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「あの角を曲がればおもちゃ屋さんさ」と男の子は言いました。
サンタクロースはプレゼントを配る、という考えから、じゃあ、サンタさんはどこかでおもちゃとかを仕入れているだろうと男の子と女の子は考えました。そこで街で一番大きなおもちゃ屋さんへ行くことにしたのでした。
「おじいさん、どうしたの?」
おじいさんが足を止めたのを見て、女の子が言いました。おじいさんはなにかに耳を傾けているようでした。
「なにか、遠くから歌が聞こえてくる」
おじいさんの言葉に男の子と女の子も耳を澄ませます。確かに遠くの方から風に乗って女の人の歌声が聞こえてきます。
「……音楽会よ」
女の子がつまらなさそうに言いました。
「この先の音楽堂でクリスマスの音楽会がやってるの」
一言言うとすたすたと歩き始めました。男の子とおじいさんは女の子に引きずられるように歩き始めました。
「音楽会かぁ、集まったお金を恵まれない人の支援に回すって奴だよね。なんだっけ、慈善活動って言うんだっけ」
「ほほう。それは感心なことじゃな」
男の子の言葉におじいさんは目を細めてうなづきました。
「そうだ! サンタクロースの手がかりは、あっちの音楽会の方にあるかもしれないなあ」
サンタが『プレゼントを配っている』より『音楽会のような慈善活動に関係している』方が男の子にはありそうに思えました。
「ないわよ」
女の子がピシャリと言いました。とても不機嫌そうです。
「なんだよ。なんでそんなことが言い切れるんだよ」
頭ごなしに否定されたので男の子も少しムッとなりました。
「サンタがプレゼントを配ってるなんて嘘っぱちを信じてるのに、なんで慈善活動に参加するサンタは信じないんだ」
「そんなこと言ってない。
あの音楽会が慈善活動なんてもんじゃないって言ってるの!
今歌ってる人もオルガン演奏している人も……
自分のことしか考えないの!
だから、そんな音楽会なんか偽物、嘘っぱちよ」
「オルガン……?」
男の子はもう一度、歌声に耳を傾けました。確かに歌声に合わせてオルガンの調べが乗っていました。とても小さかったので最初は全く気づきませんでした。
「パイプオルガンじゃの」
同じように耳を傾けていたおじいさんがポツリといいました。
まあ、オルガンも演奏されてているのは分かりましたが、女の子がなんで嘘っぱち、なんていうのかはさっぱりでした。男の子はなんだかわけが分からないという顔でおじいさんの方を見ました。すると、おじいさんも分からない、と言った風に首を小さく横にふりました。
2020/12/30 初稿




