第210話
「物理的ではなく、メインプログラムとして、あなたの帰国ルートの調査に加わるということです。まあ、彼女からすれば、同行することと同じなんでしょうね。」
「そうですか。確かに、既に接触の取れる拠点は、新たに出てきそうにないですし、万が一出てきても、移動途中で対応できる数しか出てこないでしょう。後は、定期連絡を取ればいいだけですから、確かにエクシアに『同行』してもらってもよいかもしれませんね。」
「じゃあ、エクシアには、私から連絡しましょうか。」
「いえ。後で私から連絡してみます。ところで、あなたの故郷は、遼寧省のどのあたりなのですか。」
「北朝鮮国境から少し離れますが、鳳凰山の近くになりますね。ひょっとすると、ユウキさんの通行予定とは、少し離れたところになるかもしれません。」
「そうですか。確かに、事前の調査ルートでは、その山は通らないですね。ただ、何か補給できる可能性はあるのでしょうか。」
「核攻撃後の詳細はつかめないのですが、鳳凰山の南側に集落はあります。そこでは自給自足でしたが、農業は盛んでしたから、核攻撃の影響が少なければ補給は出来るかもしれないですね。」
「どうしてそこにそのような拠点があるのを知っているのですか。」
「私が、その集落出身だからです。元々両親は北朝鮮の出身なのですが、農村出身で貧困に耐えかねて、一族全員脱北しました。私は、大分幼かったのであまり覚えてはいないのですが、それでも両親に手を引かれて、みなでトラックの荷台に乗せられて移動したことは覚えていますね。真冬の時でしたから、寒かったこともよく覚えています。」
「それは大変でしたね。でも無事に脱出できてよかったですね。」
「そうですね。そういう意味では、運がよかったのかもしれません。」
「とにかく、李さんは、鳳凰山の近辺には詳しいということですね。では、李さんにも同行していただいてもいいですか。」
「ぜひお願いします。あと、それにエクシアの方も、同行しませんか。」




