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第1話 軍人令嬢エレシュキガル

久しぶりにざまぁものを書こうと思います。よろしくお願いします。

 12歳の頃、私エレシュキガル・レイルロードは軍人となった。

 父にはかなり反対されたが、それでも押し切って軍に入った。

 

 すべては私の母の仇のために、戦って、戦って、自分であの魔王の首を取る。


 そんな熱い復讐心を持って、私は鍛錬に励んだ。


 子どもだからって、戦場に出してもらえない――そんなことがないよう、私の手で母の仇を取れるよう、必至に訓練に取り組んだ。


 そして、1年後の13歳の時、私は初めて戦場に出た。

 私が行った場所は魔王軍と争っている最前線。


 そこは想像以上にきつく、敵味方関係なく死体がゴロゴロ。

 そんな現場を初めて目にした時は慣れず、思わず吐いてしまった。


 だが、ここを乗り越えなくてはいけない。

 母の命を奪ったあの魔王を殺すまで、私は戦場で生きないといけない。


 だから、戦った。

 自分ができる魔法、剣術、武術。

 すべてを駆使して、敵を倒していく。

 

 だが、仲間たちは死んでいった。


 短い間だったが、苦楽を共にした友人が死んでいくのは辛かった。

 仲間の中には年がかなり離れた方もいたが、彼らはみんな私をよくしてくれた。戦術や戦場で生きる上で大切なことなど色んなことを教えてくれた。

 

 だから、その中の誰かが死んでいくたびに、私の心は削れていった。悲しかったし、悔しかった。


 だけど、彼といた時はまだよかったのかもしれない。

 まだ、人間でいれたのかもしれない。


 軍には大多数が大人で、私のような子どもはほぼいなかった。

 しかし、0ではなく、私を含め10代前半の子は何人かいた。


 私はその中のある子と親しくなった。

 その子の名前はルイ。私と同じぐらいの年の少年だった。

 彼もまた私と同じ軍人。

 ともに戦う小さな戦士だった。


 出会った当初はこちらが煩わしいと思うほど、彼が私にしつこくつきまとってきていた。

 だが、彼も彼なりに戦いに真剣であることを知って、そして、一緒に過ごしていくうちに、私はいつの間にか彼が友人として認めるようになっていた。


 半年経った頃には『2人なら魔王を倒せるのでは?』という調子の乗ったことも考えるようになっていた。

 だから……だからなのだろう。

 

 「あ゛ぁ――――!!」


 だから、あの時、全てが狂ったのだろう。

 戦友だったルイ(あの子)が死んで、私は心を失くした。


 何も感じなくなった。

 楽しさも、嬉しさも、悲しさも、悔しさも。

 

 だけど、例外はあった。


 戦うことが楽しくなっていった。

 ギリギリの戦いが楽しかった。

 敵の悲鳴を聞くのが楽しかった。

 痛みが楽しかった。


 「アハハ!」


 気づけば、戦っている最中に笑っていた。

 戦場でしか笑えなくなっていた。


 戦った後の自分の手は敵の血まみれ。

 赤く染まった母譲りの銀髪。

 鼻が曲がりそうな戦場のきつい臭い。


 だが、それすらも愛おしい。

 私はそんな戦場をこよなく愛する戦闘狂になっていた。


 そうして、勝ち、勝ち、勝ち。

 何度も勝利を収めていくうちに、私は『勝利の銀魔女』と呼ばれるようになった。


 きっとお母様の『勝利の女神』になぞってつけられたものだろうが、随分と可愛いらしい。

 私には似合わないな。


 でも、この調子なら、前線を押し上げ、魔王城へ乗り込むことも可能かもしれない。みんなの士気も高まってることだし。

 だから、もっと戦って、もっと勝てば。

 が、しかし――――。


 「学園に行きなさい」


 14歳になった頃、お父様からそんな手紙が来た。

 当然私はNOという返事を書こうとしたが、上官からも勧められた。

 はて? 

 私が邪魔になったのだろうか? 

