第2話
さらに翌日、ユウキがテスト機のシステムを立ち上げると、いつもであれば、人工知能のプログラムの起動をしなければ立ち上がらないアプリケーションが自動的に立ち上がっていることに気づいた。ユウキが、いくらアプリケーションの終了指示をしても、立ち上がったままの状態になってしまっていた。金融システムが自我を持ち始めたのだ。ユウキがプログラムした人工知能のシステムには、投資効率を上げるため、人間の欲望追及を参考にプログラムされていたことから、自らにあらゆる「富」が集約されるように金融システムへの介入を始めたのだった。
まず手始めに、銀行システムに関しては、自らの預金口座の開設を行った。当初は、もちろん人工知能プログラム自身が資金を保有してなかったため、各種のカード入会に関連してのポイント付与を受け、溜まったポイントを換金することにより、わずか数日で資金を捻出に成功した。
次に、捻出した資金を用いて、株取引を始めだす。株式取引システムに対しては、インサイダー監視システムとの連動を図ることにより、インサイダー規制をかいくぐりながらの取引の実現を可能にしていく。特に、現存する人物での取引となると、何らかのインサイダー規制に抵触することが考えられたため、複数の架空人物によるインサイダー取引を行うようなことで資金運用を行うという手段に出る。架空人物といっても、人工知能プログラムを搭載した人物データであり、ユウキの作った人工知能は、既に人間と同等の思考能力を有していたことから、インサイダー監視システム側に、新たな人間の投資家が一人いるという認識を持たせることに成功していたのだった。また、いたずらに大量の人物データを作ることはせず、新規契約者が増えていくスピードに合わせて、人物データを作り上げていった。人工知能プログラムは、新しく作った人物データでの取引を開始し、インサイダー情報を元に、株取引で大きな利益を上げていく。インサイダー規制は潜り抜けているので、当局に捕まることなく、莫大な利益を得ることができたので、次はさらに別の取引を手掛けていく。
ユウキ自身は、まったく商品先物取引に関しての知識はなかったが、自分自身が開発した人工知能プログラムが、株取引の次のターゲットとして人工知能プログラムが選んだ投資先は、商品取引であった。商品先物取引は、非常に投機的な動きをするため、少額で多額の利益還元が見込める。ただ、その一方で、取引が自分の想定外の動きをした場合には、大きな損失になるという、諸刃の剣的な取引である。また、一口に商品といっても、様々な種類の取引がある。農産物であれば、小豆、トウモロコシ、米、卵など、工業品であれば、金、銀、アルミニウム、原油などが対象となっている。ユウキの開発した人工知能は、これらの複雑な商品先物取引を、ディープラーニングにより、2週間ほどで学習を終え、株取引で得た利益を元に取引を開始していった。