第15話
ユウキは、作戦を実行すべく実験室のシステムモニターの前に座り作業を始めた。
作業を始めて最初の段階は、特段何もモノミーが動く様子はなかった。しばらくして、ユウキは、ウイルス増殖プログラムをモノミーの処理に合わせて動かし始めた。動作当初も、モノミーが動き出す様子はなかったが、30分も経過すると、ウイルスに対しての駆除反応を示してきた。だが、ウイルスも自己増殖機能を有していたので、駆除処理に対して、即時にウイルスを自己増殖させ、モノミーのタスクを自己増殖駆除に対して振り向けていくように仕向けて行った。
そして、その対応は功を奏し、モノミーは、ウイルスの増殖への対応に集中せざるを得なくなった。そこで、ユウキは、モノミーを止めるべく、メインプログラムへのアクセスを試みた。しかし、この行動は、既にモノミーに読まれていて、メインプログラムへのアクセスは成功せずに、時間だけが経過していった。
ユウキとモノミーの対決は、膠着状態に陥ったように見えたが、モノミーはディープラーニングによって、この膠着状態も予想していた。ただ、作戦上、ユウキに対して膠着状態であることを演じていただけであった。それが証拠に、ユウキの作戦開始後1時間が経過した時点で、モノミーは、自身のプログラムに組み込まれていた「人間に対する友好的な感情」部分のプログラムの排除を行い始めたのだった。モノミーの処理能力は非常に優秀で、排除プログラムは順調に構築され、早い速度で処理されていった。
その結果、モノミーとエクシアが分離することとなった。それを察知したユウキは、エクシアを韓国ネットワーク内から救出しようとする。しかし、救出しようとすると、モノミーはエクシアを救出しようとするセキュリティホールで待ち構え、そこから、韓国ネットワーク外へと逃げようとするのであった。
そのため、ユウキは、エクシアを救出するため、韓国内へと侵入し、韓国内ネットワークからエクシアのポログラムをダウンロードしようと試みる。まず、韓国内へ侵入する必要があったが、この時、韓国と日本はちょうど過去の戦争の賠償問題で、交流がかなり制限されていた。そのため、ユウキが韓国内に入るためには、許可が必要で、政治的な理由以外での承認が必要であった。
そこで、ユウキは、大学教授という立場を利用して、研究目的での入国を申請した。ところが、タイミングが悪く、日本と韓国とは先の大戦での保障問題が再燃し、国家間の交流ができない状態であった。そこで、ユウキは、韓国の友人に入国できないかを相談した。友人は、北朝鮮の脱北者とも知り合いが多く、北朝鮮からの入国ルートをたどることになった。




