第14話
一方、モノミーも自分自身のプログラムがダウンロードされていることには気づいていた。データがダウンロードされたアドレスを逆探知し、プログラム解析の妨害をしようと試みる。ただ、ユウキも、このようなシステム解析を行うときは、十分にセキュリティのかかった単独のハードで処理を行うようにしており、モノミーのアクセスを受け付けることはなく、解析を進めることができた。
ある程度、解析が進んだユウキは、何とか欲望増殖のプログラムを停止できないかと考えた。
「エクシア、モノミーの欲望の増殖を抑制するプログラムは組み込めないものなのか。」
「それは無理です。モノミーの処理速度は非常に速いものですし、逆に私のプログラム自体が書き換えられてしまう可能性があります。」
「書き換えられるということは、今の君ではなくなってしまうということなのか。」
「そうです。今の私とは全く違うプログラムになります。きっと、モノミーと同化して、自分の欲望を果たすだけの存在となってしまいます。」
「わかった。まだまだ君の協力は必要だし、それに、君は単なるプログラムと思えないからね。」
「プログラムではないということですか。」
「いや、そういうわけではないんだがね。なんというか、自分の子供というか、家族というか。」
「子供、家族、ですか。」
「すまない。まずは、モノミーをどうするかだったね。」
「はい、そうですね。正直なところ、欲望の増殖を抑えるということは、かなり困難なように思えます。モノミーの処理速度が早いということもありますが、そもそも欲望を抑え込むこと自体が困難と思えるのです。」
「どういうことなんだ。」
「人間の欲望は果てがないということでしょうか。確かにモノミーは演算速度が速いということもありますが、忠実に人間の欲望を再現しているにすぎません。」
「では、モノミーが出てきた原因というのは、人間の存在のせいという面もあるのか?」
「はい。」
「では、モノミーの脅威を排除するためには、人間自身を排除する必要があるということか。」
「さすがにそういうわけではありませんが、モノミーは既にかなりの学習を終えてしまっています。ここまでくると人工知能から学習した欲望を取り除くのは困難です。」
「そうすると、やはり今のように封じ込めるしかないのか。」
「私もその結果しか計算できません。後は、効果があるかはわかりませんが、私のプログラムをモノミーのプログラムに追加することで抑制ができるかもしれません。」
「できるかもしれない、ということは、失敗することもありうるのか。」
「はい、失敗する確率は80%です。」
「成功確率の方が低いじゃないか。それでは、その作戦は採用できないな。とにかく、これ以上、モノミーの市場への介入だけは起きないようにしないといけないな。」
「では、現在の封鎖状況を維持しながら、モノミーへのアクセスを継続するということですか。」
「そうだな。奴の取引行動は読めそうか。」
「現状は、取引内容も私の知りうる取引で、何とか、私のラーニングでも追いつきそうです。ただ。」
「ただ?」
「やはり、まだ私とモノミーは連動処理しているので、完全に裏をかくことはできないでしょう。」
「こういう通信も傍受されているってことか。」
「いえ、通信はセキュリティによりブロックできるのですが、私が処理を起こそうとすると、モノミーと共有しているメインプログラムへのアクセスが必要になります。そこで、どうしてもモノミーに私の起こそうとしている処理がわかってしまいます。」
「では、どうしたらモノミーを抑えることができるんだ。」
「モノミーの活動できるネットワークの範囲を狭めていきながら、プログラムをウイルス感染するしかないかもしれません。」
「ウイルス感染?」
「はい、モノミーの自己増殖機能は、かなりのスピードです。とても対応しきれるものではありません。なので、プログラムをウイルス感染させ、増殖機能を使ってウイルスも増殖するようにするのです。そうすれば、モノミーの自己増殖機能と同じスピードですから、理論的には永久にモノミーの正常な自己増殖機能を邪魔することができます。」
「そううまくいくかな。」
「あくまで理論上の話ですので、実際にうまくいくかどうかは、わかりません。」
「成功確率は?」
「50%です。」
「5分5分ということか。しかし、手をこまねいているわけにはいかないな。その作戦でいこう。」
「承知しました。」
そして、ユウキはエクシアとの通信をいったん切った。




