12話 告白の返事
月宮 仁 (つきみやじん)主人公
黒鐘詩音 (くろがねしおん)クラスメイト
森澤 (もりさわ) クラスメイト。千名に告白された
千名 (ちな)千名の親友。森澤のことが好き
遥 (はる) 千名の親友
校舎から少し離れた、プールが入っている建物の裏で、森澤は千奈の告白の返事をしようとしている。
俺と、なぜかついてきた黒鐘は、建物の陰からそれを見ていた。
ギリギリ声が聞こえる、どうやら今は遥が話してるっぽいな。
俺は遥が何を話しているのか聞くため、少しだけ顔を出した、その時、チラッと見えた黒鐘の顔は、なぜか悲しそうな表情をしていた。
「それで?答えは決まった?」
千奈と遥の前まで来た森澤に対して、千奈の少し前に建っている遥が言った。
遥の質問に対し、森澤は少し間を開けてから答えた。
「すまん、千奈さん、俺はあなたと付き合うことは出来ない」
それを聞いた千奈は、涙を流しそうになったが、無理矢理笑顔を作って森澤に言った。
「そうだよ、ね、ごめんね、いきなり告白なんてして、困っただけだよね──」
それを聞いた森澤は、申し訳無さそうに、ただ黙って立ち尽くしてた。
森澤、お前も気づいたのか、このまま付き合っても、それは本当の恋人とは言えないことに。
ただ、それを黙って見てられない人が二人いた。
一人は、俺の横にいる黒鐘だ。
「千奈ちゃん……森澤の奴ー、千奈ちゃんが悲しむことをっ」
黒鐘は3人の元へと行こうとした。その手を俺は止めた。
「待て黒鐘、あれは2人の問題だ、お前が出ていく場面じゃない」
黒鐘の気持ちは分かる、他人の不幸を見て、ただ黙って見ているだけなのは耐えられないのだろう。
だが、これに関しては、森澤と千奈の問題であり、部外者の黒鐘が話に割り込むのは良くないことだろう。
俺に止められた黒鐘は、「でも……」とだけ言い、どうにかしたいという気持ちを顔に表しながら、3人の方を見た。
「森澤、それが、あんたの答えなのね……」
千奈の隣に立っている遥は、森澤の事を見ながら言った。
「申し訳ないとは思っているよ、ただ、片思いで付き合って、すぐに別れることになるより、今ハッキリと断っておく方がいいと思ったんだ」
「そんなの、付き合い始めてからじゃないと分かんないでしょ!?あんた自分は絶対千奈のこと好きにならないって言えるの!?」
現場の雰囲気は最悪だ。振られた千奈は、ずっと俯いているし、親友の遥は、断った森澤に怒っている。
そして森澤は、何も喋らず、ただ黙って遥の言うことを聞いていた。
そんな空気の中、千奈が口を開いた。
「もういいよ、遥、やっぱり急に告白した私が悪いよ、森澤君は何も悪くない」
また作り笑いをしながら、千奈は遥に言った。
「千奈……ごめんね、元々私があんなこと言ったから……」
あんなこと、千奈に告白を勧めたことだろう。
「いいよ、最終的にするって決めたのは私だから……」
「ほんとごめんな……」
「もう気にしないで、今日あったことは忘れてください」
忘れられるわけないだろう。
千奈と遥は、話が終わったため、プール裏から俺らのいる方へと歩いてきた。
マズイ、見てたことバレたら面倒だ。一旦隠れよう。
「黒鐘、一旦隠れるぞ」
俺はそう言うって、移動しようとしたが、黒鐘は何かを考えている表情でその場に立ち尽くしていた。
「おい、どうした?」
俺の問いかけに対して、やっと黒鐘は我に返ったように返事をした。
「あ、ごめん、ちょっと考え事してた」
「遥と千奈に見つかる、一旦隠れるぞ」
そう言い、俺たちは近くの茂みに隠れた。
2人が通り過ぎる時、茂みに隠れながら黒鐘に聞いた。
「んで、さっきは何を考えていたんだ?」
俺の声が聞こえないほど集中して何かを考えていたぽかったけど、やっぱり千奈の事、考えていたんだろうか。
「うん、私の予知能力は『他人にいつ幸せが訪れるか』じゃん?」
あぁ、そうだな、それがどうしたんだ。
「さっき、森澤が返事する瞬間の千奈ちゃんの時間は、まだ0秒にならない時間だったから、森澤は振るんだって分かったんだけど……」
ふむ、森澤がOKと返事をすれば、絶対千奈には幸せが訪れたことになるからカウントは0になる、だがカウントはまだ0秒にはならなかった。んで?
黒鐘は、俺の目を見ながら、語気を強めて言った。
「返事を聞いた瞬間遥ちゃんの時間が0になったんだよね……」
…………それは、つまり遥は、千奈が振られたことに、喜んだってことか?
