18話 この世で1番危険な人物
月宮 仁 (つきみやじん)主人公
黒鐘詩音 (くろがねしおん)クラスメイト
高橋千奈 (たかはしちな)友達。仁と黒鐘に命を救われた。
金髪の男は、ポケットから取り出した錠剤を、自分の口の中に放り込んだ。
なんだあのいかにもな薬は……
いきなり謎の薬を飲んだ男に、俺も黒鐘も店長も、全員困惑していた。
「おぉーっと!例の薬を飲んだーぁ!」
マッシュの男だけは未だ盛り上がって撮影を続けている。
「おい、餓鬼、てめぇの能力はなんだ」
金髪はまるで厨二病のように手で顔を隠しながら、黒鐘に聞いた。
男の急な質問に対して、黒鐘は少し困惑した様子でこう言い返した。
「あなたに教える義理はない」
おい、頼むからそれ以上男を刺激するな、ほんとに殴られるぞ……
「そうか、言わねぇか、後悔することになるぞ?」
金髪の脅しを、黒鐘はスルーして受け流す。
「俺が今飲んだ薬は、飲んでから1分間、"予知能力の残り時間を0にできる力"を持っている、この意味がわかるかぁ?」
男がそう言うと、座り込んでいる店長の方を見た。
すると、店長自分の足にある違和感を感じた、それは、
「うっ、い、痛ぇ!」
そう言うと、店長は右ふくらはぎを押さえながら痛みに苦しみ始めた。
店長は、なんの前触れもなく、ただ座り込んでいただけで足をつった。
────足をつった痛みは、つった人にしか分からないが、その痛みは相当なものだ。痛み自体は、1、2分もすれば引いていくが、それでも、つってからしばらくはまともに足を動かせなくなる。
おい、まさか本当にそんな力が使えるのか?予知能力の時間を0にする力……俺の力と似ている……
だが俺の力は任意に操ることはできないが、あの金髪は錠剤を飲んでその力を一時的に得た……?どういうことだ?俺の力は錠剤1つで誰でも得られる力なのか?
「おぉーっと!ついに力を使ったぁぁ!しかもちゃんと発動している!」
マッシュは一生テンションが高いが、そんなマッシュに向かって金髪は言った。
「おい!広めるなって言われただろ!撮影やめろ!」
そう言いながら金髪はマッシュのスマホを取り上げた。
その言い方的に、その薬はやはり世間には広められたくないものなのだろう、一体どうやって入手したのか、誰が製造をしたのかは分からないが、その人物は俺の力の事についての知識を絶対持っているだろう。
男はまたポケットから先程と同じ、赤い色をした錠剤を取りだしながら言った。
「なぁ?分かるか?この錠剤には本当に時間を0にする力がある、そしててめぇももうわかった通り、"俺の予知能力はいつ足をつる"だ、はっ!最高だろ!?」
何が最高だ、最悪だろ。よりにもよって、どうしてそんな嫌な予知能力を持っているんだ、つまりこの男は、他人の体をいつでもつらせることが出来るわけだ……魔法にあったら強そうだ。
俺は内心ビビっていた。そりゃそうだろ?俺は足をつった時の痛みを鮮明に覚えている、なぜが龍己が亡くなってからはよく足をつるようになったからな。もうあの痛みは二度とごめんだ。
俺は黒鐘の後ろに行き、黒鐘に逃げるよう言った。
「黒鐘、あいつは危険だ、俺達も逃げた方がいい、多分もうすぐ警察が来てくれる」
そう言うと、流石に黒鐘も引くべきと判断したのか、1歩後ろへ足を出したが、
「おいおいおい?逃げようとしてんのか?んな事したら、分かってるよな?あ?つるぞ?」
殺すぞ、みたいなノリで言ってきた。
「…………な、何?あなた達本当に何がしたいの!?」
もはや、こいつらが何をしたいのかは不明だ。面白い動画を撮ろうとかほざいていたが、今は撮影をしていない。何がしたい?むしろお前らこそ逃げるべきだろ、もうすぐ警察が来るんだぞ?
