第16話
北朝鮮ルートといえども、軍事目的やそれに近い目的での入国は拒否されるため、あくまでシステムの研究目的ということでの入国手続をとっていった。入国の許可がおりると、まず日本から中国にわたることになった。
ユウキは、日本から中国にわたり、大連から丹東へと向かっていった。そして丹東から、船と車を乗りついで、北朝鮮国内へと入っていく。そこからは、北朝鮮国内へ入るのに、3カ所ほどの関所を通らなければならなかった。ユウキは、その情報は知っていたので、それぞれで袖の下を渡し、平壌へと移動していった。
道中では、特に何もない景色が続いていた。ユウキが想像していた通り、北朝鮮もかなり経済的に厳しい状況に追い込まれていたせいか、途中、貧しい農村の風景が広がるだけであった。ただ、道路は、ある程度舗装はされていて、北朝鮮に入ってから車を走らせて、平壌までは1日はかからなかった。
平壌に近づくと、さすがに大きなビルが立ち並ぶ近代的な街並みも見えるようになっていた。ただ、到着したのは、23時を既に回っており、辺りの電灯はほとんどが消えていて、真っ暗な状態だった。そしてユウキたちは、ホテルへと到着した。その日は、1日移動していたせいもあってか、ユウキは、部屋に入るとシャワーも浴びずに、すぐに寝てしまった。
翌早朝、ホテルの部屋で目覚めたユウキは、部屋の中の設備を探っていた。ネットワーク回線を探していたのであった。一応、学術交流目的で潜入はできたが、日中は、行動が決まっており、しかも監視目的の同行者もいたため、自由が利くホテルでのネットワークアクセスを試みたのであった。しかし、ホテルのネットワークは、回線速度が非常に遅く、エクシアへのアクセスを行う前に出発の時間が来てしまった。
ユウキたちは、ホテルを出ると、平壌にある大学に連れていかれた。ユウキの目的が、研究のためということであり当然ではあったが、大学に到着すると、ユウキは唖然とせざるを得なかった。外観こそ大学らしくきれいな校舎ではあったが、内部に入っていくとかなり老朽化した講義室が並んでいた。また、中に入り研究室へも入ってみたが、各研究室も建物そのものの老朽化に加えて、設置されている設備もかなり老朽化しているようであった。




