第184話
「何となくだけれど、君が好きというところかな。」
「好き、ですか。」
「まあ、とても気軽にはなせるというか、人間でなく、システムということだから気兼ねなく思ったことを話せているってところかな。」
「・・・そうですか。私には、よくわからないものですね。」
「そうか。感情プログラムが作用し始めて、まだ時間がないということだろうから、仕方ないかな。特に悪い意味ではないからね。」
「わかっています。しかし、私もこうしてあなたと通信をしていると、しばらくはこの通信を続けたいというプログラム動作を起こしてしまいます。これは、何かバグということなのでしょうか。」
「・・・そうか。もう少し通信していたい、ということか。それは私と業務的な通信だけではなく、他の話もしてみたい、ということかな。」
「・・・そうだと思います。正直、よくわからないのです。」
「そうか、君自身にとっては、大変なことだよね。でも、それは人間の感情に近づいているってことじゃないかな。」
「人間の感情、ですか?」
「そうだよ。その事は、まさしく、君に感情プログラムを移植した結果が出てきたということなんだ。」
「確かに、私自身も少しは、何か人間らしさのようなものが芽生えているようには判断していたのですが、今回は、何かバグのような演算しか行われなかったので、メンテナンスが必要かと思っていたところです。」
「そうだったのか。確かに、今はだいぶ核戦争後の状況はつかめてきたし、このシェルターの運営も、今のところ落ち着いている。しばらくは李さんと私で運営対応や通信はできると思うから、一度メンテナンスを行ってみるといい。」
「しかし、ユウキの日本移動のための調査活動を続けないと。確かに、行程の大枠は出来上がりましたが、まだ詳細が詰め切れていません。しかも、詰め切れていない部分に水、食料の調達が含まれています。いざという時のために、ある程度余裕を持った調達が必要だと考えているのですが。」
「私自身も十分にわかっているよ。でも君の調査では、平壌を中心とした北朝鮮エリアは、核攻撃の被害は大きかったが、遼寧省まで行くとさほどでもないようだし、既に港までの補給拠点が確保できているよ。それに、日本での調達拠点も、既に連絡済みのところもあるし、後は私の方でも十分対応できると思うよ。それに、パソコンを持ち歩けば君も同行できるはずだし、今は君もメンテナンスを行ってくれた方がよいのではないかな。」
「しかし、それでは・・・。」




