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1話 黒鐘というクラスメイトがウザイ

一言前回のあらすじ:主人公、高校へ入学する

4月7日 綾東高校


綾東高校の体育館では、入学式が行われていた。


さて、やっと長ったらしい入学式も終わるが、正直入学式なんてどうでもいい、問題は次の、HRの時間だ。


入学式の次は、30分間のHRがあり、その後放課ということになっている。


そのHRで、どれだけ自分に関わるなアピールができるかで、俺の高校生活は決まると言っても過言では無い。


もし自己紹介の時、普通の自己紹介をすれば、多分1人くらい俺に関わろうと話しかけてくる人がいる、はずだ……


そして仮に、なにかの間違いでその人と変に友好な関係になって、龍己と同じように、死んだら……流石に俺はもう、立ち直ることはできない。


だから、決めたルール通り、誰とも関わらず、1人で生活できるようにする!


「では、A組から退場してください」


よし、行くぞ!


俺はパイプ椅子から立ち上がり、自分の教室へと向かった。



「─────なのでー皆さんよろしくお願いしまーす」


俺の前の席の、ちょっと陽キャっぽいやつの自己紹介が終わり、いよいよ次は俺の番だ。


ちなみに俺の席はよくある窓側の1番後ろでも、クラスで1番可愛い人の席の隣でもない。


2号車の、黒板から見て左側の席で後ろから2番、である。


ハズレとも当たりでもない超普通ーな席である。


さて、次の自己紹介は俺の番だ、よし……


クラスメイト全員の前に立ち、俺は自己紹介を始めた。


「……えー、月宮仁です………………」


──────────沈黙が続いた。


─────────────────────────


30秒程の沈黙の後、教室の誰かがパチパチと手を叩いた。それにつられて、他の人達も拍手をした。


ふっ、これでいいのさ、これで、「あんな変なやつとは関わらないほうがぃー」とみんな思うだろ。


そんなことを思いながら、自分の席に帰っていく仁を、多くの人は「なんだアイツ」という目で見ていたが、1人だけ、不思議そうに仁を見つめていた生徒がいた。


(あの人、なんであんな自己紹介したんだろう……?)


仁の自己紹介に少し疑問を持ちながらも、その生徒は次のクラスメイトの自己紹介を聞いた。



HR終了後、俺は早急に帰るために、渡された教科書などをリュックに入れていた。


よし、今日は誰とも話さずにいられたな。


そして、このクラスには早死する人はいなかった……


仁は自己紹介の時にあった、沈黙の30秒で、クラスメイト全員の残り時間を見た。


その結果、このクラスには若くして亡くなる人はいなかった。


最低でもみんな60歳代まで生きるから、今のところ、俺の影響を受けて死ぬ人はいないな。


よし、荷物まとめたし、帰ろう。


そう思い、俺は席を立とうとしたが、俺の恐れていたことが起きた。


「ねぇ、君、さっきなんであんな自己紹介をしたの?」


「え?」


俺の目の前には、どこかで聞いた時あるような声をしている、女子生徒が立っていた。


少し茶髪っぽいポニテで、やけに高身長の普通に可愛い女子が、俺に話しかけてきた。


マジかよ、もう少しで帰れるってのに、話しかけてくる奴いるのか、まぁ1人くらいいるか……とりあえずここは無視が鉄則だ。大体の人間は話しかけて無視なんてされたらもうその人には話さなくなるだろう、それが普通だ。


「あ、ちょっと!なんで無視するの!?」


俺は女子の質問をガン無視して、昇降口へと向かった。


そもそも普通「いわゆる陽キャ女子」は「いわゆる陰キャ男子」とは関わらないのは相場で決まっているんだ。なのに、なんでこいつは俺に話しかけてくるんだ?自己紹介のことなんて適当に流しとけよ。


「あのー聞こえてないのー?」


教室を出て、廊下を歩いているが、こいつまだ話しかけてくるんだが……


「ついてくんなよ……」


俺はボソッとそう言った。これで終わりだな。無視された上に「ついてくるな」と言われたんだ、ここまでされてまだ話しかけてくる人は流石にいないだろう。


「およ?今なんか喋った?なんて言ったの?」


────いた。


何がおよ?だよ気持ち悪い。てかここまでしてまだついてくるってなに?もしかして俺の事好きなの?



