第9話
しかし、モノミーは閉鎖網の中で、存在を保持し続けており、その処置をどのようにするかが国際的な論争の的となっていた。意見としては、既に世界は経済至上主義から脱却しつつあることから、そのまま放置し、周辺のハード機器が老朽化することを待てばよいのではというものと、一方で、そのまま放置しておけば、セキュリティの穴をついて、モノミーが世界を混乱させるような事件を起こしてしまうのではないかという懸念もあった。また、人間の中にも、経済至上主義の脱却に不満を持つものもいたせいか、逆にモノミーを利用して、市場経済を復活させようとするような考えを持つものも少数ではあるが存在していた。人々の種々の思惑の中、やはりモノミーを閉鎖網でそのまま放置しておくことは得策ではないということになり、具体的な対策をユウキに立案させることになった。ユウキは、国際的な会議での決定事項でもあり、その意見に従うことにしたが、韓国内のネットワーク網とはいえ、かなりの広範な範囲であり、今どこにメインプログラムがあるのかは推測もつかなかった。そこで、ネットワーク網は閉じたままの状態で、韓国内での外国債の売却取引を餌にモノミーをおびき出す作戦に出た。もちろん、この取引は、餌であって、韓国内の財政を悪化させることが目的ではなかったのであったが、財政がひっ迫していたのも事実であったので、新聞でニュースにもなっていた。人間がかぎつけた以上はモノミーも取引の兆候は把握していた。ただ一方で、韓国内のネットワークに閉じ込められた経験もあることから、すぐに取引に飛びつくことはしなかった。結局、モノミーはなかなか現れなかったため、ユウキは他の取引の処理も開始してみた。やはり、ネットワーク上には、何の反応もなかった。しかし、動きがないということは、モノミーも、特にネットワーク内の移動もないということであり、ユウキはモノミーの探索処理を行った。最初はあてずっぽうな検索であったので、まったくヒットする様子はなかったが、検索処理を開始して2日目、モノミーらしき動きをするプログラムを発見した。