第10話「好感度がさらに致命的です」
フリューと魔族の3人が何やら天の雫 (レプリカ)を見て揉めだしたのを見て、これはどういう状況だ?と首を捻ってしまう。
「なぁ、神様よ? これってどういう事なの? これ好感度あがるアイテムじゃなかったの?」
なのでとりあえず追放神に聞いてみたが……
『ん? 好感度爆上がりじゃね? だって現にあの子は喜んでたじゃん』
などと返ってきた。
「いや、その結果なんだか揉めてはるんですけど?」
『こまけぇーこたーきにすんな! いいじゃねーか! お前への好感度はあがったんだ、それで十分だろ? むしろ今隙だらけな魔族どもを始末すりゃ、それこそ好感度カンストしちまうぞ? まさに願ったり叶ったりじゃねーか! やったな、これもひとえに課金のおかげだ。やはり課金……課金はすべてを解決する! これからも課金道に精進せよ! オカネ、ボク、ダイスキ』
「いや、神が言うようなセリフじゃねーぞそれ!」
思わず叫んでしまったが、しかし確かに今がチャンスかもしれない。
魔族3人は完全に注意を自分から逸らしている。
ならば今のうちに!そう思ったが。
一歩踏み出したところで床が抜け落ち、片足が嵌ってしまった。
「な、なんじゃこの床!? あぶねー! 傷みすぎだろ!? てか抜けねー!!」
抜け落ちた床に嵌った片足を必死で抜こうとするがすぐに抜けない。
そうしていると魔族3人の注目が再び自分に戻ってきた。
「おいおい兄ちゃん気をつけろよ? この倉庫、他と比べて経年劣化が激しいから所々傷んでて危ないからよ?」
「他の連中がこの倉庫を使わないのもそれが理由だし」
「んだんだ」
魔族3人はそう言ってうんうんと頷く。
「いや、なんでそんな物理的に危険なとこアジトみたいに使ってるんだよ!? 怪我したらどうするつもりだよ!?」
「仕方ないだろ? だってその分使用料安いし」
「だな」
「んだんだ」
魔族3人はそう言ってうんうんと頷く。
不良の溜まり場で違法な手段を使わず合法に集会を開くのは大変なようだ。
なら勝手に忍び込んで許可なく使えば?と思うのだが、そこは色々あるらしい。
「そうかい、でもケチケチしてると本当に事故るぞ?」
なんでこいつらの心配してるのかわからないが、とにかくそう注意してやるとライオン顔の魔族が。
「まぁ、それは確かにな。だが今は稼ぎもそんなになんだよ……だからいずれはいい倉庫借りる気ではいるが今は耐えるしかねーんだよ! チクショウ! お天道様が眩しいぜ」
そう涙を流しながら噛みしめるように言った。
うん、正直シンパシーを感じる、共感できる部分が何一つとしてなかったが、抜け落ちた床に嵌った片足を引き抜くには十分な時間を稼げた。
そして嵌った足が怪我してないか確認しながら、自然とライオン顔の魔族とフリューへと近づいていく。
「そうか、お前たちも苦労してんだな」
「言うなや、照れるじゃねーか」
ライオン顔の魔族は人差し指で鼻の下をこすり照れながら言うが、そんなライオン顔の魔族の肩をポンと叩き。
「まぁ頑張っていい倉庫借りれるようになってくれよ! お前たちならきっとできるさ! 応援してるぜ? まぁ、そういうわけで今日は遅いしもう帰ろうかフリューちゃん! 明日も早いしな! じゃあ、そういうわけでおつかれさん!」
そう笑顔で言ってからフリューの手を取って自然な流れで連れ出そうとしたが。
「おい、ちょっと待てや兄ちゃん」
すぐにライオン顔の魔族にガシっと肩を掴まれた。
あーやっぱダメだったか……
「何勝手にフリュー連れ出してとんずらしようとしてんだ? あぁ!? 話はまだ終わってねーぞ? つーか兄ちゃんがどうして『天の雫』を持ってんだ? そいつは俺らが必死になって奪った代モンだぞ?」
ライオン顔の魔族が威圧感たっぷりな顔を近づけながら聞いてきた。
どうして持ってるか?と問われてさすがに「レプリカ」ですとは言えないのでどう答えたものかとしばし考えた後、結局何も思い浮かばなかった。
なので適当にそれっぽい事を言って切り抜けようと考える。
「ふふ、バカだなーお前……わからないか? どうして僕が『天の雫』を持っているのかを?」
そう言ってライオン顔の魔族を振り払って魔族たち3人から距離を取り、フリューを抱き寄せる。
この時フリューは物凄く嫌そうな顔をしたが、精神的ダメージを受けるのを回避するため全力で見なかった事にした。
フリューを右手で抱き寄せ、左手を突き出し魔族3人組に言い放った。
「それはな! 僕が『天の雫』の真の所有者でフリューちゃんのご主人様だからだ!!」
「「「な、なんだってーーー!?」」」
魔族3人組が驚きの表情を浮かべ、その場で硬直する。
これは決まったな!とドヤ顔をしてみせるが抱き寄せているフリューはその発言を聞いて。
「何言ってるのこの人……頭おかしいんじゃないの気持ちわるっ……」
直球で精神をえぐる言葉を言い放った。
「ぬほぉぉぉぉぉぉぉ!! ふ、フリューちゃん誤解だよ!! とりあえずそれっぽい事言ってこの場を切り抜けようとしただけだよ? 僕はフリューちゃんをずっと平等な視点で愛してるからね? ほんとだよ? ウソじゃないよ? 何なら今から1秒に1000回フリューちゃんに愛してるって言うよ?」
「何言ってるの? マジで気持ち悪いんですけど? ていうか離してもらえます? マジで触られてるの不快なんですけど?」
「いやぁぁぁぁ!! フリューちゃんガチで愛想尽かさないで!! ちゃんと反省するから!! ちゃんと愛してもらえるように努力するからぁぁぁ!!」
「いやーーーー!! 泣きながら抱きついてこないで気持ち悪い!! 変態!!」
本気で嫌がるフリューは拳を握りしめるとそのままこちらにグーパンチを放ってきた。
「ぐほぉ!!」
そのフリューちゃんパンチは見事に自分にクリティカルヒット。
そのままフリューから手を離して床に倒れ込んでしまった。
いやしかし……これは中々癖になるかもしれん。
何かに目覚めそうだ。
「はぁ……はぁ……どうだ変態! まいったか」
「ふ、フリューちゃん……できたらもう一発僕にお見舞いして……うふふ」
「き、きもっ!!」
フリューは完全にドン引きしてしまい、心の蓋を閉じるとそっと自分から離れていく。
あれ?おかしいな?どうして僕フリューちゃんに嫌われたの?