「なんだよそれ、遥って千奈と親友じゃないのか?」
「親友だからこそ、だよ、ただの友達の恋愛事情は素直に応援できるけど、親友の恋愛事情は素直に応援できないんだよ」
そういうもんなのか?ただ友達の多い黒鐘が言うならそうなのだろう。
まぁ確かに、仲のいい親友が先に恋人を作れば、もう一方は気持ち的に焦るのだろう、これは恋愛に限ったことでは無いのかもしれない。一応こんな俺でも前までは龍己という親友がいた。
確かに、恋愛とは違うが、例えば昔、ゲームで俺が出来ないことを龍己がやった時に出た感情は、「凄い」や「さすが」という感情では無かった。
出てる感情は、「悔しい」だった。
遥にもそれと一緒の感情があったのだろう。
親友の千奈が、先に恋人を作ろうとしたが、結構振られた、さぞかし嬉しかったのだろうな、しかも、最初に森澤に告白を勧めたのは遥だ、それで嬉しいって……人として終わってんな。
やっぱあぁいう奴は嫌いだわ。そもそも千奈を親友と見てるのも怪しいぞ。
俺は去っていく遥の背中を睨んだ、その時。
横を歩いていた千奈の『残り時間』が、少しの間、”変わった”。
64年程あった残り時間が、24時間27分に、変わったのだ。
だがそれはまたすぐに、元の時間に戻った。
俺は息を呑んだ、そして、ドロドロと甦ってくるあのトラウマ。
また、俺のせいで誰かが死ぬのか?
呼吸が荒くなる、心拍数が上がっていく、俺はただただ焦っていた。
いやでも、今は元に戻っている、時間はまだ64年ある、ならさっきのはなんだったんだ、どうして一瞬だけ変わったんだ……そうだ!
俺はスマホをつけた、時刻は16時29分。これは覚えておいたほうがいいだろう。
そんな俺の横にいる、黒鐘にも、俺と同じ現象が起きたのだろうか、幽霊でも見たような顔をしていた。
「仁、今さ、一瞬だけど、千奈ちゃんのカウントが────」
「消えたんだけど…………」
カウントが消えた?そんなことが起きるのか?てかどういうことだ、カウントが消えるって、予知出来なくなったってことか?
「黒鐘、俺にもおかしなことが起きた、千奈のカウントが一瞬だけ変わった」
2人の予知能力の時間がおかしくなった、明らかに何かが変だ。
「え、仁も変わったの?それって、ヤバいんじゃ──」
「分からねぇよ、変わったのは一瞬だったし、今は普通だ、まさか死ぬなんてことは無いだろ」
若干パニックな故に無意識に口調が強くなった。
「そうだね、変なこと言ってごめん」
「いや、大丈夫だ、それより……」
カウントが無くなったってことは、もしかして、もう千奈には一生幸せが訪れないということだったんじゃないか……
つまり、死ぬまで幸せと感じることは無い。そして、俺のカウントの変化、まさか。
本当に千奈は死ぬのか?
「一瞬だけ変わった残り時間が0になる時までは、警戒した方がいいかもな」
嫌な予感がする。千奈が、死ぬのではないかと。
2人が去ってから、しばらくその場に立ち尽くしていた森澤も、こっちに歩いてきた。
もう隠れる必要もないので、俺は茂みから出た。
てか、黒鐘はこの場にいていいのか、森澤からすればなんでいるんだってなるぞ。
だが、黒鐘はそんなことも考えずに森澤の前に姿を現した。
「うぉ!?黒鐘?なんでここにいんだよ」
そりゃそうなるわ。まじで黒鐘は今回なんの関わりもないからな、キレられてもおかしくないぞ。
「いやーごめんごめん、偶然仁と森澤が話しているのが見えてさ、気になって着いてきちゃった」
黒鐘の言い分を聞くと、森澤は呆れた様子で俺の事を見た。
なんだよ、俺が悪いのか?
「そうか……じゃあさっきのは、聞いてたのか」
「うん、でも気にしないで、あれは森澤の答えなんだから、私は何も言わない」
さっきは怒る気満々だったくせに。
「あぁ、そもそも黒鐘に何か言われる義理は無いからな」
「あはは、確かにそうだねー」
「まぁ仁、ということで俺はやっぱ千奈さんと付き合うことはやめたよ、よく考えたら、俺は千奈のこと好きじゃないんだから、付き合いことは間違いだと思ったからな」
俺は「そうだな」とだけ言った。
少し気まずい空気が流れてから、森澤は「んじゃ、俺は帰るわ」と言い、森澤は帰っていった。
森澤の姿が見えなくなったところで、黒鐘は口を開いた。
「仁、千奈ちゃんのことだけど……」
俺と黒鐘はゆっくりと歩きながら校門へと向かった。
「私もさ、予知能力の時間がおかしくなるなんてこと初めて起きたから、少し混乱したけど」
プール裏から校門に向かう途中、何となくグラウンドを見ると、野球部の1年生がテキパキと練習を始める準備をしていた。
「私も思う、明日が終わるまでは、千奈ちゃんの事を守るべきだと」
「…………あぁ、そうだな、明日が終わるまでは何が起きるか分からない、もしかしたら、もあるかもしれないからな」
校門の前に着くと、俺と黒鐘は立ち止まった。
「んじゃ、俺は帰るよ」
「分かった、私は部活あるから、また明日」
「あぁ、明日は、最悪の事態なんて起こさないようにするぞ」
もし千奈が死んだら、俺は精神的に死ぬだろう。
そんなことになるのはごめんだ。なんとしてでもあのカウントが0になる、明日の16時56分までは、千奈の近くにいた方がいい。
そう心に決め、俺は自宅へと帰った。
ここまで読んでいただきありがとうございました!次話も是非お願いします!
…………実はもう少し下にスクロールしてもらうと、星のマークば5つ並んでいるんですよ、そこで読んで頂いた作品を正直に、星1でもいいので評価して頂ければ自分超喜びます笑(小声)




