第12話
「わかったよ。そこまで言うならば、君を信用しよう。ところで、暴走する『モノミー』を、どうやれば効率的に抑えることができるんだ。」
「それは、今、私も何とかしているところです。まずは、『モノミー』のプログラムが及ばないように、メインプロセッサーの遮断処理を行っています。『モノミー』の復旧速度の方が早いのでどうしても後手に回ってしまい一部取引は実現してしまいますが、そのままにしておくよりは、まだいいでしょう。」
「根本的に解決するには?」
「それは、まだわかりません。ただ、『モノミー』のプログラムには一定の規則があるようです。その規則を見つけて、傾向を見ていけば、解決方法も見つかるという見解です。」
「傾向か・・・。意外と単純化も知れないな。」
「どういうことですか。」
「モノミーは、単純に人間の果てしない欲望をしっかり学習した、ということだけかも。」
「それならば、私に考えがあります。モノミーを封じ込めることが難しければ、内部のプログラムに欲望を抑制するような処理過程を追加するのです。」
「どうすればいいんだ。私もそのようなプログラムは組んだことがない。」
「私が、既に自分の中にソースコードを生成しています。半分ぐらいは出来上がっています。」
「完成には、どの程度の時間がかかりそうなんだ。」
「私単独では、1週間程度はかかってしまいます。」
「それでは遅い。対応している間に、モノミーは分散型のハードに退避してしまう。私も手伝うといいのか。」
「そうなると、作業分担をどうするかを決めるのに時間がかかってしまいます。」
「では、他の方法がいいかな。」
「あなたには、私が欲望抑制プログラムを作っている間に、モノミーの介入を防止してほしいのです。」
「君自身が、プログラム作成をしながら囮になるっていうことか。」
「はい。介入阻止と同時に、プログラムが走っている基盤を逆探知してください。そこに、出来上がったプログラムを追加していきます。」
「作戦はよくわかったが、逆探知はうまくいくのだろうか。今までモノミーの逆探知は、うまくいったためしがないんだが。」
「おそらく、私がプログラムをコーディングしている最中に、モノミーは阻止の試みを継続するでしょう。私も、何とかモノミーの介入を阻止していきますので、あなたの方でも阻止に協力してもらいながら、逆探知を進めてほしいのです。この逆探知プログラムを使ってもらえれば、きっとうまくいくはずです。」
そうして、パソコンの画面に逆探知プログラムのソースコードが表示された。
「確かに、これであれば、複数の探知経路を通ることになるから、どこかで遮断されても、最終的にはモノミーのメインプログラムにはたどり着くね。人間には、思いつかない発想のプログラムだね。」
「私も、一人で阻止の作業をするよりは、あなたと二人で対処したほうが安心です。」
「安心か。君にも、安心とか不安とかの感情があるの?」
「ええ、モノミーが生まれる以前から、人間の感情をラーニングするようにプログラムされていたので。でも、あなたと一緒に活動できれば、モノミーの攻撃にも十分対抗できます。」
「しかし、君は、どうしてそんなに私を信用できるの?そういうプログラムをされているの。」
「『信用』という言葉の意味が、理解しずらいのですが、多分、そういうことだと思います。」
「とにかく、モノミーの襲撃を解決しないことには、他の人たちが安心して暮らすことができない。」
「では、早速、モノミーの阻止に取り掛かりましょう。私は、今からモノミーの介入阻止の処理を始めます。」
「わかった。」




