第51話
「動物実験でですかね。」
「いえ、人間でも行っていますよ。それに、アメリカでは既にコールドスリープは実用化されていますよ。」
「そうなんですか。でも北朝鮮でこれだけの設備ができているということは、実用化されているとしても不思議ではありませんね。」
「ええ、しかし、この北朝鮮の装置も、かなり優秀な方だと思いますよ。」
「そうなんですか。」
「冷凍装置の安定稼働試験では、今まで経験した中でもトップクラスの安定性の数値を示していましたから。」
「そうですか。今は非常にうれしいですが、少し複雑な気もしますね。」
「どうしてですか。」
「結局、この装置は一部の上層部の人間のために作られていたんでしょう。これを作る金があったら、もう少し庶民の生活を向上させるために予算を使ってくれればよかったのですが。」
「確かに、でも、今はこの装置に感謝です。」
「そうですね。これがあるから、今私たちは、生き延びることができそうなんですよね。」
「さて、そろそろ1時間後には、試験運転を開始しようと思いますが、準備はいいですか。」
「1時間あれば、十分準備はできると思います。3、4日でまた起きるのですよね。」
「ええ、今回は、あくまで実験ですからね。体への負荷は非常に少ないですから安心してください。眠って、目覚める感覚と同じですよ。」
「わかりました。とにかく準備をしてきますね。」
「よろしくお願いいします。」
そう言うと、李は、いったん自分の荷物が置かれている場所へと戻っていった。
ユウキは、引き続き、コールドスリープ装置の準備を進めていく。




