14話 予知能力で命を救った
月宮 仁 (つきみやじん)主人公
黒鐘 詩音 (くろがねしおん)クラスメイト
千奈 (ちな) 森澤に告白した
森澤 汰一 (もりさわたいち)同クラ
遥 (はる) 元千奈の親友
自殺をしたら、私は遥に負けたと認める様なものだけど、もうどうでもいい、何もかもが、どうでもいいや。
千奈は階段を駆け上がっており、今3階まで上ったところである。
何故かこんなに全力で階段を上っているのに、不思議と疲れは一切感じ無い。どうしてだろう、これから死ぬから人生全ての力が今ここで使われているのかな。
あっという間に4階に到着、少し廊下を走り屋上へと続く階段に移動した。
普通、生徒が屋上に行くことは禁止されている。
だが、私は知っている、屋上への扉の鍵が、壊れていることを。それは皮肉にも遥が教えてくれた。
垓斗がバカやって鍵を壊したと、いつか聞いた。
ついに、屋上を行ける扉の前まで来た。
この扉を開けて、先にあるフェンスを乗り越えれば……楽になれる。
予想鍵を壊れている扉を開くと、地上よりも風が吹いており、ポツポツと雨が降っている屋上が広がっていた、が、そんな扉の先には──予想不可能な人物が立っていた。
手を後ろで組み、長いポニーテールをユラユラと揺らしながら、優しい眼差しで、まるで私がここに来ることがわかっているかのような雰囲気を出した詩音が佇んでいた。
困惑した、どうしてここに詩音がいるのか。
「詩音ちゃん……どうしてこんなところにっ────!」
黒鐘は、1歩前に踏み出し、千奈のことを思いっきり抱き締めた。
「もう大丈夫、千奈ちゃん、あとは全部私に任せて」
黒鐘は、それこそ、いじめられてた人を安心させるような優しい言い方で千奈に言った。
あんたに何が分かるんだ、と言ってやりたいところだったが、なぜだか、心の底から本気で、そう思ってくれているのだろう、あとは全部私に任せて、そう言われた瞬間、自然と涙が流れた。
涙を流した千奈のことを、黒鐘は、より一層強く抱き締めた。
「辛かったよね、遥や森澤に、あんな酷いことされて、でも安心して、私は千奈ちゃんの味方だから」
「…………っ……しおん……ちゃん……ぅありが……っとう…………」
もはや詩音ちゃんがどうして私が遥に酷いことをされたことを知っているのかなんてどうでもよかった。
今はただ、無心で泣いていた。
昨日のカウントはジャスト0秒、千奈の自殺による死は、未然に防ぐことが出来た。
だが、そんなことは知らない、仁は。
はぁーー、はぉっ、時刻は16時56分、あぁ、間に合わなかった、のか。
現在、冗談抜きで死にかけになりながら、屋上へと続く階段を上っていた。
クソ、クソ、自分が情けない、体力が無くて自殺を防げなかったなんて、俺は本当約立たずのゴミだ────
屋上へ続く扉まで来ると、なぜか扉は空いていて、黒鐘と千奈は雨に打たれながら抱き合っていた。
俺の方を見ている黒鐘は、俺がここまで来たことに気づき、うっすらと笑った。
その後のことを話そう。
まず、結果から言うと、千奈は助かった。
あの後、俺が念の為にこっそり録音していた、ベンチでの千奈と遥の会話を黒鐘が聞き、俺と黒鐘は全ての事実を教師に説明した。
遥が、千奈にした事、精神的に千奈を追い詰め、自殺未遂まで追い込んだこと。
どうやら今回のいじめに対する処罰は重く、遥は退学、森澤は停学ということになった。
まぁ自殺未遂まで追い込んだんだ、当然の結果だろうな。
