9話 白石邸にて
月宮 仁 (つきみやじん)主人公
黒鐘詩音 (くろがねしおん)クラスメイト
白石碧 (しらいしあお)黒鐘の友達、お金持ちお嬢様
仁が予知能力について、白石から話を聞いた夜。
白石の家にて。
白石の家は、俗に言う高級住宅街にある一軒家で、家は3階建て、8LDKの豪邸だ。
建物は一流の建築士に委託して建てられており、テレビの取材を何度か受けるほど、家は豪華で目を引く。
そんな建築費2億円超えの豪邸の一室で、白石はコーヒーを飲みながら読書をしていた。
透明人間が主人公の学園モノ作品、キャラの魅力は表現出来てるけどストーリーが無理矢理なところがあってダメね。
白石は趣味の、小説を読み、その評価をつけることをしていた。
役者の仕事をするようになってから、小説や漫画などを読んで、登場人物の性格や、心境などを考えて、少しでも役を上手くできるようになるために始めたのだが、いつしか読んだ作品を評価するというものに変わっていた。
そんな趣味をしていると、コンコン、と扉からノックが聞こえた。
このノック音は、お父様ね。
「碧、ちょっといいか?」
滑舌のいい、よく通る声が一部防音になっている部屋の外から聞こえてきた。
こんな時間になんの用だろう。時刻は9時過ぎ、普段ならばわざわざ私のいる3階には上がってこない時間帯だ。
「はい、大丈夫ですよ」
私がそう返事をすると、父はゆっくりと部屋へと入ってきた。
父は、知っての通り国会議員をやっている。議員の中でも人気がある。その理由はやはりこの若さだろう。
50代、60代が多い日本の国会議員の中でも、父はまだ40代前半と、とても若い。それでも父はとても頭が良く、様々な政策を成功させてきている。
「いやーこんな時間に悪いね、少し碧と話がしたくてね」
普段、父と話すことはあまりない。なんせ父は忙しい。私も女優の稽古や塾などもあるため、なかなか話す時間は無い。
「はい、お話とはなんでしょう?」
「今日は友達と遊びに行ったんだって?」
……父にはその事を言っていなかったけど、母から聞いたのだろう。
「はい、中学生の時のお友達と一緒に」
「どうだった?楽しかったか?」
「はい、久しぶりに遊ぶことができて、楽しかったです」
……質問の意図がよく分からない、確かに友達と遊ぶことは久しぶりだったけど、こんなことわざわざ聞いてくる必要があるのだろうか……
「その友達は黒鐘さんかい?」
「えぇ、そうですけど……」
「他には誰もいなかったかい?もしいなかったのならいいのだけど」
……?何?その質問。まるで試されているようだ。父は私が月宮と会っていたことも知っている上で、今の質問をしたかのような感じがする。
でも、ここでは嘘をつこう。ここで月宮と会っていると言うと変な疑いを受けるかもしれない。
私は得意の演技力を使って、なんの違和感もなく嘘をついた。
「はい、詩音さん1人と遊びました」
完璧な口調、なんの違和感もない態度、傍から見れば、嘘をついているとは微塵も思わないはずだが。
父は、やはり私が月宮と会っていたことを知っている。
「なるほど、碧、今嘘をついたね?」
「え?嘘?なんのことでしょうか?」
どうして月宮と会ったことを知っているのだろう、父は今日はずっと仕事だったはずなのに。
「ふふ、碧、私は基本娘のしたいことを縛ることなんてしない。だから碧はしたいことを自由にしなさい。そして忘れないで欲しい。私は碧の味方だと」
…………
私は何も答えられず、ただ父親を前に立ち尽くしていた。
「すまないね、急に変な事を言って、じゃあおやすみ」
そう言って、父はゆっくりと扉を閉めた。
扉が閉まった後、私はゆっくりと自分の机へと戻った。
冷めたコーヒーを全部グイッと飲んで、考えた。
さっきの父の言ったことを考察するに、父は、私が月宮と会ったことだけではなく、"予知能力についての情報を見た"ことも知っている。
それを知っている上で父は言ったのだ、『碧はしたいことを自由にしなさい』と。つまり予知能力について調べることも、何かすることも、していいと。
やっぱりバレてたか。でも、面倒なことにならなくて良かった。父が何をしたいのかは分からないけど、予知能力について調べるに対して何も言わないのなら、私は遠慮なく調べるつもりだ。