 と尋ねると、上官は横に首を振った。


 「そういうわけじゃないんだ。君はとても活躍してくれている。こうして、前線を保てるのは君のおかげだよ」

 「なら……」

 「でも、君はもっと自分の心の声を聞くべきだ」

 「……私は戦いたい。戦って、戦って、戦って、勝ちたい。それは小官の心の声ではないでしょうか?」

 「そうだね、それも1つだとは思うよ。でも、それ以外にも君には心の声はあると思うんだ」


 そんなものはない。ないはずだ。 


 「それを学園で探しておいで」

 

 そう思いながらも、上官に押し切られ。

 私は戦場を去り、学園に入学した。




 ★★★★★★★ 



 

 しかし、学園生活は上手くいかなかった。

 入学後、一時して嫌がらせが始まった。


 私は普通に過ごしていたつもりだったのだが、他の人からすれば良くなかったのかもしれない。

 彼らの地雷を踏んでしまったのかもしれない。


 突然水をかけられたり、酷い言葉をなぜか言われたり、物を隠されたり、色んな人から色んなことをされた。

 しかも、それらは全部人目のつかないところでされる。

 

 いつか読んだ小説の主人公が受けていた、いじめというやつなのだろう。

 

 だけど、どうでもよかった。


 私の心は戦場を求めている――これは学園生活を送って確信したこと。

 ここでいい成績を残して、魔法技術も上げて、一刻も早く戦場へ戻る。

 だから、彼らが何をしてこようと、私はどうとも思わない。


 そうして、学園生活38日目の午前の授業終わり。


 「エレシュキガル・レイルロード! お前との婚約を破棄する!」


 食堂に行くと、突然ある男子学生にそんなことを言われた。


 だが、正直、彼の名前がどうも思い出せない。

 どこかでは会ったことがあるはず、はずなんだが……。

 名前は確か……なんとかマンだった気がする。


 キーマン、アッカーマン、アーキマン……いや、サイモン?


 いや、サイモンはモンだから違う。

 間違えたら失礼だし、聞いてみようか。


 「あの……あなたはどなたですか?」

 「はぁ? 俺の名前、忘れたのかよ。お前の婚約者だったノーマンだ。ま、覚えなくてももういいぞ。今日でお前と俺の縁が切れるんだからな。せいせいするよ」


 うーん、そうなのかな?

 この人と関わった覚えが毛頭ないのだけれど、縁が切れてせいせいするのか……?

 だが、そんなことを言うのもめんどくさいので、私は「はい」とだけ返事。


 男子学生の近くには、赤髪縦ロールのかわいらしいお嬢さんがいた。

 彼女見たことがあるけど……ああ、いつも酷い言葉を言ってきていた人か。

 なんという名前だったか……確か彼女はシャーロットだったような。


 そのシャーロットさんはノーマンの方を見ている。そのまなざしはとても輝いていた。

 この2人はカップルか何かなのだろうか?


 「エレシュキガル、俺にはな、愛する人ができたんだ」


 やっぱりカップルか。


 「無愛想なお前より、スカーレットの方がずっと愛らしい」


 あ、スカーレットだったか。間違えた。


 「よって、お前との婚約を破棄する!」

 「了解しました」

 「えっ?」

 「え?」


 私はいつものように返事をすると、ノーマンは目を見開く。

 なぜ、驚くの?

 私はただ返事をしただけなのに。

 もしかして、変な返事でもしてしまったかな?


 「だから、その……私はその婚約破棄を了解しました」


 と言うと、なんとかマンはふんと鼻を鳴らす。


 「まあいい。お前の調子の乗った態度は許してやろう。どうせ調子にのっても、俺に捨てられ友人もいないお前は、誰にも愛されないだろうからな! さっさとされ、無愛想女!」

 「そうよ、魔女はどっかいきなさい」

 「了解しました。失礼します」


 そう言われたので、なんとかマンに一礼をし、私はさっさと彼から離れる。


 …………あ。


 今、私、婚約破棄されたのか。

 しかも私の婚約者、他の女子とできていたってことは、私は浮気されていたのか。

 はぁ、そうなのか……婚約破棄されたのか。


 ――――ま、どうでもいいか。


 正直、自分が婚約していたことなんて忘れてたし。

 あの男子が浮気しようと心底どうでもいいし。

 婚約がぱぁーになっても、お父様が慌てるだけだし。


 それに。

 なんとかマンが言っていたように、こんな無愛想な人間()、誰も好きにならない。

 好きになるとしたら、きっと戦場を知る人間だけでしょう。


 だから、私は軍人として生きていく。


 ですから、お父様。

 どうか私を早く戦場に戻してくださいませ。

 私にどこかに嫁いでほしいなんて叶わない願いは捨てくださいませ。


 と何度もお父様に手紙を送るが、返事はいつもNO。

 理由はまだ魔法技術を学園で磨く必要があるから、というもの。

 どうせ私を戦場に送りたくなくって、そんな理由をあげているのでしょうけど。


 はー。

 知らない人と話してたら、さらにお腹が空いたわ。

 よし、いっぱいご飯を食べよう。


 お腹が空いては戦はできぬというし、今日はからあげ定食とハンバーグ定食のWでいこうか。

 そうして、お盆を取り、私は1人食堂の列に並んだ。

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