俺達は全員その場に立ち尽くすしか無かった。
「俺はただただイラついてんだ、お前のせいだぞ、餓鬼こら、だから憎むなら自分を憎め」
そう言うと、男は手に持った錠剤を口に入れた。
まずい、絶対力が使われる、そしてその対象は黒鐘、いや待て、力が1人限定とは言っていない、もしかすると、俺達全員かもしれない。
ふと千奈を見ると、千奈は涙目で男を見ていた。
黒鐘は、前にいるため顔は見えないが、先程の勢いはもうなく、今は逆に怯えている様子にも見える。
女子二人がこんなに怯えている中、俺は何もしないのか?
ただ黙って突っ立てるだけか?
あぁ、それが1番いいだろ、下手に出しゃばって、状況を悪化させたらどうする、もう1人の男の予知能力は分からない、ヤバい予知能力だったら大変なことになる。
だが、それでも俺は、自分の意志とは違う行動を取っていた。
俺は金髪の男の目の前まで行き、不意に男に足をかけて、男を転ばせた。
倒れた男は思いっきり体を打ち、ポケットに入っていた薬を地面にばらまいた。
「てめぇクソガキ!何しやがる!死にてぇのか!?」
男はついにブチ切れた。本当に殺しにかかる勢いで、俺の方を睨みつけた。
そんなことしても意味無いって?
違う、俺の目的は、こいつを手に入れることだ────
仁、いきなり、何を!?
黒鐘はいきなり前に出て、男を倒した仁の行動に困惑していた。
どうして、その薬を手に取ったの!?
──────────
「おい──お前ら、これ以上ふざけた真似とったら、まじで死ぬぞ?」
仁は男が落とした薬をひとつ手に取って、今まで聞いたことがない、恐怖を感じるほどのオーラを出しながら、男達に言った。
…………!?身の毛が逆立ち、鳥肌が立つ。
どうして私まで恐怖を感じるの、仁は私達を守ろうとして男達に向かって言ったことなのに……
────ただ、仁が男達に言った、『死ぬぞ』というセリフははったりでも脅しでもない。
仁の予知能力は、『いつ死ぬか』が分かる、つまり他人の寿命が分かるのだ。
それ即ち、仁があの薬飲み、力を手に入れれば、仁は間違いなく世界で一番危険な人間となる。
強制に寿命を0にする、死ねと思ったら誰でも殺せる力なんて、マンガやアニメのキャラにいたら強すぎるチートキャラだ。
はぁ、そう考えると、仁って怖いなぁ、まぁ流石にあいつらを殺すことは無いだろうけど……殺さなくても、仁、もう取り返しがつかないよ?
多くの人が、スマホを片手に、その現場を撮影している中、男達は怯みながらも仁に言い返した。
「はっ!そんな嘘に騙されるとでも思ってんのか!?」
とは言ったものの、男は内心分かっていた、こいつはガチで俺らを殺せると。
だが、俺はこいつに薬の事でまだ言ってないことがある!それは、その薬で時間を変えれる予知能力は、『その人物にとって予測不可能な予知』でなければならない事だ!
ふっ、もしこいつの予知能力が、予測できる予知能力だとしたら……殺す。殺しだけはやらねぇって決めただが、もういい。
男は急に、ククク、と笑い始めた。
「全身ありとあらやる箇所をつってやるよ!足も手も首全部!死ぬほど痛ぇぞ!?あぁ!死ぬほど痛ぇぞぉぉぉ!?」
男の脅しを仁は軽く流した。
あいつ…………呆れるなぁ、確かにつればすごく痛いけど、"痛みだけでは人が死なない"って分かんないんだ……人はそんなに貧弱じゃない。
ただ仁の予知能力では、本当に殺すことが出来る。
「…………そうか、ただもうタイムリミットな様だぞ、残念ながら、お前らを殺すことは俺にはできない」
意味深なセリフを残し、仁は店内の入口の方を見た。
男達も振り向き、入口を見ると、
「警察だ!両手を上げて動くな!」
男の警察が二人、現場に駆けつけていた。
こうして、なかなか体験できないが、一生体験したくない事件は解決へと向かった。
ここまで読んでいただきありがとうございました!評価やブックマークもぜひよろしくお願いします!