詩音ちゃんのために。決して月宮のためでは無い。
なんか小説読む気なくなっちゃったし、まだ早いけど寝ようかな。
白石は寝る前にトイレに行ってから、そのついでに3階にある冷蔵庫から天然水をコップ1杯分入れている途中。
別の部屋から私の"兄"が出てきた。
ここで説明しておくと、白石邸は先程も言った通り3階建てで、1階リビングやキッチンなどに加え客人を迎え入れるスペースなどがあり、2階は両親の寝室や書斎、3階には兄妹の部屋がある。
「あ、お兄様」
私の兄、『白石真』現在はSラン大学生2年生で、頭は凄くいい。見た目は私と同じ白髪だが、私より少し色が暗い。身長は185cm、顔はイケメンな方なのだろう、だが私は兄が嫌いだ。
まず、大分金遣いが荒く、よく女に何十万もの金を使っているそうだ。親からのお小遣いをなんという使い方をしてるんだ……
そして、この兄のことを嫌いになる1番の理由が、変態であることだ。
よくバレないようにしながらエッチなお店に行くだとか。本当に気色悪い。
「やぁ碧、ここで会うなんて奇遇だね」
……普段、今私のいる小さめのリビングで、この時間に兄と会うことはないので、奇遇ということは間違いではないが、なんか言い方が気になる。
「そうですか、では私はもう寝るので」
私はできるだけ暗い声で兄に言った。
「あぁ、碧もう寝るんだ?なんか珍しいね?」
珍しいとかなんでそう思うのだろうか、私がいつも何時に寝ているかなんて知らないはずなのに。
私は兄に小さく頭を下げてから自室に向かおうとしたが、
「もう、碧は本当に僕には冷たいんだから」
「きゃ!」
変態の兄はいきなり後ろから抱きついてきた。
私はそんな兄の腕を振り払いながら言った。
「急に抱きついて来ないでください、びっくりします」
隠す気ゼロで嫌いな人を見る目で兄を見た。
「なら急にじゃなかったらいいの?」
「そういうわけで言ったのではありません!」
「ははは、冗談だよごめんごめん、でも本当に碧は可愛いなぁ自慢の妹だよ」
本当にやめてもらっていいですか?きしょすぎる。どうして私の兄はこんなに私のことが好きなのだろう。女ならいっぱいいるくせに。
「ごめんなさい、もう寝ますので」
私はそう言い、逃げるように兄から逃げた。
自室に入り、扉の鍵を閉めた。
はぁ、早くどっかに行ってくれないかな……いつまでもこの家にいないで、一人暮らしでもしてもらいたい。
……こんなに嫌いな兄だが、それでも私は兄には敬語を使っている。それは子供の時からそうだったからだ。
だから本当の私、素の私を見せたのは今のところ月宮だけしかいない。
ベットに入り、目を瞑った。
兄のことは置いといて、父が予知能力について調べることを許すと言うならば、明日から私は予知能力についてできる限り調べるつもりだ。
そこで何か重要な情報でも分かれば、詩音ちゃんの役にたてるだけでなく、私自身の謎も解ける。
そう、なぜ私には"予知能力が無いのか"が。
そんなことを考えながら白石はゆっくりと眠りについた。
碧の兄の、白石真の予知能力は、『他人がいつ嘘をつくか』が分かる能力だ。
使い方によっては、この能力は最強だ。例えばギャンブルにおいて、他人がいつ嘘をつくか分かっていれば、ブラフは真には通用しない。
と言っても真はギャンブルなどをしていないので、本当に強いプロギャンブラーなら、ブラフを使わずして真に勝つかもしれない。それでもやはりギャンブルにおいては真の能力は強いだろう。
それ故に真は知り合いや友達には自分の予知能力を偽っている。本当の予知能力を知っているのは家族だけだ。
そんな真は、碧とは違い予知能力については何も考えていない。
普通の人と同じで、予知能力を当たり前のものと考えている。それはそれで別にいいのだが、真は妹である碧のことが好きなため、碧がしようとしている、予知能力について調べることを知れば、恐らく何かしらの行動はするだろう。
その行動が、余計な行動になるか、それとも役立つことになるかは分からないが。
ここまで読んでくれ皆さん、ありがとうございました!次話は是非お願いします!
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