ちなみになぜ屋上に黒鐘がいたのか、後で教えてもらったが、千奈のことを探している途中、偶然にも千奈が屋上に続く階段を上っていったのを見た人と話すことができ、それを知り、全てを察して屋上にいたという。
つまり、これから千奈は屋上に来て、飛び降り自殺をすると予測し、先回りして屋上で待っていたということだ。
これに関しては黒鐘ナイスだと称賛したい。いつもはバカっぽい黒鐘だが、今回は妙に勘が働いた様だ。
そして現在、あれから3日後の金曜日、俺はいつもと同じように楽器倉庫で飯を食べていた。
そして、俺の隣には俺と一緒に隣で弁当を食べている人がいた。
「いやーそれにしてもこの前は私たち、すっごいことしちゃったねー」
その人物、黒鐘は自分の胸を誇らしげに叩いた。
「そうだな、ホント助けることができてよかった……」
あの後俺と黒鐘は、人の命を助けたということで全校生徒の前で賞賛された。無駄に注目されることになって最悪だった。
「仁〜、仁は人を助けたんだよ?もっと自信持とうよ?」
「いや、そもそも当然のことしたまでだ。千奈の『死ぬまでの時間』が変わったのは俺のせいなんだから……助けるのは当然だろ」
そうだ、元々俺のせいで死ぬかもしれないことになったんだから、助けるのは当たり前、程度は違くても当たり前のことをしただけで褒められ称えられる世の中がおかしい。
「でもさ、時間が変わってなくても遥が千奈ちゃんに酷いことをするのは変わらないんだから、変わって無くても千奈ちゃんは自殺してたんじゃないかな?」
黒鐘はフワフワの卵焼きを口に運びながら言った。
…………そうかもしれないが、元々千奈の寿命は何十年もあったんだ、本当はいじめられても死ぬことは無かったんだろう。
────本来なら、いじめられてそこで何も解決することなく終わりだったんだろう、それを、俺達は助けた?
「俺達は、千奈を助けたのか?」
俺は黒鐘に質問した。
黒鐘はニヤッと笑い、俺の質問に答えた。
「そうだよ、私達は千奈ちゃんを助けた、未来を変えたんだよ、やっと気づいた?」
そう、か。俺は、『龍己を殺した予知能力で、人の命を救った』のか。
初めて、"自分の予知能力に存在する意味があった"と思えた。
生まれて今まで、そして龍己が死んでからは更に、俺は自分の予知能力に対してなんの意味もない邪魔で無駄な存在だと考えていたが。
まさか役に立つ日が来るとはな……
「千奈ちゃん元気かな〜、学校、来れるといいけど」
千奈は今、自殺1歩手前まで行ったこともあり、事件後は学校を休んでカウンセリングやらを受けているらしい。
体調や精神状態は異常なく、来週から行けそうなら学校へ来るそうだ。
「そうだな……」
黒鐘の独り言に、適当に返事をして、俺はスマホを弄りながら、飯を食う。いつも通りのことをした。
────────少しの沈黙の後。黒鐘は不意に言った。
「仁には、好きな人いないの?」
「いないな」
スマホを見ながら仁は適当に返事をした。
「なら私が告ったら付き合う?」
「あーもしかしたらな」
……………………え?今なんて言った?
ほぼ聞き流してたから、適当に返事したけど今、なんて言った?付き合うとか言ったか?
スマホの画面から顔を離し、黒鐘の顔を見ると。
顔を赤らめ、驚いた表情をしていた。
「え、仁、本気?私、じょ、冗談で言ったんだけど……」
やらかした。安易に返事するんじゃなかった。
くだらないスマホゲームをしていたら、言ってはならない返事をしてしまった
「何言ってんだよ!?俺も冗談で言ったんだよ!俺がそんなこと言うと思うか!?」
とりあえず誤魔化せ!
