第6話
経済破たんしていない米国や日本が奮闘している一方で、既に破綻してしまった国は、当初、暴動などの混乱はあったが、徐々に物々交換といった現物経済による自然な統制が機能し始めていた。それらの国々は市場取引に参加していなかったため、取引によるモノミーの被害はなかった。ユウキは、日本に在住していたため、当初は気付かなかったが、各国の状況をニュースで見ているうちに、世界各国からモノミーの被害がなくなっている国があることに気づく。そこでモノミーによる市場経済が混乱している国を特定し、モノミーのネットワーク分断による封印を試みる。だが、モノミーも分断設定を察知しており、そもそも分散型での存在であったため思うような効果はなかった。しかも、混乱していたとはいえ、各取引はグローバルなネットワーク網で構築されていたため、どこの国のどのハードに存在するかは特定が難しかった。そこで、ユウキはモノミーの特質から、おびき出す「えさ」があれば、モノミーを引き出せるのではないかと考えた。以前は偽の取引を装っていたが、今回は取引を行う国を限定し、その国のネットワーク網を分断する作戦とした。対象国は、日本の隣、韓国とした。韓国は、既に経済破綻していたが、まだ国庫には、わずかに中国と米国の国債が残っていたため、韓国自身の活動予算を確保するための換金化のため日本と取引を開始し始めたところだった。当初は静かに取引が始まったが、1時間ほどするとモノミーが介入し始めた。既に国の保有する金融資産は、わずかであったので、モノミーの介入30分後には取引は終了していた。ただ、その短時間に研究者は韓国のネットワーク網の封鎖を完了させていた。韓国以外でめぼしい取引がなかったため、モノミーは韓国のネットワーク網に集中していて、モノミーの封鎖には成功したのだった。