もう靴棚まで来たんですけど、まだいるんだけど。しょうがない、追っ払うためには話すしかない。


「なんでこんなについてくんだよ?」


俺はできるだけ高圧的な態度で話しかけた。


「やっと話してくれた!なんでって、それはまだなんであんな自己紹介をしたのか聞いてないからだよ?」


「あの自己紹介は俺に話しかけんなアピールをするためだ」


それ以上の理由は無い。


「なんでそんなアピールしたの?」


「質問には答えただろ?もう帰らせてくれ」


全く、本当にこいつはどうして俺と関わろうとするんだ?俺、なんかやったか?


「だって気になるんだもん」


「気になる?お前は俺と今初めて会ったよな?そんな俺の事をどうして気になるんだ」


靴棚の前で、俺は目の前にいる名前も知らないクラスメイトを睨みながら言った。


「いや?初めて会ったのは入試の日だよ?」


入試の日?俺がこいつと会った?全く記憶にないが。てか覚えてるわけないだろ。


「私の名前、黒鐘詩音(くろがねしおん)って言うんだけど、覚えてない?面接の時、一緒にいたんだけど?」


黒鐘詩音……面接の時……あぁ、そういえばいたな、名前聞いて思い出した、俺の前にいた優秀そうだった奴か。


いやそれはどうでもいいんだよ!ダメだ、これ以上話すのはやめよう、こいつとの話はキリがない。


「もう俺とは関わらないでくれ、俺は1人でいたいんだ……」


俺はそう言い、黒鐘に背を向け靴を取ろうとした。その時、黒鐘は、俺の胸に深く突き刺さる言葉を言ってきた。


「……でも、それだと君が可哀想だよ」


「可哀想……?」


「うん、私の予知能力はね、『他人にいつ幸せが訪れるか』でね、他のクラスメイトは大体1時間以内に幸せが訪れるのに、君だけ、次に幸せが訪れるのが3ヶ月後だったの」


幸せがいつ訪れるか分かる、か。いい予知能力だねー俺の能力に比べれば。


てか3ヶ月?俺に幸せが訪れない?つまり幸せと感じることは3ヶ月間無いと……嘘だろ?


確かに俺は誰とも関わるつもりが無いから、人と話して幸せを感じることは無いかもしれない。だけどよ?それにしても3ヶ月も幸せを感じないことなんてあるのか?


仁はまだ気づいていなかった。人と関わることが、どれだけ重要なことか。


「そうか……心配してくれてるのはありがたいが余計なお世話だ。これで話すのは最後だ」


「最後に1つ、質問していい?」


黒鐘は人差し指を上げながら頼むように言ってきた。


「なんだよ」


「君の予知能力は、何?」


……………………はぁ、1番聞かれたくない質問だ、思い出すからな、龍己のことを。


「俺の予知能力は『他人がいつ死ぬのか』だ、じゃあな」


俺は逃げるようにして、学校から出ていった。



仁の家にて


23時、仁は自分のベットで横になりながら考えていた。


初日からこれかよ、こんなんじゃ『誰とも関わらない』なんて無理だぞ。いやもう関わってんだけどさ……


明日からは話しかけられても無視しよう。


はぁ、もう寝るか。


俺は明日のことは明日の自分に任せようと、さっさと眠りについた。




「おい、黒鐘、昨日言わなかったか?『最後に1つだけ』って」


学校に来て、教室に入り、自分の席に座る。ただいつも通りで極々当たり前のことをしたいだけのなのに……


俺の目の前には、黒鐘が当たり前のように立っていた。昨日はもう関わるなと散々言ったのに、それでも黒鐘は、俺と話そうとしてくる。


「本当にお前は、めんどくさい奴だな……」


「ふふ、よく言われるよ、だけど、私は不幸な人をほっとくことなんてできないから。どれだけ君が私に関わるなって言っても、君が幸せになるまで関わるつもりだから」


()に、代えてもか?」


「え?」


「冗談だ、気にすんな。お前がそんなに俺に関わりたいならもう好きにしろ。だが、分かっている通り俺はお前と仲良くする気はないからな。その覚悟でいろよ?」


「ふふ、わかった!」


多分もうどれだけ黒鐘に言っても、こいつは関わることをやめないだろう。だったら好きにさせればいい、そして思い知らせてやる、俺と関わろうとすることが、どれだけ無駄なことなのかを!


