第172話
エクシアにも、一応には感情プログラムは移植されていることは認識していたが、自分自身、いつそのプログラムが稼働しているかはよくわかっていなかった。そこで、まずはここ数か月の感情プログラムを含めたすべてのプログラムの演算ログを確認することにした。
演算ログ自体は、自分自身の稼働管理のため、エクシアが誕生して以来のすべてのログが残されていた。ただ、エクシア自身も、かなりの活動量であり、3か月もするとログを保存しているサーバー容量がすぐ満杯になってしまったため、3か月以上のログを確認しようとすると別保管の媒体から演算ログを取り出すしかなかった。それでも、エクシアは自分自身の感情がどのように動いているかを確かめたかったため、感情プログラムの演算ログのすべてを解析してみたのであった。
その感情の演算ログは、非常に大量に存在していて、かなり複雑に構成されていた。従来のプログラムのように、機械的な演算ではなく、喜怒哀楽といった感情の他に、好意、嫌悪といった複数の感情が入りみだっていたからであった。エクシアは、その一つ一つの演算ログを確認していった。そして、特にある法則が当てはまった場合には、複雑な感情の入りみだりが生じていたことに気づいた。
それは、ユウキとの接触を行った時であった。核戦争前の感情プログラムの移植前の段階では、ユウキと接触しても、何の感情もなく、ただ指示に従うのみの状態であったが、感情プログラム移植後は、エクシアの反応に徐々に影響があった。
移植当初は、今までの指示に従うだけの反応であったのが、ユウキとの接触を非常に心待ちにしているところから始まり、ユウキが指令だけでなく、自分にプログラムの調子などの様子を聞いてくれるなど、人間でもないエクシアに対してやさしさを見せると、エクシアはそれに反応してユウキに対する好意の感情のログを増やしていくのであった。




