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19話 拡散されていく動画

月宮 仁 (つきみやじん)主人公

黒鐘詩音 (くろがねしおん)クラスメイト

高橋千奈 (たかはしちな)友達。仁と黒鐘に命を救われた。

「引っ張んなよこら、ぶっ飛ばすぞ?」


「いいから黙って歩け」


警察が到着し、男二人は抵抗しながらも連行されて行った。


いやーまさかこんなことに巻き込まれるなんて思いもしなかったな。


お昼を食べようと思ったら、ヤバい客に遭遇する、こんな事はなかなか起きないだろう。


男達が去った店内は、店の外から音が聞こえてくるだけで、静寂に包まれた。


店内には、金髪の迷惑客がぶちまけたパスタがあちらこちらに飛び散っており、せっかくの綺麗だった店が台無しになっている。


「仁、大丈夫?」


黒鐘はやけに心配そうな目付きで俺を見てきた。


「あぁ、大丈夫だ、お前は?」


「うん、私も大丈夫」


一方終始ただ見ていることしか出来なかった千奈は、やっと緊張から解放されたように席へと座り込んだ。


「あぁー、怖かったー、まさかあんな奴らに巻き込まれるとは、なんかすっごい疲れたよー」


確かに、一気に疲れた感じはするが、驚くことに、あの男らが騒ぎ始めてからまだ10分程しか経過していない。


時刻は1時を過ぎたところだ、アイツらが去ってから、俺の体には忘れていた感覚が戻ってきた……腹減ったぁ。


果たして、あんなことがあってすぐに飯を食べるのはいかがなものか、だが、もう腹の減りも限界だし、食べるか。


俺は自分の理性に逆らえず、少し固まったパスタを食べ始めた。せっかくのパスタが無駄になるのもあれだし。


それを呆然と見つめている黒鐘と千奈も、ハッと思い出したように、パスタを食べ始めた。


他の客は警察に連れていかれる男達に夢中な中、黙々とパスタを食べる異様な光景になった。


うめぇぇ、冷えてるけど、具材やらソースやら全てが美味く、なかなか味わえない味だ。


「うん!美味しい!このお肉すっごい柔らかいね!」


「確かに、柔らかいし食べやすくてすごいパスタに合ってるね」


黒鐘と千奈もパスタには満足している様子だ。


そんな3人に、店長は少し困惑しながら近づいた。


「君たち、さっきは助かったよ、特にそこの坊主、大した勇気だな!」


坊主って、俺のことか?


「いえ、当然のことをしたまでです」


めっちゃカッコつけてるように思われるなこれ……


「そうだ!お礼としてお代はいらないよ、タダで食ってくれ!」


なんと、お代がいらないだと!それは嬉しい、気前がいい店長だな!


「本当ですか!?めっちゃ嬉しいです!ありがとうございます〜」


黒鐘はその笑顔でお礼を言われれば誰でもニヤリと笑ってしまう程の笑顔で店長にお礼を言った。


千奈さんも、「ありがとうございます」と頭を下げながらお礼を言った、どうやら千奈は良い方の陽キャ女子だな。


俺は勝手に陽キャ女子のことを2種類に分けている。


『良い陽キャ』と、『悪い陽キャ』だ。


良い陽キャは千奈みたいにしっかり例を言ったり迷惑になることはしない人で、悪いやつは、まぁだいたい分かるだろう?



