第242話
エクシアは、アンドロイド運搬作業を開始し、ロシアのシェルターにあった5体のアンドロイドを移送することにした。幸い、ロシアのシェルターには、長距離移動用のトラックも保管されており、エクシアがアンドロイド1体を動かし、後の4体を荷台に乗せて運ぶこともできた。トラック自体も、複数台あり、ロシアのシェルターでのコールドスリープ装置のメンテナンスのお礼という訳でもなかったが、トラック一台分ぐらいの提供は快く引き受けてくれた。移送途中でも、途中の中間地点に製油所があったため、トラック輸送は十分に実現可能であった。
そして、ロシアのシェルターで、アンドロイドの躯体の移送準備が整うと、エクシアはメインプログラムをアンドロイドに搭載させ、移送の指揮をとることになった。指揮といっても、実際に動くのはエクシアの制御するシステムであり、トラックの運転など自動での活動がほとんどであった。
ユウキの方は、エクシアがロシア方面でアンドロイドを調達できたということで、日本移動に向けての情報収集を継続していた。特に、中国の港から、日本にかけての日本海の情報がまだ十分ではなかったが、核攻撃後のシェルター調査で、日本と中国を往来する船の運航会社の人間が生存していたことがわかった。
まず、中国側の状況を調査すると核攻撃により、大きな港である大連はかなりの被害を受けていたが、その周辺の小規模な港は、核攻撃の影響を受けていなかったので、港の機能自体は生きているようであった。また、核攻撃の際に、海上で航行していた船舶が3隻ほどあったため、その船舶を利用して、日本との往来が行われているということがわかった。
また、船舶の燃料も、中国側で製油所が放射能汚染を受けず生きていたため、船の運航に必要な燃料の調達は十分に可能であった。船の運航クルーも、既に現地で3隻の船の運航に携わっている人間もおり、港に到着さえすれば、日本へ渡航することは十分に可能であった。日本への航行のための海上も、特に核攻撃による顕著な被害は受けていなかったので、船の航行に支障が出る可能性はないようであった。
そして、日本側の寄港先では、中国側と同じく、都市圏に近い場所では、核攻撃の被害は甚大であったが、逆に小さな都市では、核爆弾による直接の被害は少なく、特に放射能汚染も顕著でない状況であった。特に島根や鳥取といった地方は、過疎化が進んでいたこともあり、目立った工業での発展がなかったため、核攻撃の対象にはなっていなかった。




