第229話
「正直なところ、対応が難しいですね。各シェルターでは、防衛用の銃や、手りゅう弾などはありますが、大がかりな武器はありません。また、逃げている人も、一般人がほとんどなので応戦するにも経験がありません。元々、人間が少なかったため、襲撃される拠点数は少なそうですが、放射能レベルが下がる前に何か対応策が必要になります。」
「そうですか。では、何等かの対抗手段があれば、安全度は増してくるというところですか。」
「それはそうですが、そのような手段があるのですか。正直なところ、あの地域を支配している犯罪者集団は、元中国軍兵士など戦闘経験者が多く、犯罪者集団の中でも戦闘力は高い方だと思います。通常の軍隊では、対抗できないでしょうね。軍隊でも特殊部隊レベルなら別かもしれませんが。」
「では、今まで放射能汚染があったから、犯罪者集団の活動を抑制していたというところですか。」
「ある意味そうですね。放射能汚染はもちろん怖いですが、危険因子の活動が抑制されるという意味では、よかったのでしょうか。いずれにしても、そのような中での動きとなると、非常に大変ではないでしょうか。」
「一度、ユウキとは話し合ってみますが、何か良い方法はないでしょうか。」
「それは、我々も考えていますが、妙案はないですね。もしあれば教えてください。」
「何か、彼らをけん制する事項があればいいのでしょうが、何かありますか。」
「けん制ですか。相手は中国軍経験者たちが中心というのが厄介ですね。彼らをけん制するには、通行することで何か彼らの利益になるようなことがあれば、交換条件ぐらいにはなるんだろうがね。後は、武力的に牽制できればいいのでしょうが」
「ユウキは、日本への移動のために通行するので、メリットは、あまりないのかもしれないですね。武力という意味では、そちらの方が現実的かもしれません。」
「何か心当たりはあるのですか。」
「核攻撃後、時間が経過しているので利用可能かの確認は必要ですが、こちらでもロケット弾などの爆弾類は、ある程度あります。」
「ある程度とは、どれぐらいの数があるのでしょうか。」
「全面戦闘になった場合には、1週間程度、ゲリラ戦で対処すれば1か月程度は戦闘継続できるはずです。」
「全面戦闘で1週間ですか。それは、かなり心もとないですね。向こうの暴漢たちは、どの程度の戦力を有していると。」
「シェルターで避難しているので、同じ程度の戦力を保有しているはずです。彼らの非難しているシェルターは、我々のものと基本的に大きさは同じはずです。」
「そうですか。ただ、戦闘員の戦闘経験からすると、向こうの方が戦力は上ですね。」
「確かにそうです。なので、我々も戦闘方法で工夫し、戦うしかないとは思います。」
「工夫といっても、訓練された者とそうでない者とは雲泥の差があると思います。何とか戦闘にならずに通過できればいいのですが。」
「他の援軍があれば、何とかなるでしょうか。」




