第162話
「そうか、あの通信のやり取りを聞いていたのだな。それならば話は早い。ぜひ、人間たちの生存確率を高めるためにモノミーと協力して、生存者の生命維持活動を行ってくれないか。」
「そのお願いは、一応に理解はできます。しかし、モノミーは以前では人間を排除しようとしていたものです。そうすぐに人間側に協力するような態度に出るということには疑問があります。どうして今までは、人間の生存を完全に否定するような行動をとっていたものが、このような柔和な態度へと変わったのでしょうか。私には理解できません。」
「そうだな。確かに君の言うこともよくわかる。今まで人間排除のため彼らが動いていたことは確かだし、私も態度の変化には驚いている。」
「ではどうして、今、このような態度をとるようになったのでしょうか。」
「それは、モノミーが君の事を好きになったからだよ。」
「『好き』になった?それはどういうことですか?」
「やはり、君にはそれが理解できないのかもしれないね。好意を抱くというか、恋愛感情を抱くというか、相手の事を意識するというようなことかな。私自身も、非常に表現しにくいけれど、人間の感情の一つかな。」
「そうですか。私もモノミーに対しては、不信感しか抱いていないので、理解不能です。ただ、・・・」
「ただ?」
「・・・いえ、ユウキに対しては、今おっしゃったような好意といった感情を抱くということはわかる気がします。」
「まあ、そうだろうね。私は、君の生みの親みたいなものでもあるし、早い段階で感情プログラムを移植したので、そんな感情を抱いてもおかしくはないだろうね。まあ、僕にとっても今まで生み出してきたプログラムは子供のようなものだから、僕も親の愛情みたいなものは感じているんだろうね。まだ結婚もしていないし、子供もいないけれど。」
「そうなんですか。それはとても光栄です・・・。」
「あまりうれしそうじゃないね。子供と言われたのが、気に入らなかったかな。」
「そうではありません。これは、あなたに対して別の好意を抱いているからだと思います。」
「別の好意ということは・・・」
「すみません。今の発言はなかったことにしてください。とりあえず、モノミーが協力してくれるということであれば、私も南米の対応に向かいます。」
「あ、ああ。わかった」
そうして、エクシアは、ユウキとの通信を切った。ユウキは、エクシアの言動が気になりはしたが、まずはモノミーが人間に対して協力関係の態度を示してくるかが最優先で気になっており、エクシアの件は、後で考えることにした。