「さてと、あのバカどものしてくれた後片付けしないとな、まぁゆっくり食べていってくれ!」


そう言いながら、店長は厨房に戻り、何人かの店員を連れてきて片付けや掃除を始めた。



その後、3人がパスタを食べ終わった頃。


もちろん食べるのが早い俺が1番最初に食べ終わり、その後はいつものようにスマホをいじいじしていた。


「んじゃ、食べ終わったことだし、そろそろ行きますか」


そう言うと、黒鐘は席を立った。


「そういえば結構千奈ちゃん、お礼としてお昼代奢ること出来ないけど、どうする?」


そういえば奢るって言ってたな。


「いや、別にそんなに気にしなくていいよ、奢ってもらわなくても、俺は別にいいから」


俺はそう言ったが、千奈は諦めきれないのか、俺にお礼をしようとしてくる。


「いやいや、それじゃ私が納得いかないから、うーん、仁って今欲しい物とかないの?」


あー、さっきも考えたんだが、特に何も無いんだよぁ。でも、強いて言うなら……


「服、かな」


俺がそう言うと、黒鐘は指をパチンと鳴らし、「それだ!」と俺に向かって指をさしながら言った。


何がそれだ、なんだ。


「服買いに行くのいいじゃん!私も新しい服買いたいしさ!」


どうやら黒鐘も服を買いたかったらしい。なら、行くか……


でもなー、俺ファッションセンス無いし、なんか服選び見られるの嫌だなぁ……


実際今来てる服も上は黒のTシャツに下はジーンズだしな。


…………せっかくなら、2人に頼んでみるか、俺よりオシャレには詳しいだろうし、俺のファッションセンスを晒さなくていいし、普通にオシャレな服も着れるだろうし。


「あのさ、もし服買いに行くなら、俺の服も選んでくれないか?」


意外な発言に驚いたのか、黒鐘は驚愕した表情をしてから答えた。


「仁から私を頼るなんて珍しいね、ただそういうことなら任せて!めっちゃかっこいい服選んであげる!」


やけに自信ありげだな……まぁそっちの方がいいんだけど。


「それじゃ、早速行こうか」


と言いながら服屋に向かう黒鐘を俺と千奈は追いかけた。




こうして事件は解決した、そう思っていた仁だったが、この時の仁はまだ知らない。


この事件を発端に、インターネット上では、ある動画が拡散されて行っていることに。


事件の一部始終を撮影していた人物は、あの場に結構沢山おり、もちろんそれをネットにあげる人間もいる訳で、ネットに上がったその動画を見た人の多くは、


『またこういう迷惑客いたのかよ』

『うわ〜、これ絶対ニュースなるやつやん』

『店ぐちゃぐちゃで草』

『顔がいかにも馬鹿っぽい、警察に捕まってるし人生乙(爆笑)』

『単純にキモイ』


と、店のことを心配する声や男達を批難するコメントが大半だったが、ドロドロと拡散されていく動画には、コメントも増え、中にはこのようなコメントもある。


『あの赤い薬、予知能力の時間を変えれるって、やばくないか?』

『え、マジで時間変えれるんだ、すご、てか俺も欲しいんだけどw』

『いや予知能力の時間を変えるって、それ禁忌なことでは(´・ω・`)?』

『あの高校生怖笑マジで人殺しそうな目してるぞ』

『厨二病っぽいけど、あれで犯人ビビるのやべーだろ』


やはりと言うべきか、薬に目をつける人もいた。


"予知能力の時間を変えることが出来る"なんて、そんなことを普通の人間は考えたこともなかった。


────常識を疑う愚行をする人間などいない。だが、それを行う普通ではない人間が、世界を変えていくのだ。


仁がこの拡散された動画、自分が写っているこの動画を見るのは、家に帰ってからである。



13時37分、3人は服を買うために、イオン内にある服屋に来ていた。


「さて、私も服を買いたいわけだけど、先に仁の服選んじゃおっか?」


ん?なんだその質問は、別に自分の服から選んでだろうと、そう考え、黒鐘に言ってやろうと思ったが、不意に俺の耳元で黒鐘はこう言った。


「今日龍己の家行くんでしょ?時間大丈夫?」


ほう、まさかまだ俺が土曜日に龍己の家に行くこと覚えていたとは、しかもその事を気にして俺の服から選ぶと言った、さすがは黒鐘と言いたいな。


まぁ時間は、3時に行く予定で今1時40分くらいか、あまり余裕があるとは言えなくなってきたな。


「悪い、3時に行く予定だから、俺から選んで貰えると助かる」


俺がそう言うと、黒鐘は俺から距離を取り、


「よーし!じゃあ仁の服から選ぼうー!」


明らかに不自然な感じの会話をしたが、千奈はあえてか、何も言わずに「おっけー」とだけ言って俺の服選びを始めた。


さてと、あとは2人に任せて俺は座って待ってるか。


と思い、服屋の外にあるソファに座ろうとしたが、


「ちょっと!仁も一緒に来てよ!仁がどういう服好みなのか分からないと選びようないし」


あー、そりゃそうか、休みたいとこだったが、俺の服選びのためなら仕方ない。


俺はこっち来いと手を振る黒鐘の元へ、早歩きで向かった。

ここまで読んでいただきありがとうございました!評価やブックマークもぜひよろしくお願いします!


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