第201話
ただ、その一方で、隠れ家的な地形でもあったため、核攻撃前から犯罪者集団の拠点がそこにあった。彼らも、核攻撃を無事に生き延び、組織の構成員のほとんどが生存している状態であった。そして、周辺の生き残った住民たちを武力で押さえつけながら、自分たちの勢力を維持しつつ、近隣地域にあった中国共産党軍の武器を収奪し、武装集団としての勢力を拡大させていっていた。
李は、朝鮮人ではあったが、実はその武装集団のメンバーの一人であり、核攻撃前に武装集団の意向を受けて、北朝鮮に潜り込み、自分たちの縄張りを広げようとしていた。ただ、核攻撃が起きてしまい、武装集団の本体とは、完全に分断されてしまった。ただ、本体との通信は行うことができたので、連絡を取りながら、武装集団の本体へ合流する機会を伺っていたのであった。
今回、ユウキが日本へ帰国するため、武装集団の本拠地がある場所を通ることを知った李は、何とかユウキに同行できないかをいうことを考えていた。現状では、おそらく近隣の目ぼしい生存拠点とは接触出来ており、李の方も通信業務にひっ迫されることはなくなっていた。また、ユウキたちには、李の正体はまだ知られていないようであり、ユウキが帰国するのであれば自分も故郷に帰るという名目でユウキへの同行を申し出ることは可能なように思えた。そこで、李はユウキとの面談の前に、エクシアと接触し、近隣拠点とのコンタクトの状況がどうなっているかを確認し、今、この拠点を離れることができるかどうか検討することとした。
李は、まず、エクシアとの接触を行うため、いつも利用している端末で、アクセスを試みた。すると、エクシアは、先ほどユウキと話をしていて、特にどこの拠点ともに通信はしていなかったため、李の通信にはすぐに応答していた。
「李さん、何かあったのですか。」




