第3話「魔族だけど天使降臨」
まっすぐこちらに突っ込んできた魔族の女の子、その子は片思いの相手であるアキちゃんにクリソツであった。
しかも有翼種族であるがゆえに羽根が生えている、そういう種族だから当然ではあるが生えている。
アキちゃんは人間だから羽根は生えてない、でもアキちゃんにクリソツなこの子には生えている!
うん、天使かな?
天使だな!
天使が降臨された!!
(あぁ、いいぜ! アキちゃんは天使だった説が証明されてしまった! それにしても美しい! 当たり前じゃんアキちゃんにそっくりなんだぜ? しかも天使の羽根……はぁ、もしかして僕は天に召されたのかな? 天使アキちゃんがいるならそれもいいか。魔族だけど……そう、魔族! 魔族のおかげで尻尾もある。魔族ありがとうーーーー!!!! 尻尾があるおかげでお尻のあたりの服が持ち上がってるのがポイント高いよね! かわいいよね! あぁ、アキちゃんの尻尾触りたい……HEY! AKI-CHAN TAIL SOFT TOUCH OK?)
そんな心の声に追放神がツッコみをいれる。
『いやキミさすがにキモいよ? ドン引きよ? ドンマイケルよ?』
「唐突に古くさい親父ギャグ脳内にかまさないでくれます?」
『ところでキミ、魔族の子を放置してていいのかい? せっかくサポートガチャでゲッツ! した子なのに』
「あぁ、やっぱりガチャのおかげなのか……」
改めてアキちゃんにクリソツな魔族の子を見る。
うん、こんな可愛い子、というかアキちゃんにそっくりなんだから当然なんだけど、というか天使アキちゃんだけど、こんな子が仲間になってくれるなんて人生勝ち組だなこれ!ガーッハッハ!
しかし、この子に入れ込んでしまうと本物のアキちゃんへの想いが薄れてしまわないかな?
ちょっと心配になるなーでも、魔族でも他の男にこんな天使アキちゃん渡したくないし……うん、これはもうアキちゃんもこの子も僕が嫁に迎えるしか!
あぁ、でもそんな事したらどっちが正妻なの!?側室なの!?って2人が揉めちゃう!2人のアキちゃんが揉めちゃう!!僕の正妻の座を巡って揉めちゃう!!どうしたらいいの!?
そんな悩みを抱いていると脳内に追放神の呆れた声が届く。
『おい、さすがにドン引きだぞ……付き合ってもないのに二股がなぜか受け入れられてその後の心配とかキメーぞ? というか、2人のうちの一方は脈があるなし以前に今後再会できるのか会話すらできるのか怪しいのによ?』
「ちょっと!! いきなり現実を突きつけないで!! 少しは夢に浸らせて!!」
『キミのは夢じゃなくてただの気持ち悪いDTの妄想だ』
「はっきりと言わないで!!」
『現実をちゃんとわからせないとキミの将来のためにならんやろ? それよりさっさと声かけんと、ガチャで引き当てた仲間とはいえ逃げられてまうぞ?』
追放神にそう言われて慌てて衣服を整える。
「それはまずい! 天使アキちゃんを逃してなるものか!! まずは最初の一言が大事! アキちゃん……いや、待つんだ僕! この世に愛するアキちゃんは1人だけ! そうだ! 愛を見失うな! ではあの子はアキちゃんじゃないなら一体……? そうか疑似アキちゃんだ! 略してギアちゃん!!」
『いや、何勝手に相手の名前作ってるんだよキモいわこのDT……というかマジで話先に進めて? ほんと頼むから』
「あ、そうっすね……なんかすみません」
なんで謝ってるのかわからないが、とにかく追放神に謝るとアキちゃんにそっくりな魔族の女の子ギアちゃんのほうを向く。
「えっと……そうか君に怪我がなくて良かったよギアちゃん」
思わず心の中で勝手につけた名前を口走ってしまった。
そして当然ながら彼女はそんな名前ではない。
なので眉をひそめられる。
「誰ですかそれ?」
「え? あぁ、気にしないで? こっちの話だから、ははは!」
不審に思われたかな?と思って慌てて手を振ってごまかす。
うん、落ち着け僕!今はこの子がどうして突っ込んできたかを聞き出すんだ!
ガチャで引き当てたからやってきたとかじゃない気がする。
「ところで前も見ずに物凄いスピードで走ってきたけどどうしたの? えらく慌ててたね? 何かに追いかけられてるの? こんなに可愛いんだもん! そりゃ追いかけられるよね? くっそ許せねーな! こんなにも可愛い顔を恐怖に染め上げるなんて悪魔の所業だ!! 天罰が下るぞ! あ、安心して! 僕は君にそんな表情絶対にさせないから! 君をいつも絶対に笑顔にするからね! あ、話が脱線したね? ごめんごめん! でも君が可愛すぎるからいけないんだからね? もう君の可愛さはそこら辺で客引きしてる女給なんか目じゃないよ? 有名な劇場の女優よりも君のほうが何倍も魅力的だよ? ほんとだよ? 今から酒場に行って明日の朝まで君の素晴らしさについて語れる自信はあるさ! あ、またまた脱線しちゃったね? ごめんね? でも仕方ないんだ、君があまりに可愛いから……うん、また堂々巡りだね? 話を戻そう、何かに追われてるの? だとしたら大変だ! どんな変態に追われてるの? こんな可愛い子を追いかけ回すなんてとんだ変質者だな! 許せねー! とっ捕まえて公安に突き出してやる! 君の瞳を恐怖に染めあげる輩はみんなギルティーさ! でも可愛すぎる君の魅力もまた僕にとってはギルティーさ! そのギルティー、僕に償ってくれないか? 安心して僕が君を一生守ってあげるからね! あ、僕はハルって言うんだ、よろしく! で、天使のような君はなんて名前なのギアちゃん?」
そこまで言い終えて冷や汗がでた。
しまったーーーー!!!
