第8話
一方、その後の世界は、次第に市場取引は縮小していった。比較的被害の少なかった、米国、日本も、次第に取引市場の自然な縮小が図られ、国債や株式の取引という概念自体が成り立たなくなってきていた。都会はその利便的な機能を失い、人々は原始的な生活に回帰していく。その中で人々は、自然と過疎地域へと移動していくようになった。そこでは、衣食住の基本を自給自足で賄い、物々交換による経済への回帰が図られていく。
また、比較的休耕地が多くあったため、農業への従事者が増えてくるようになった。農業のできない地域は人間が住みつかないところもあったが、今まで都市に集中していた人口が緩和されていく。すると衣食住は以前よりの利便性はなくなったが、生活はできるレベルであり人々の争いも少なくなっていった。都市生活に固執する人間もいたが、そういった人間は少数になっていった。日本以外にもこの傾向はみられ、地域によっては自給自足が十分でない地域もあったが、そもそもそういうところには人間が住みつくことはなかった。また、作物が何も取れない地域は以外に少なかったので人口が過密化することもなくなった。都市での利便性が失われはしたが、人間による資源の独占がなくなった分、自然界に秩序が戻ることとなったのだった。資本主義、科学万能主義の世界は終わりをつげ、人間同士の競業体制が構築されていった。人々は、自然界の秩序の下、利便性は失われたが、穏やかな世界に生きることができるようになった。