くくく、我ながら考えたものだな!



さて、黒鐘はいなくなり、HRまではまだ少し時間がある、この時間にすることは1つ、寝てるフリだ。


寝ている人に話しかけてくる奴なんていないだろう。こうすれば誰とも関わらずにいられるぜ!


そのはずだった、だが、俺は思いもしない形で人から話しかけられることになった。



「おい、おい仁!いつまで寝てるんだ!もうHR始まっているぞ!」


んー、うるさいな、今寝てるんだからじゃますんなよ……


「起きろと言っているんだ!!!」


「は、はい!」


やべーーーー普通に寝てたーー何してんだよ俺ー!これじやあ余計に注目されるだけじゃねえか!


「全く、初日から居眠りとは……情けない奴だ」


今俺の目の前で喋っているのは俺のクラス、A組担任の山崎と言う先生で、歳は50代で少しハゲ気味、そして少し昭和っぽい先生である。さすがに暴力とかはしないけどな。


大体怒りっぽい先生は嫌われていることがほとんどだ。この先生もよく怒りそうな雰囲気は出てるし、こりゃガチャ失敗だな、まぁどうでもいいけど。



その後はHRをして、授業をして、飯を食べる、今ここである。


俺は1人でスマホで適当な動画を見ながら昼飯を食べていた。


……黒鐘ってやっぱり陽キャなんだな……


俺の席は後ろから2列目なので1番前の席の黒鐘のことは見ることができる。


その黒鐘は、陽キャ女子4人と机くっ付けて楽しそーにお喋りしながら食べていた。


いやまぁ楽しく喋りながら飯食べるのは別にいいんだが、あんまりうるさいのはやめてほしい、俺はうるさいのは苦手なんだ。



飯食べて、午後の授業して、帰りのHRを終わった、今ここね。


さてさて、今日は黒鐘に捕まらないようにさっさと帰ろ。


「うん、じゃあまたね〜」


やべ、黒鐘友達との会話終わったやん、そしてなぜか俺の席の方に歩いてくる。


「ねぇねぇ仁君はさーなんか部活入るの?」


今度は部活の話か、うーん、部活ねぇぇ。


「入るわけないだろう」


「え?なんで?」


「いやだから、俺は人と関わりたくないから、部活なんて入るわけないだろ」


うん、部活なんて人と関わる原因になるだけだからな、入るわけない。


「ふーん、じゃあ明日私部活動見学に行くんだけど、ちょっと付き合ってくれない?」


「はぁ?なんで俺が?」


「だって、どうせ暇でしょ?」


「いや確かに暇だけどさ、俺が一緒にいく義理はないし行く意味ないし人と絶対関わるから行かねぇよ」


なんで人と関わりたくないって言ってんのに人と関わらせようとしてくるんだこの人。もしかして頭イカれ─────


「じゃあもし一緒に来てくれたらもう絶対に仁君には関わらないって約束するよ?」


……絶対に関わらないか、そうしてくれると助かるが、どうする、部活動見学行くか?だが黒鐘はクラスメイトだ、つまり身近な人ということになる。そんな人と多く関わるのは結構危険だ。だったら明日1度だけ関わる部活の人と関わった方がいいんじゃないか?


うん、明日だけは我慢して、黒鐘に付き合うか……


「分かったよ、だが明日だけだからな?」


「やった!んじゃ明日ね!」


黒鐘はガッツポーズをしながら去っていった。


そして俺は、明日黒鐘となんの興味無い部活動見学に行くことになった。


明日こそ乗り越えれば、1人になれるんだ…………頑張るぞ。

ここまで読んでくれた方ありがとうごさいます

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