表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編大作選

C級映画の主人公

作者: 織賀光希

 オーディションだ。聞いたことのない監督の映画。演技はしたことがない。

 カメラも苦手だ。でも、映画好き。そして、微量の目立ちたい気持ちがある。


 このオーディションで出演者の、すべての配役が決まるらしい。まだ、台本もまったくないようだ。

 オーディションの演技で配役を決め、その後に台本を書くみたいだ。


 どこかの役には、入りたいものだ。この映画に、ギャラは全然ない。こういうものは、お金じゃないから。

 経験だから。タダで演技をしても、得るものの価値は、すごいものがある。


 素人のみのオーディションだが、みんな美男美女ばかりだ。僕なんて、地味で暗くて、まわりに全然馴染んでない。

「はい、監督の佐々木です。まあね、これは単館上映のね。C級映画なのでね。気楽にやってください」


 緊張体質。細めノッポ。運動神経行方不明。ノミの心臓。ノミサイズなら見合っているボイス。数多の恐怖症。

 恥さらしにならないように、頑張ろう。短所はたくさんあるけど、それは同時に長所になる。自分らしく、ありのままやるしかない。


「はい。では、四人一組で、適当に喋ってください。その会話で決めますので」

 一番苦手だ。喋ることが一番苦手。セリフを覚えることも、同じくらい苦手だ。もう、苦手の同率一位が、100個くらいある。対人系は、ほぼ苦手だ。


 誰も、下を向いていない。僕だけ、下のフローリングの模様が、脳裏に焼き付いている。

 これは、アドリブか。変なことを言ってしまう癖がある。でも、やるしかない。空気が重くならなければいい。


 一流映画の主人公じゃない。一流映画の主人公じゃない。一流映画の主人公じゃない。そう、心で繰り返す。

 ビカビカに輝きたくはない。ほわっとでいい。こんな僕だから。



「合格は君ね」

 佐々木監督の人差し指は、僕を指していた。覚悟を決めた。人一倍努力をして、小さく輝いてゆくと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] もうちょっと読みたかったー! 文章力、めちゃくちゃあると思いました。 とても読みやすく、すーっと読めました。 だからこそ。尚更。 もうちょっと読みたかったー(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