3.御伽噺に過ぎない【悪魔】の存在。
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↑無言の土下寝。
ちなみに、ここまでで一区切り。
――一方その頃、理事長室。
「ふむ……」
王都立アルドロ魔法学園理事長、アグリッド・ウィンドスフィア。
白く長い髭を蓄えた齢八十の彼は静かに席を立ち、本日転入生を迎えた教室がある方向を見た。孫娘のセシルから話を聞き、アルス・マクスウェル青年の入学を了承。そして彼女と同じ第二学年のクラスへの転入を認めたが、実に悩ましい問題でもあった。
アルスは、素性もにわかに信じがたい存在だ。
セシルの古代文献への造詣がいかに深いとはいえど、一から百まで、すべてを呑み込むというのは無理がある。それでも願いを叶えたのは、他ならぬ孫娘の頼みだから。
身内贔屓だと、指摘されたら言い返せなかった。
それでも――。
「やはり、なにか引っかかる……」
――もう一つだけ。
アグリッドには、彼を招き入れた理由があった。
それは遠い日の記憶。それこそ曖昧な伝承、あるいは御伽噺で語られるようなそれだった。しかし彼の直感は無関係ではないと、そう語っているのだ。
「……まさか、な。あれは子供騙しに過ぎない」
かつて、あの青年と同じ名の【悪魔】がいたという。
その悪魔には魔法の一切が通用せず、何人たりとも触れることが禁じられていた。ひとたび触れれば、その者の魔法の才を破壊し、未来を奪うのだという。
それ故に、その悪魔は人々に疎まれ封印されるに至った。
「馬鹿げている。子供が夜に出歩かないよう言い聞かせるための、根拠のない昔話に過ぎない」
魔法技術を中心に栄えるこの世界では、この話を聞かせて子供を教育していた。そのためだけに作り出された架空の存在。それが、悪魔の正体だとされていた。
人類最古の御伽噺。
そこに登場する、云わば伝説のようなもの。
「儂の気にし過ぎだろうか」
確定情報もない。
何より、あの青年を見ても敵意など微塵もなかった。
むしろ笑顔を絶やさず、とても好意的に映りさえしたのだ。
「だが、万に一つということもある……」
それでも、探らなければならない。
可能性を放置すれば、手遅れになるかもしれない。
アグリッドはそう考え、孫娘が読んだという文献に目を通すのだった。
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