「おい兄ちゃん……それ以上の変態ぶりはさすがに失笑もんだぜ?」
ライオン顔の魔族にあきれ顔で言われ、他の2人の魔族も同意して大きく頷く。
そんな魔族3人を見て思わず怒りがこみ上げてきた。
なので素早く起き上がって魔族3人を睨み付ける。
「く、くそー! ふざけやがって!! 元はと言えばお前たちがフリューちゃんをこんな陰湿なところに監禁したのが悪いんだろ!! お前たちがそんな事しなけりゃ今頃はフリューちゃんに嫌われることなくどこかの宿屋のきしむベッドの上で優しさを持ち寄り、きつく体を抱きしめあって、それからまた二人は目を閉じるよ、悲しい歌に愛がしらけてしまわぬようにってなってたんだぞ? なのにどう責任取ってくれるんだ!? このやろう!!」
怒りにまかせてそう叫ぶとライオン顔の魔族が呆れた顔になった。
「いや、なんか途中から有名な歌の歌詞になってなかったか?」
「あぁ、なってた」
「んだんだ」
魔族3人に続いて、自分から離れていったフリューもドン引きの顔になって。
「何それ、超きもいんですけど……こわっ」
低いトーンで言い放った。
その言葉が何より辛い。
「ぐはぁ!? どうして……どうしてこうなった!? 好感度爆上げどこ行った!? 教えて攻略ウ○キーーーーーー!!!」
思わず吐血しながらそう叫ぶと脳内に追放神の言葉が響く。
『すまん、言い忘れていた……万能に思える課金でも手に入らない物がある……それは離れていった人のココロです』
「こらぁぁぁぁぁぁ!!! 課金課金言ってたクセに肝心のそこはどうにもならんのかぁぁぁぁいぃぃぃぃ!!!」
その叫びは虚しく倉庫内に木霊する。
当然ながら追放神の言葉は他の者には聞こえないため、こいつさっきから何言ってるんだろうって視線を向けられる。
く……辛い!
その頭おかしい人を見る目が向けられるのが辛い。
「ま、まぁ兄ちゃん、頭おかしくなったかもしれねぇが強く生きろよ?」
哀れな生き物を見る目でライオン顔の魔族が言ってきた。
くそ!こいつふざけやがって全部お前のせいだろ!
こうなったらとことん「ざまぁ」の餌食になってもらうぜ!
そうしなきゃ気が済まねー!
そう思った時だった。
ライオン顔の魔族が疑問を投げかけてくる。
「というか兄ちゃんよ? 『天の雫』の事もそうだが、どうやってここに俺たちがいるってわかったんだよ?」
それを聞いて思わず鼻で笑ってしまった。
「ふん……バカだな? わからないか? フリューちゃんはお前たちに連れ去られてからも僕にSOSを発信してたんだよ! ちゃんと追いかけてこれるように道標を残してくれてたのさ!」
そう言ってやるとライオン顔の魔族がフリューの方を向く。
「お前いつの間に」
「いや、そんなの残してないけど」
しかしフリューは速攻で否定する。
それを聞いてライオン顔の魔族がこちらに向き直る。
「と、本人は言ってるが?」
「いや、確かに僕は受け取ったさ、フリューちゃんへと至る道標を!! そう、これが何よりの証! 僕とフリューちゃんを繋ぐ絆だ!!」
そう言って首にかけていた紐を掴んで引っ張り、胸元に隠していた紐の先についているアクセサリーを見せる。
そのアクセサリーはアクセサリーというにはあまりに不出来な代物だった。
というよりアクセサリーと呼べる代物ではない。
首にかけていた紐には、ここに来るまでに拾って回収したフリューの羽根すべてが繋ぎ止められていたのだ。
それを見て魔族3人がゾっとした顔になり、フリューが顔面蒼白になる。
そんな彼らの反応に気付かず、高らかに宣言した。
「これこそがエンジェルフェザー! 僕とフリューちゃんが堅く結ばれた証だぞ! わかったか!?」
「い、やーーーーーーー!!!! 変態ーーーーーーー!!!!」
直後、フリューが悲鳴をあげてどこかへと走り去ってしまった。
え?なんで?どうしてそんな反応されるの?
意味がわからない。
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