてもらったが、最初の予知能力についての事以上に重要だと思ったものは無かった。


時刻は4時になるとこか、結構いろんな話を聞いたが、収穫と言えるのは最初の情報だけか、まぁ1番聞きたかった事ではあったし、全然満足しているからいいんだけど。


それに龍己のことを知れたこと自体が単純に嬉しかった。


あいつはほんとに自分のことを言うことが少なかったから、龍己の内面がどういう奴なのかがよく分かった、それが分かっでも俺はやっぱり、龍己と出会えて良かったと思う。


「まぁ龍己について話すことはこんなとこかな〜」


最初は若干暗いテンションに落ちたが、最終的には龍己のことを話すのが楽しかったのか、ちひろさんは満足したように笑顔になっていた。


「はい、ありがとうございました、龍己のことについて、色々知れて良かったです」


「全然いいよー、あっ!そうだ!良かったら龍己の部屋見に行く?まだ部屋片付けてないから、久しぶりに行ってみたら?」


ちひろさんは思い出したように名案を言った。


これには胸が熱くなった。まさかまだ龍己の部屋を片付けてなかったとは……ぜひとも行きたい。


4ヶ月前まではたまに龍己の部屋で遊ぶこともあった。


龍己の部屋は2階にあり、部屋の大きさは一般的な家の大きさと同じだ。


「ぜひ!お願いします!」


俺がそう言うと、ちひろさんはニコッと笑って席を立った。


「わかった、じゃあ2階行こっか」


ちひろさんがそう言うと、俺は席を立ち、龍己の部屋へと向かった。



カーテンが閉まっており、部屋は薄暗かったが、龍己の部屋の扉を開け、まず目に入ってきたのは部屋に置かれていた机だった。


龍己がゲームをする時座っていた机だ、4ヶ月前と、何も変わってない、まるで時の流れに取り残されたかの様に。


机に置かれている推しのフィギュアや、本棚に並べてある龍己が好きだった漫画、今になっては懐かしい、中学の時の教科書など、俺はあの時の楽しかった思い出を思い出しながら部屋の中を見渡した。


ちひろさんは俺の前に出て部屋のカーテンを開け、懐かしさに浸っている俺に言葉をかけた。


「じゃあ私は下にいるか、満足したら下に来て?」


俺の気持ちを察したのか、ちひろさんは俺を1人にするために下に戻るといい、俺の答えも聞かずに階段を降りていった。



部屋にひとりなった俺は、適当に教科書を開いたり、何となく置かれている漫画を取って読んでみたり、なんだかよく分からない行動をしていた。


確かに懐かしいとは思ったが、だからと言って何をすればいいのか分からない。さすがに勝手に引き出しとかを開けるのは龍己に怒られそうなのでやめておこう、あいつにもプライベートというものはあるのだから。


だから俺は、そんなに長居しないで龍己の部屋を後にした。


これで今日ここへ来た目的は全て果たしたことになるな……



時刻は4時10分くらい、名残惜しい気持ちはあるが、俺はちひろさんにそろそろ帰りますと言った。


「あ、うん、わかった、今日はありがとうね、久しぶりに仁君と会えて嬉しかったし、久しぶりに楽しいって感じられた」


ちひろさんは心の底から感謝していることを伝えるな口調で話した。


「いえ、こちらこそ本当にありがとうございました、龍己のこと知れて良かったです」


靴を履き、玄関の前で俺は答えた。


もしかしたら、ここに来るのはこれで最後かもしれないななんて悲しいことも考えながら。


ずっと頭の片隅にはあった、果たして、俺はちひろさんの会っていいのかという疑問が。理由はもちろん例の力があるからだ。


人とできるだけ関わらないようにしている俺だが、今回ばかりは俺の力についての情報とちひろさんの安全を天秤にかけ、ほぼ水平みたいなものだったがおれ情報を取った。


「じゃあまたいつでもきていいから、またね」


ちひろさんは扉の前で手を振って俺を見送った。


その表情は、どこか悲しげな表情だった。


「はい、さようなら」


俺はゆっくりと扉を開けて、軽く頭を下げて家を出た。



ふぅー、今日は色んなことがあったな、黒鐘と千奈と偶然会ったし、ヤバいやつらに巻き込まれたし、龍己のことについても知ることができた。ただその代わりめっちゃ疲れた……


今日知り得た情報は後日しっかりまとめておこう、きっと俺の力を無くすための役に立つはずだろう。


俺は龍己の家の前に停めていた自転車に乗り、自宅へと向かった。

ここまで読んでいただきありがとうございました!評価やブックマークもぜひよろしくお願いします!


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