ギアちゃんが魅力的すぎてつい途切れる事なくマシンガトークをブチかましてしまった!!
さすがにこれはドン引きされたかな?やばいやばい!
でも仕方ないよね?だってギアちゃんが天使なんだもん……
『いや、さすがにドン引き通り越したその先の領域やわ! いくらサポートガチャでゲッツ! したとはいえ、これはもう無理やろ……引くわーマジ引くわー』
追放神に言われて、思わず頭を抱える。
やっちまったーーー!!!
くそ!これ完全にギアちゃんに引かれた?
もう仲間になってもらえない!?
い、嫌だーーー!!!
アキちゃんじゃないけど天使アキちゃんと仲間になれないなんて嫌だーーーー!!!
思わず悶えそうになると、ギアちゃんが引き攣った笑顔で口を開いた。
「えっと……だから誰ですかそれ?」
あ、口をきいてくれた!
うれしい!天はまだ僕を見放していない!
だってギアちゃんが僕に口をきいてくれている!!
あぁ、神よ!ありがとう!!
『いや、どの神も何も手助けしてないからな? つーかそういう感謝の弁はまずワイにしろよ?』
あ、はい、ありがとうございます。
でも今は割り込んでこないでください追放神さん。
「あ、あはは……ほんと気にしないで? マジでこっちの話だからね? なんかごめんね?」
「は、はぁ……? そうですか」
ギアちゃんは不審な人物を見る目でこちらを見てくる。
く!自分で撒いた種とはいえ、その目で見られるのが辛い!辛すぎる!
でも負けない……ギアちゃんと恋人繋ぎで手をつないで家に帰るまでは!!
「あ、ほんと怪しい者じゃないからね? というか困ってることがあるならマジで手助けするから!」
キリっとした顔を作って誠実さが伝わるよう努力してそう言うと、ようやくギアちゃんが警戒を解いてくれた。
「んー、あなたを信じていいのか、巻き込んでいいのかわかりませんけど……でも……んー」
そう言ってギアちゃんは可愛らしく両手で頭をグリグリさせながら悩む。
やべぇ、何あの可愛らしいポーズ、天使かよ?あ、天使だったわ羽根あるし、魔族だけど……
うん、なんか鼻血でそう。
「んーほんとに助けてくれます?」
悩んだ末にギアちゃんは首を傾げながら聞いてきた。
あぁ、何その愛らしい仕草、もうダメ、可愛すぎ、抱きたい。
「もちのろんです! むしろギアちゃんを助けないなんて末代までの恥だ!!」
そう言ってサムズアップしてみせた。
しかしギアちゃんには再び不審な目を向けられる。
「だから誰ですかそれ?」
「あ、あははは……ところでほんとに君の名前教えて! お願いします! ガチで! あ、僕はハルっていいます! お願いします!!」
そう言ってまるで交際を申し込むように頭を下げて手を差し出す。
そんな自分の態度にギアちゃんはたじろいで一歩下がる。
あ、これドン引きされてる?
また僕やらかしちゃった?
しかし、ギアちゃんは差し出された手を見てあわあわと慌て出すと。
「ハル……さん、えっと名前はさっき聞きましたからわかってます」
そう言ってギアちゃんは顔を真っ赤にさせながらゆっくりと手を伸ばして、自分が差し出した手を握ってくれた。
「……っ!!」
「あ、あの……わたしはフリューっていいます。ちゃんと名乗りましたから、もう変な名前で呼ばないでくださいね?」
照れ隠しなのか、フリューと名乗った天使アキちゃんは握手をしながらも口を尖らせて真っ赤な顔を背けている。
その仕草すべてが愛らしい。
何より、ちゃんと握手を……手を握ってくれた!
もう、これはOK!ってことでしょ!
「あ、あぁ!! もちろんだともフリューちゃん!! 告白に答えてくれてありがとう!! 好きだーーーー!!! 結婚しよーーー!!」
「へ!? こ、こくはく!? けっこん!?」
顔をあげて叫ぶとフリューがビックリした顔でこちらを見るが、気にしない。
もう動き出した情熱は誰にも止められないぜ!!
そのままフリューを引き寄せて抱きしめる。
あぁ、これが女の子の体温……
しかし……
「い、いやーーーーー!!!!!」
思いっきりビンタされた。
「ゲフ! どうして?」
一方その頃……
「おい、いたか?」
「いや、こっちにはいねー」
「くそ! 一体どこに逃げやがったあの羽根女!」
町中を走り回って誰かを探す魔族3人組がいた。
彼らは苛々しながらも建物と建物の隙間や路地裏、店舗の中など虱潰しに覗いていく。
そんな時だった。
遠くから女性の悲鳴が聞こえた。
その声に3人とも反応する。
「おい、今の……」
「あぁ、あの声は間違いねー」
「見つけたぜフリュー……逃げられると思うなよ?」
3人の魔族達は狡猾な笑みを浮かべる。
すぐそこに危機が迫っていた。
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