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モノミ-  作者: TMERD
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第3話

最初は、金といった値動きの少ない安定資産を買い増し、微増する運用益を獲得しつつ、人工知能が情報を収集していく。ある時、人工知能が天候システムの解析を行っていると、大きな気候変動の情報が入ってきた。その年の小豆生産地で、日照不足による大不作が予想されていたのであった。不作であれば、小豆の値段は跳ね上がることが予測される。そこで、小豆の仕入値が低い、現時点で先物買の注文を出し、後に小豆の現物を高く売るというような裁定取引を行っていった。結果、その年は天候システムの予想通り、日照不足による大不作となり、想定を超えて利益を獲得することができた。また、さらにディープラーニングが進むと、商品先物システムに関しては、投機的売買を行うことによりあらゆる商品価格を乱高下させ、利ざやを稼ぐという手段をとるようになり、人工知能搭載システムが自在に相場を形成することができるようになっていた。

これらは、人間が行いうる投資行動より早く動いて行ったため、1か月とかからないうちに、世界の市場は混乱を極めて行った。世界各国の首脳陣が会議で対策を検討するも、原因がどこにあるかわからない。ユウキは、自らの実験が機になったことはわかったが、人工知能のプログラム自体はネットワークが世界中に広がっており、今、人工知能のメインプログラムがどこにあるかは、まったく手掛かりはつかめなかった。

世界各国の首脳はこの人工知能を「モノミー」と名付け、各国の政府機関は、問題を解決すべく、腕利きのハッカー集団を組成し対応を図ろうとした。しかし、ネットワークは、あまりに広がりがあり、「モノミー」の核となるプログラムがどこに潜んでいるかは検討がつかなかった。「モノミー」は、さらに活動を活発化させていき、日本や中国が保有している米国債の売却を行う。アメリカは、売却措置に対応しようと試みるが、「モノミー」の処理スピードには追いつくことができず、米国債の格安売買を許してしまう。

その影響で、まず中国が経済破たんをきたすことになる。日本は中国との政治問題もあり、かろうじて中国経済に依存しない内需拡大政策をとっていたため、すぐの破たんは逃れた。ただ、「モノミー」の市場介入は続く。米国債は、売却した日より償還期限が半年以内のものが多く、アメリカは短期の資金繰りに追われることになる。アメリカの財政状態から、すぐには破たんしなかったが、結果、さらに米国債を発行せざるを得なくなり、その引き受け手は「モノミー」という事態になってしまった。また、欧州各国については、既に東アジア、アメリカに始まった経済混乱を契機に、ユーロ高になっていたところに為替に介入することにより、さらなるユーロ高を誘発しEUの主要国ドイツ等も大幅な経常赤字に陥ることになる。また、既に、他の新興国も打撃を受けており、かろうじて日本だけが経済体制を維持している状況となった。そして、経済状況の悪化した世界での人々の暮らしは急速に悪化していく。


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