「そ、そうだよね!仁が付き合うなんて、言うわけ、無いよね」
あぁ、そうだ、この力がある限り、俺は付き合う以前に、友達も作ってはいけないんだ、なのに。
どうして悲しそうな表情をする黒鐘のことが気にかかるんだ。
ほっとけよ、こいつは一方的に関わってきてんだ、俺は別に、黒鐘がいなくたって……
「でも実際、仁は私の事どう思ってんの?やっぱりまだ……嫌い?」
黒鐘は緊張した面持ちで、隣に座っている仁の顔を、覗き込む様に見た。
────そんなこと、なんで今更聞いてくんだよ。答えは決まってんだろ、黒鐘の事は────。
「き、嫌い、に、決まってん、だろ」
超ぎこちなく、かっこ悪い言い方で俺は黒鐘のことを嫌いと伝えた。
「ぶっ!ははは!何その喋り方!明らかに動揺してない?」
そんなダサい言い方に黒鐘はぶっ、と唾を飛ばして笑った。
心では嫌いって、思っている?のに。どうして、ちゃんと言えないんだ、まさか。
仁は愕然とした表情をしながら独り言を漏らした。
「俺は、お前のことが、嫌いじゃない、のか?」
「私に聞かれても分かんないよ」
知ってるわ!思ったことが声に出たんだよ!こういうのたまにあるだろ!?
てか、マジで?俺、黒鐘のこと、嫌いじゃないのか?
「黒鐘、聞いてくれ」
俺は真面目なトーンで黒鐘の目を見ながら言った。
それに少し照れる黒鐘は、「な、なに!?」と短く言った。
「どうやら俺はお前のことが嫌いじゃないらしい」
「え、そ、それって、まさか……」
黒鐘が顔を真っ赤にしながら「すぅ」とまで言ったところで俺は答えた。
「普通ということだ」
「え」
仁のまさかの答えに対して、黒鐘は唖然とした。
まさか自分自身でさえ分からなかったが、今まで黒鐘の事は嫌いと思っていたが、それは間違いで俺は黒鐘のことを嫌いとは思っていなかった。
"普通"だったんだ。嫌いでも好きでもない。
「普通って、何それ、つまんないよ」
つまんないってなんだよ、別に面白い回答なんて言おうとしてないわ。
「お前な〜、こんだけ人と関わるのを避けている俺が、こんなに俺に付きまとってくるお前のことを嫌いじゃないと言ったんだぞ、はっきり言って矛盾しているんだ……」
────────今の仁の発言で、2人は気づいた。
仁は、『自分にとって黒鐘は、"特別な存在"だと』
黒鐘は、『仁は自分のことを特別な目で見ていること』
だが、2人は気付いてないフリをする。
もし気付いたことが知られれば、2人の関係は普通とは言えない関係になるから。
仁は、深堀させないように、食べ終わった弁当をしまい、席を立った。
「あ、ちょっと待って!私まだ食べ終わってないよ」
「そうか、すまんな俺にお前が弁当を食べ終えるまで待つ義理は無いからな、俺は帰らせてもらう」
「なんか急に冷たくない?」
「気のせいだろ、俺は最初から冷たい」
後ろから聞こえた、からかうような言い方の「嘘つき」という言葉を無視して、俺は楽器倉庫から出ていった。
バタン、と扉を閉めてから、俺は大きくため息をついた。
あぶねぇー!何言ってんだ俺は、矛盾してるのは黒鐘が特別ってことじゃん、それを黒鐘に知られれば、絶対面倒なことになる。
それに、もし、もしだ。黒鐘が俺のせいで死んだら、俺は…………
なんて、また暗いこと考えても仕方ない。
俺は明日龍己のお母さんに会うことをについて考えながら、ゆっくりと教室に戻って行った。
ここまで読んでいただきありがとうございました!次話も是非お願いします!
…………実はもう少し下にスクロールしてもらうと、星のマークば5つ並んでいるんですよ、そこで読んで頂いた作品を正直に、星1でもいいので評価して頂ければ自分超喜びます笑(小声)




